原子力規制委による女川原発2号機に関する新規制基準適合の審査書決定に対する談話


原子力規制委による女川原発2号機に関する新規制基準適合の審査書決定に対する談話

2020年2月26日
宮城県保険医協会 副理事長・公害環境対策部長
杉目博厚

 原子力規制委員会は、2月26日の定例会合で女川原発2号機が新規制基準に適合しているとする審査書を決定した。このことは、再稼働の前提となる審査に正式合格することを意味する。2011年3月の東日本大震災で被災した女川原発は、安全性や避難計画の実効性をはじめ、多くの不安や疑念は解消されていない。そんな中で再稼働をおしすすめることは許されるものではない。
 東京電力福島第1原発事故後に再稼働している原発9基はいずれも加圧水型で、未だ正確な事故の検証が出来ていない東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型の女川原発2号機が再稼働されてしまえば、沸騰水型原発の再稼働が促進される恐れがある。
 現地を視察した際、女川原発は牡鹿半島の根元に位置しており、半島の住民が安全に避難できるのは困難と痛感した。道路の交通渋滞で避難が困難となるのは、女川の住民に限らず、全県民に共通する。
 当協会で行った3回にわたる医療機関等に対する避難計画アンケート調査においても、その実効性は破綻しているという結果が得られた。また、協会会員意識調査においても、回答した会員の91%が再稼働に反対であった。
 国の原子力規制委員会は「新規制基準は原子力施設や運転等の可否を判断するためのものであり、これを満たすことによって絶対的な安全性が確保できるわけではない」としている。更には前原子力規制委員会委員長の田中氏は「規制委員会は再稼働するかどうかについては判断しない」「新規制基準の適合性検査であって安全だとは言わない」「絶対安全、ゼロリスクではない」と繰り返し述べている。
 原発再稼働の是非の最終判断は、住民の安全、命と健康、人権等を最重視したものでなければならない。その判断は今後地元自治体、県議会、県知事等に委ねられることとなる。この判断は我々世代だけに留まらず未来に対しての大きな責任となる。
 今現在でも処分先が決まらない使用済核燃料も、再稼働する事でさらに増え続ける事になる。原子力発電所という核施設において過酷事故が起こった場合、我々は核の暴走を止める事が出来ない事は福島第一原発事故で明らかとなった。二度とあの悲劇を繰り返さない為には廃炉しか道はない。
 国民の命と健康を守る責務がある我々医師・歯科医師は、女川原発再稼働に反対の意を表すると共に、地元自治体、県議会、県知事に対し、地元同意を拒否し、再稼働は行わず廃炉とする英断を下されるよう強く求めるものである。

以上

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