女川原子力発電所過酷事故時における 原発から30km圏にある医療・介護福祉施設等の避難計画に関する調査(二次)報告②


平成29年 1月20日
宮城県保険医協会
理事長 井上 博之
公害環境対策部長 島 和雄

女川原子力発電所過酷事故時における原発から30km圏にある医療・介護福祉施設等の避難計画に関する調査(二次)報告②

【調査期間】2016年7月22日〜2016年8月12日
【調査対象】女川原発周辺自治体(女川原発から30km圏を含む市町)の医療機関・介護福祉施設(以後、「機関・施設等」と称す)114件
【調査方法】対象医療機関・施設にアンケート用紙を送付し、返信封筒で郵送頂いた
【回答率】全体43件(37.7%)
昨年7月に行った調査では女川原発過酷事故に際し、避難計画を既に作成されている施設は1件のみであったが、今回は2件であった。ただし、昨年同様UPZ内は0件であった。

【結果】
設問1.区分(回答率内訳)
病院:20件中11件(55%)
有床診療所:15件中6件(40%)
在宅療養支援診療所(無床診):19件中4件(21.1%)
介護福祉施設等:60件中22件(36.7%)

設問2.所在地(回答率内訳)
女川町:2件中1件(50%)
石巻市:45件中15件(33.3%)
南三陸町:7件中4件(57.1%)
登米市:32件中15件(46.9%)
美里町:10件中3件(30%)
涌谷町:7件中1件(14.3%)
東松島市:11件中4件(36.4%)

設問3.女川原発からの距離

設問4.病床数・施設の規模
病院(回答数11件)      病床総数1183床   平均:107.5床
有床診療所(回答数6件)    病床総数83床    平均: 13.8床
介護福祉施設等(回答数22件) 入所者総数1399人  平均: 63.6人

設問5.避難計画の作成状況
 県では、女川原発の過酷事故に際し、各機関・施設に対し独自に避難計画を作成するよう要請していますが、貴機関・施設で独自の避難計画を作成されましたか?
(43件中) 「はい」: 2件(4.7%)
「いいえ」:41件(95.3%)
「いいえ」の回答(41件中)の作成予定状況
「近日作成予定」:         6件(14.6%)
「当分作成の予定はない」:21件(51.2%)
無回答:                 14件(34.1%)

設問6.未作成の理由(設問5で「いいえ」と答えた機関・施設41件が対象の設問)
作成されてない理由は何ですか?(複数回答可)
作成方法が分らない:     16件(39 .0 %)
情報が不足で作成は困難である:18件(43 .9 %)
現在作成検討中:        6件(14 .6 %)
県・自治体からの説明がないので作成できない:19件(46 . 3 %)
その他:            10件(23 .4 %)
その他に記載された内容
(30km圏外(4件)、施設独自作成は困難、住民との助け合いが必要だから、防衛省施設のため、再稼働させない、法人からの指示がない)

設問7.作成上困難な点
 貴機関・施設で独自に避難計画を作成する上で難しい点はどの様な所ですか。(複数回答可 母集団は設問5で「いいえ」と答えた機関・施設41件)
①避難(転医)先の確保:       30件(73.2%)
②情報の収集や誘導体制の確立:    28件(68.3%)
③避難径路の選定:          19件(46.3%)
④避難時の誘導責任者と要員の確保:  17件(41.5%)
⑤車両等避難手段の確保:       29件(70.7%)
⑥関係機関との連携:         19件(46.3%)
⑦避難先での患者・利用者のケア方法: 20件(48.8%)
⑧搬送・移送に必要な資機材の確保:  17件(41.5%)
⑨特に難しいところは無い:       0件(0%)
⑩その他1件、(2.4%)
※その他に記載された内容(衛生部隊単独で避難等行動する事がないため)

設問8.解決責任の所在
 設問7における難しい点の解決は何処が責任を持って行うべきだと思われますか?(複数回答可 指摘総数総計数155)
自院・自施設で責任を持って調整・解決する:40件(25.8%)
市町が責任を持って調整・解決する:       48件(31.0%)
県が責任を持って調整・解決する:         67件(43.2%)


*「自院・自施設」・「市町」・「県」の指摘状況を見ると、
・自院・自施設で責任を持って調整・解決する(指摘数40件の割合)

  1. 避難(転医)先の確保:5件(12.5%)
  2. 情報の収集や誘導体制の確立:5件(12.5%)
  3. 避難径路の選定:6件(15.0%)
  4. 避難時の誘導責任者と要員の確保:6件(15.0%)
  5. 車両等避難手段の確保:5件(12.5%)
  6. 関係機関との連携:5件(12.5%)
  7. 避難先での患者・利用者のケア方法:7件(17.5%)
  8. 搬送・移送に必要な資機材の確保:1件(5%)
  9. 特に難しいところはない:0件(0%)


・市町が責任を持って調整・解決する(指摘数48件中の割合)

  1. 避難(転医)先の確保:6件(12.5%)
  2. 情報の収集や誘導体制の確立:11件(22.9%)
  3. 避難径路の選定:5件(10.4%)
  4. 避難時の誘導責任者と要員の確保:2件(2%)
  5. 車両等避難手段の確保:8件(16.7%)
  6. 関係機関との連携:7件(14.6%)
  7. 避難先での患者・利用者のケア方法:2件(2%)
  8. 搬送・移送に必要な資機材の確保:7件(14.6%)
  9. 特に難しいところはない:0件(0%)


「責任性」の対象の項目別分類(項目別回答数における責任割合)

*各項目についての詳細

  1. 避難(転医)先の確保(指摘数23件)
  2. 情報の収集や誘導体制の確立(指摘数25件)
  3. 避難径路の選定(指摘数19件)
  4. 避難時の誘導責任者と要員の確保(指摘数12件)
  5. 車両等避難手段の確保(指摘数22件)【参考:指摘件数22件中病院6件のうち、県の責任3件、市町の責任2件、自分1件{規模総数698床、平均116床}介護福祉施設等11件のうち、県の責任3件、市町の責任4件、自分4件{規模総数763人、平均69.4人}となっている】
  6. 関係機関との連携(指摘数18件)
  7. 避難先での患者・利用者のケア方法(指摘数16件)
  8. 搬送・移送に必要な資機材の確保(指摘数20件)

「責任性」選択の理由(記載15件)

  • 避難先確保や避難手段の確保は病院単独で確保するのは難しい
  • 県および市のガイドラインに添った対応が必要になるため
  • 基本的には自院で賄う予定でおります
  • 施設や町での解決は困難
  • 原発事故となれば広範囲(遠距離)での避難をよぎなくされる場合がある
  • 行政の介入が必要
  • 自院で解決するには限界がある
  • 全体の把握が困難と思われるため
  • 有事の状況により転医先が違ってくるのではないか?避難車輛の確保について、合理的に配車されている事が望ましいと考える
  • 問題が大きすぎて民間で対応するのは困難、情報収集が困難
  • 個々の企業における判断で避難することではないと思います。広域であれば県、市が対策を考えるべきではないか?
  • 女川原発の避難計画等について県や市の立場、権利等が分からない為
  • 町自体が全町避難する可能性があり町に避難支援を求めても医療センター老健のみを優先することは不可能。他にも多数の要介護者、要支援者がいる
  • 広域的に問題が生じることが予測される為、一事業者での解決範囲ではない
  • 女川原発の事故等でどのように移動できるかも分からないし、国さえもきちんと責任、説明をしていないのにどう避難すればいいのかも、手段も分からない

設問9. 連携体制
 県では各自避難計画策定に当たり、県及び関係市町と連携するよう要請していますが、以下の点について御回答下さい。(複数回答可 母集団は設問5で「いいえ」と答えた機関・施設41件)
*項目についての詳細
1). 避難先の確保について連携はできていますか?
できている:   3件(7.3%)
(県0件・関係市町2件・その他関係機関1件)
現在調整中:   1件(2.4%)
できていない:35件(85.4%)
無回答:       2件(4.9%)

2).情報の収集や誘導体制について連携はできていますか?
できている:   4件(9.8%)
(県0件・関係市町4件・その他関係機関2件)
現在調整中:   1件(2.4%)
できていない: 35件(85.4%)
無回答:       1件(2.4%)

3).避難ルートの選定について連携はできていますか?
できている:     3件(7.3%)
(県0件・関係市町3件・その他関係機関1件)
現在調整中:     1件(2.4%)
できていない: 36件(87.8%)
無回答:         1件(2.4%)

4).避難時の要員確保について連携はできていますか?
できている:   3件(7.3%)
(県0件・関係市町3件・その他関係機関1件)(複数回答)
現在調整中:   0件(0%)
できていない: 37件(90.2%)
無回答:       1件(2.4%)


5)―1.避難車輌について、県は「基本的には病院等(社会福祉施設)が所有する車輌を最大限活用し自力による避難に務めること」と病院等による自力避難を求めていますが実施はできますか?
できる:     7件(17.1%)
できない: 33件(80.5%)
無回答:     1件(2.4%)

5)―2. 5)―1で「できない」と答えられた方へ:避難車両の手配について連携はできていますか?(母集団は(5)―1で「できない」と回答した33件)
できている:  1件(3.0%)
(県0件・関係市町1件・その他関係機関0件)
現在調整中:  1件(3.0%)
できていない: 31件(93.9%)

【参考:設問9の5-1で「できない」と答えた33件の規模内容は 病院9件{規模総数1,234床}、有床診診療所5件{規模総数73床}、介護福祉施設17件{規模総数1176床}となっている】
6).避難中、患者・利用者のケアについて連携はできていますか?
できている:   3件(7.3%)
(県0件・関係市町2件・その他関係機関2件)
現在調整中:   1件(2.4%)
できていない: 35件(85.4%)
無回答:       2件(4.9%)

7)その他 0件(0%)

自由記入欄記載11件(25.6%)
・今後どのような天災がおこりうるか全く予測ができないため、被害を未然に防ぐ、あるいは最小限におさえられるよう県でしっかりとした避難計画を策定していって欲しい
・石巻市の避難計画、マニュアル等の早期作成が必須!!福祉施設のみでの避難は無理である。半島の末端に位置し、公用車も軽乗用車含め6台のみの所有となっており、再稼働の話であれば、まだまだ検討しなければならない事柄が多い。災害時にはお年寄りを置いて避難出来ない施設職員なのだから(入居者:50人、職員50人程)2回程原発の避難訓練に参加し、登米と隣接の施設への避難訓練に参加したが、集まった方々はほんの少数であった危機感のなさにガッカリした。私は施設の管理者で施設も末端の鮎川浜に位置している。60人の入居者と50人程の職員を守らなければならない立場にある。大きな課題である。
・地震、火災、津波等の消防計画はあるがBPCも含めて原発事故に関する計画は現在検討中です
・自衛隊の部隊は衛生部隊単独で行動する事がないため、避難計画については作成しておりません。ご理解の程宜しくお願い致します。
・原発再稼働しないよう強く働きかけて下さい。原発再稼働が前提のアンケートには今後お答えできません。
・国→県→市町村→施設と弱い立場に丸投げでは解決しない。避難車輛を自前で確保できる施設がどれだけあるのか把握して、ガイドラインを作っているのか怪しい
・県や市から何も情報がない
・避難対象地域に指定されてないため(30km圏外)、計画の策定を検討していない。
・市立病院なので、基本的には市の防災計画に則り行動する
・福島原発事故の教訓を活かして、国や県が責任を持って各事業所に計画作成の為の情報や助言、指導を具体的に行って欲しい。特老では重度の障害を持ってる方が多く、避難時の車輛や途中の健康管理等、複数の解決すべき課題があります。
・登米市が平成28年6月に策定した「原子力災害時における避難計画(豊里町・津山町編)」の中では、病院等医療機関の管理者が市及び県と連携し・・・(中略)避難計画を作成すると記述されています。従って本院の避難計画は登米市病院事業管理者(登米市医療局)が主となり作成することになると思います。

 以上

 

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