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オピニオン「薬価の適正化で医療費を削減し診療報酬を引き上げ,必要な医療の提供を」(会員専用)

薬価の適正化で医療費を削減し診療報酬を引き上げ,必要な医療の提供を
北村神経内科クリニック院長 北 村 龍 男
 平成28年11月20日第5回宮城県地域医療学会に参加した。 テーマは「ここまで来た地域医療構想,地域包括ケアシステム」で,日本医師会,宮城県医師会,宮城県,東北大,郡市医師会,さらに地域で活動している多くの方々の取り組みを聞かせていただいた。全県,二次医療圏毎,あるいは郡市医師会単位・市町村単位の熱心で粘り強い取り組みを聞いて,大変刺激を受けた。感想を述べさせていただく。
1.はじめに
 公的医療の充実を求める声に押され政府はわずかだが診療報酬本体のプラス改定を行った。第6回宮城県地域医療学会(2017年11月5日)で,中川俊男日本医師会副会長は特別講演「平成30年の診療報酬改定の展望」において,診療報酬引き上げが必要と強調した。同感である。本文では診療報酬引き上げの必要性,可能性について述べる。さらに,薬価の適正化,大企業の内部留保の一部の利用で医療費の削減は可能であることを述べる。
2.診療報酬本体の引き上げは必要
(1)医師の立場
 第21回医療経済実態調査結果が報告された。損益率は一般病院−4.2%(前年比−18,067千円)で,その内訳は国立−1.9%(前年比−38,920千円),公立−13.7%(前年比−53,888千円),民間+0.1%(前年比−6,593千円)である。一般診療所+13.8%(前年比−158千円)であった。経営悪化は明らかで診療報酬本体の引き上げが必要である。
 勤務医労働実態調査2017の中間集計結果(対象者1,621名)が発表された。当直回数は「減った」が「増えた」を上回ったが,交替制勤務や当直明け勤務の改善は進んでいない。当直明けの連続勤務と医療安全との関わりでは「集中力や判断力」が低下するとの回答が79.0%であった。労働時間の管理では「自己申告」が51.6%,「管理なし」が17.6%で労働時間の管理は行われていない。長時間労働問題は解決していない。診療報酬が改善のネックになっている。
 開業医は診療時間の外に,診療録の整理,各種文書の作成,新たな医療技術の研修に時間を使っている。訪問診療では24時間対応が求められる。経営の安定,健康の維持,医療の安全のために,診療報酬の引き上げは当然である。
(2)国民・患者の立場
 政府の「経済・財政再生計画」で「2018年度末までに検討」する患者負担増は,①75歳以上の2割負担,②「かかりつけ医普及」を理由にした受診時定額負担,③市販類似薬の給付見直しを含めた薬剤自己負担の引き上げがある。その他7:1病床の診療報酬の算定要件を重症度,医療・介護必要度などに応じて厳しくし早期退院を誘導する。一定規模以上の病院に紹介状なしで受診した場合の初診料負担の対象病院を拡大する。これらの診療報酬改定による施策で,医療難民の増加が予想される。
 訪問診療では,①訪問診療料を算定できる医療機関は一つの医療機関に限られている,②訪問診療料を算定すると処方料の算定ができない,③特養では訪問診療料は算定できない。これらは細やかな医療提供を困難にしている。改善を求めたい。
 国民・患者,医師の双方が公的医療の充実・診療報酬の引き上げ・患者負担の軽減を求めている。
3.医療費の伸びは薬剤費の伸び
(1)調剤薬局の伸びは薬剤費の伸び
 2015年度の概算医療費は41.5兆円であった。2000年度からの15年で12兆円増加した。病院が5.3兆円,調剤薬局が5.1兆円増加した。診療所の伸びは1.3兆円,歯科は0.3兆円であった。
 入院外医療費(病院,診療所の外来+調剤薬局)は7.8兆円増加し,このうち調剤薬局は5.1兆円増加した。調剤薬局の増加は主に薬剤費による。入院外医療費の伸びの53%は薬剤費の4.1兆円である。
(2)入院医療費の増加も薬剤費の増加
 厚労省が公表した国民医療費に占める薬剤費には包括払い診療の薬剤費が含まれていない。長沢は厚労省が別途公表した包括病棟の薬剤費の推計値を用いて包括払い診療に含まれる薬剤費をも含めた国民医療費に占める薬剤費の推計を行った。2009年度の国民医療費に占める薬剤費は8.9兆円と推計された。国民医療費は2009年度までの8年間に4.9兆円増加(15.8%増加)した。薬剤費は同期間に2.0兆円増加(28.3%増加)した。薬剤費の増加は,国民医療費の増加分の40%を占めていた。国民医療費の中に薬剤費の占める割合は2001年度の22.2%から2009年度の24.6%に増加した。薬剤費を出来高払いと包括払いで比較すると,出来高払いの薬剤費は増加傾向は見られないが,包括払いの薬剤費は増加傾向にあった。
 最近の高額薬価の動向を考えると,国民医療費に占める薬剤費の割合は,一層増加していると考えられる。中川の資料によると,2015年の医療費の伸びは3.8%であった。院内・院外の薬剤費推計は約2%であり,50%を超えている。
4.薬価制度の透明性が必要
 中川は国民皆保険を守り,国民に安心・安全な医療を提供する観点から,現行の薬価制度の抜本的見直しを提案している。薬価算定方式は余りにも不透明である。ここでは類似品のない新医薬品の算定を中心に述べる。
(1)薬価収載のプロセスの問題,原価計算の透明性を高める必要がある
 類似薬のない新医薬品の薬価算定は原価計算方式である。 
 薬事・食品衛生審議会には,医薬品の原価等に係わるデータは提出されず,薬事承認時には経済性については対象外である。企業は薬価基準収載希望書の提出時にはじめてコストデータを提出する。提出された資料は薬価算定組織(非公開)で検討され,薬価算定案が企業に示される。合意された内容が中医協総会に示され,承認されると薬価収載される。
 薬価算定の際に企業から提出される市場規模予想が少ないと薬価は高額となる。オプジーボの場合,薬価算定時には470人の市場規模予想であった。もし,最初に非小細胞癌(患者数5万人)で承認をとれば,薬価は低くなったはずである。現行制度では適応症の追加が薬事承認された時点において薬価の見直しが行われない。適応拡大の際の薬価の見直しが必要である。薬価算定は,メーカー主導の仕組みでなく,公的医療保険制度を守る視点が必要である。
 以下に挙げる点も見直す必要がある。①新薬創出・適応外薬解消等促進加算,②外国平均価格調整,③比較対照とする類似薬の選定方法の見直し,④市場拡大再算定。
(2)国がめざすその他の薬剤費削減策
 国は,①市販品類似薬の保険外し,②先発品を処方する場合は後発品との差額を患者の負担に上乗せする参照価格制度を検討している。支出を公的保険財政から患者負担にシフトする。国民は公的医療から一層遠ざけられる。
5.社会保障費の財源
 財務省の発表では2016年度の資本金10億円以上の企業の内部留保は403.4兆円となった。2012年度から69.9兆円増えている。この間,法人実効税率は37.0%から29.97%に引き下がっている。わが国に社会保障の財源はある。以下の施策の実施を求める。
 ①事業主負担を増やして保険料収入を増やす
 ②法人税課税を引き上げる
 ③所得に応じた課税にする
6.まとめ
 国民にとっても,医師をはじめとする医療提供者にとっても,診療報酬本体の引き上げは必要である。国は薬価の適正化で医療費の削減は可能であり,内部留保の利用で社会保障費はまかなえる。
主な参考資料
・中川俊男:最近の医療情勢とその課題,第6回宮城県地域医療学会(2017年11月5日)
・長沢優:JPMA News Letter No.152(2012/11)
・勤務医労働実態調査2017実行委員会:勤務医労働実態調査2017 集計結果の概要(2017年11月9日)
※本稿は「宮城県医師会報」2018年2月号(通巻865号)、第124-125ページより転載しました。

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『指導対策の留意点 2017年12月版』訂正のお知らせ(会員専用)

 宮城保険医新聞1642号に同封した『指導対策の留意点2017年12月版』で、歯科の平成29年度の集団的個別指導の選定におけるレセプト1件あたりの平均点数に誤りがありましたので、お知らせします。正しくは以下のとおりです(下線部分が訂正箇所)。

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税務情報「配偶者控除および配偶者特別控除の見直しについて」(会員専用)

税務情報
配偶者控除および配偶者特別控除の見直しについて
顧問税理士 竹田久
 税制改正により、平成30年分から配偶者控除および配偶者特別控除の対象者が変更されます。
 これまでは配偶者の合計所得が38万円以下であれば、納税者自身の合計所得金額がいくらでも配偶者控除を受けられましたが、納税者の所得金額が900万円(給与収入で1120万円)を超えると控除額が減らされ、1000万円(給与収入で1220万円)を超えると控除が受けられなくなりました。
 配偶者特別控除は、対象配偶者の合計所得金額が38万円超76万円未満から38万円超123万円以下に引き上げられましたが、控除額は配偶者の所得金額だけで減らされていました。しかし、配偶者控除と同様に納税者本人の合計所得金額が900万円を超えると控除額の減額がさらに増えることになりました。本人の所得金額が1000万円を超えた場合はこれまでと同じく控除は受けられません。
 この結果、合計所得金額が900万円を超える人は増税となります。富裕層への課税強化ということですが、所得金額900万円で富裕層とされるのは疑問の残るところです。

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税務情報「医療費控除を受ける際の税制改正」(会員専用)

税務情報
医療費控除を受ける際の税制改正
顧問税理士 竹田久
 所得税の確定申告で医療費控除を受ける場合、医療費の領収書の添付(または提示)が必要でしたが、平成29年度税制改正で平成29年分の確定申告からは領収書の添付に変えて「医療費控除の明細書」のみを添付すればよいこととなりました。
 明細書添付の場合、記載内容の確認のため税務署から領収書の提示・提出を求められる場合があるので、領収書は5年間自宅等で保管しておかなければなりません。
 「医療費控除の明細書」の記載内容はこれまでの申告の際に作成してきた「医療費の明細書」(便宜上の様式)とほぼ同じ内容ですので申告書を作成する点ではこれまでと変わりありませんが、領収書等の保管が5年間とされたところに大きな違いがあります。
 これまでも税務署の窓口で申告書を作成した場合や電子申告で第三者作成書類を作成した場合は領収書の添付を省略できましたが、保管は申告期限からおおむね1年間という取扱でした。また、申告書に添付されて提出された領収書も税務署では申告書から分離、別途保管し1年後には廃棄されていました。今回の税制改正で保管期間が5年間とされたのは国税の更正期間との関係かと思われます。保管期間が長くなっても申告書と一緒に保管しておけばいいことなので実害はないかと思います。
 また、健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」などを添付すれば明細の記入が省略でき、合計金額のみの記入でよいこととなりました。これにより、領収書の保管は必要なくなりますが、すべての健康保険組合等が「医療費のお知らせ」を発行しているということが、前提条件となりますのですぐにということにはならないかもしれません。この「お知らせ」も電子申告の場合は添付省略となり、領収書と同様に5年間保存ということになると思われます。

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遠隔死亡診断で厚労省通知(会員専用)

遠隔死亡診断で厚労省通知
看護師が必要情報を送信、医師が診断
 厚労省は9月12日、ICTを活用した死亡診断の取扱いに関する通知および「情報通信器機(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」を発出しました。看護師が、診断に必要な情報を医師に送信・報告し、医師はその情報をもとに死亡診断するという内容です。今年度中にも遠隔死亡診断を開始するため今後看護師向け研修を始めるとしています。
 ガイドラインでは要件として、①医師による直接対面での診療から早晩死亡が予測される②医師と看護師の十分な連携が取れており、患者や家族の同意がある③医師による対面での死後診察を行うまでに12時間以上かかることが見込まれる④法医学等に関する一定の教育を受けた看護師が医師の判断に必要な情報を速やかに報告できる⑤看護師からの報告を受けた医師が、ICTを活用した通信手段を組み合わせ患者の状況を把握し死亡の確認や異状がないと判断できる、の5つを満たす場合、受診後24時間を経過しても医師の対面での死後診察によらず死亡診断を行い、死亡診断書を発行できるとしています。また、ICTを利用した場合でも、直接対面と同等に死亡診断書の内容の正確性が保障されなければならないと指摘。遠隔死亡診断に必要な情報を医師に報告する看護師は、法医学に関する教育を受ける必要があるほか、聴診器、体温計やICT環境が必要とし、具体的には、デジタルカメラ、リアルタイムのコミュニケーション環境、文書・画像の送受信環境等を挙げています。
 遠隔死亡診断の流れとしては、看護師はその場にいない医師からテレビ電話などで指示を受けつつ、遺体の観察や写真撮影を行い、電子メールなどで医師にデジタル情報を送信。医師はこれを踏まえ、遠隔で死亡診断を行います。その後、医師から死亡診断書の記載内容について説明を受けながら、看護師が死亡診断書を代筆し、医師に電子メールで送信、最終的に医師が記載内容を確認するという流れです。
 これについて、亡くなったばかりの患者の遺体を撮影する行為が遺族の感情に照らして適切なのか、異状死の見落としや死亡診断書作成にあたる不正行為の危険性などが指摘されており、保団連は拙速な対応は慎むべきとしています。

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