石巻市内有床医療機関への原子力災害時広域避難計画についての調査(概要)


石巻市内有床医療機関への原子力災害時広域避難計画についての調査(概要)

 女川原発過酷事故発生に対する避難に関して、2018年11月時点での実態を把握するため、石巻市内の病院・有床診療所に対し、避難計画、屋内退避、避難引率態勢、転院等避難先、避難手段、避難(経)路、県・市との連絡・連携態勢等について調査を行った。
回収
 対象:石巻市内の病院・有床診療所12医療機関、総ベッド数1743床(2018年4月1日時点)

 回収:医療機関数6件(50%)、病床数1112床、(約64%)
結果並びに考察

  • 避難計画について、4件で作成されている。計画作成に際して県では国・医師会等関係機関とあらかじめ連携するよう定めているが、6件中5件の医療機関で情報等は「入ってきていない」と答えている。

 3.11の東京電力福島第一原発事故に対する医療機関の避難では、入院患者の状態に応じて屋外への退避と屋内退避が同時に行われていたことが報告されている。この点を考慮して避難計画とその準備がなされなければならないと考える。

  • 屋内退避については、ガイドラインでは「一般的に遮へい効果や建屋の気密性が比較的高いコンクリート建屋への屋内退避が有効であることに留意」と記述しているが、場所並びに設備が「整っている」としている回答が3件、「未整備」が3件と半々だが、整備されていない医療機関のベッド数割合は、70%以上にのぼる。

 「留意」するだけで良いのか、どこまで整えれば良いのか、またその資金は誰が供給するのか、屋内退避の期間はどれだけであると想定しているのか等、県は明確にしなければならない。

  • 避難引率態勢について、ガイドラインでは「医師、看護師、職員の指示・引率のもと」となっているが、「不明」も含めて「整っていない」は4件(医療機関のベッド数割合では約90%)となっており、「医師、看護師、職員の指示・引率のもと」としている県のガイドラインについて、その実効性についての根拠を問わなければならないと考える。

  • 転院等避難先について、「調整中」の回答1件を含めて、全件が「未確保」としている。

 ガイドラインでは「国の協力のもと病院等医療機関の避難に備え、医師会等の関係機関と連携し、入院患者の転院先の調整方法についてあらかじめ定めておくものとする。」としている。しかし、転院先等避難先の確保については、医療機関単独では困難な場合が多く、県では「調整方法を定める」だけでなく、受け入れ先医療機関の確保についても、紹介・仲介態勢がとれるよう早急に準備すべきである。

  • 避難(移動)手段の確保について、県のガイドラインでは、避難計画を立案するにあたり、「自力による避難に努め」、県及び関係市町と連絡等の連携をするよう要請している。しかし、6件中5件で自力での避難は「できない」と答えている。自力避難が困難となっている医療機関のベッド数割合は、90%以上にのぼり、1000床以上の対象者を自力で避難させることは不可能に近く、県・市の対応が必要である。

 当協会の過去二回の調査では、大多数の民間医療機関・介護福祉施設等のみでの避難計画を立案することは、はじめから不可能であることを示している。その際に当協会では、「もし、自力による避難が可能ならば、県はその根拠を示すべきである」旨記述したが、現時点においても何の調査も行われず、進展も見られないと言って良い。

  • 一時避難場所も含む避難先へ避難(経)路の整備と道路交通情報等による経路の把握は、その緊急性から任意の径路で避難して良いことになっている。その場合、道路交通情報等の確保が重要となるが、5件が「できていない」と回答している。時々刻々変わる道路交通情報を包括的に把握し管理できるのは、県・市またはその監督下にある組織であり、早急に態勢を整えるべきである。

  • 東京電力福島第一原発事故で双葉病院と病院が運営する介護老人保健施設の436名の患者・施設利用者の避難行動の中で、犠牲者が50名も出た。その要因の一つに、情報伝達の失敗が指摘されている。

 今回の調査では、県・市との連絡・連携態勢について転院等避難先、避難手段、避難(経)路、避難計画作成について、6件中5件で態勢が「できていない」と答えている。また、過去2回の調査においても、情報の収集や誘導体制の確立が最も困難な課題となっており、県・石巻市は、実効性ある具体的対策として自衛隊・警察も含めた命令系統、連携体制等を確立、避難態勢等実働的計画の提示をするべきであると考える。

国・県・市・町等行政機関のあるべき対応

  • 避難引率態勢について、県並びに市・町は「医師、看護師、職員の指示・引率のもと」と提示するだけでなく、その実際上それが可能なのかどうかを調査し、実効性についての根拠を示すべきである。

  • 屋内退避と屋外退避は同時に行わなければないことが想定され、県並びに市・町は、医療機関の屋内退避時に必要になる条件整備や屋外退避時の避難引率態勢について調査を行い、それに基づいた必要な支援を行うこと。

  • 転院等避難先について、県では「調整方法を定める」だけでなく、受け入れ先医療機関の確保において、必要に応じ紹介・仲介態勢がとれるよう早急に準備し、転院(一時避難場所も含む)避難先の確保等をあらかじめ示しておくべきである。

  • 県は「自力による避難に努め」としているが、各医療機関の避難スキルについて調査し、把握した上でガイドラインを示すべきである。避難(移動)手段の確保について、1000床以上の対象者を自力で避難させることは不可能であり、県・市の対応が必要である。

  • 一時避難場所も含む避難先へ避難(経)路の整備と道路交通情報等経路の把握は、県または市が一括して行うべきである。

  • 県・石巻市は、実効性ある具体的対策として自衛隊・警察も含めた命令系統、連携体制等を確立、避難態勢等実働的計画の提示をすべきである。

以上

This entry was posted in 公害環境対策部. Bookmark the permalink.

Comments are closed.