投稿「かかりつけ医のPCR検査 やるも、やらないのも苦渋の選択」


かかりつけ医のPCR検査
やるも、やらないのも苦渋の選択

北村神経内科クリニック 北村 龍男

 保険医協会政策部会の資料の中に、会員のA先生からの文書(令和2年9月25日付け)が入っていた。要旨以下の通り。「仙台市・市医師会のアンケートに『初診・再診とも情報提供可』と答え、コールセンターから紹介され10名弱の新患を診療して参りました。しかし、今後『コールセンター機能の一部を兼ねてPCR検査も』となるようなので、発熱外来は中止する予定です。そこで、当院のかかりつけの発熱患者をどうするか。COVID-19かInflu等か分からない訳で、どこの発熱外来に紹介しようにも、『どこか』が公表されない限りそれもできません。同時に、インフルエンザの診療も皆無になってしまうが、それもやむをえない」という内容でした。現状では選択肢の一つと考える。
 抗原検査・PCR検査は限界のある検査であるが、現段階では発熱等症状のある方、濃厚接触の可能性のある方など新型コロナウイルス感染症の疑いのある人は検査を受けられるようになることが必要と考えている。そうすることにより多くの感染者を発掘し治療を行うと共に、可能な限り感染の実態を把握し対策を立てるためである。
 抗原検査・PCR検査を実施するには、ガウン等の準備だけでなく、待合室の分離、動線分離が必要である。大幅に検査数を増加させるのは難しい。
 私のクリニックは医療ビル内にある。空き室があり、オーナーのご厚意で発熱外来待合室の提供を受けている。私はこの条件を踏まえ、発熱患者を受け入れている。しかし、無理はできないので、通常の受付終了後1時間と午後訪問診療に充てている時間終了後の1時間を、発熱患者の受付時間とすることにしている。相談センターからの要請は受けず、当院かかりつけ患者と直接受診した患者に限っている。この対応もオーナーからの空き室提供がなければ難しい。
 PCR検査等の必要性を多くの医師が認め、保険医協会が行った3回のアンケート調査(訪問診療のアンケートも含む)でも、PCR検査の拡充を求める意見が多い。PCR検査に取り組むのも、取り組まないのも苦渋の選択である。医師会が行う集団契約を結ぶ医療機関、特にコールセンターの情報提供に応えられる医療機関は多くないと思われる。(参考:兵庫保険医協会の調査では、兵庫県が行う「診療・検査医療機関(仮称)」を受ける方向で検討しているのはアンケートに答えた465施設の内18%〈86施設〉に止まっている)
 日本のPCR検査が少ないことは広く知られている。今後、インフルエンザとの重複流行が恐れられており、早急に体制を作り上げることが求められる。医療機関が積極的に取り組めないのは、診療報酬の抑制、医療機関の再編統合、医師・看護師不足で医療機関の経営が逼迫し、感染症に対応する余裕がない状態が続いているためである。
 医師会や各自治体は工夫を凝らした取り組みを進めている。その動きを国がしっかりと受け止め、政策化することが求められる。
 しかし、新しい管政権が生まれたが、まだ国会では所信表明すら行われていない。責任を持った新型コロナ感染症への取り組みを望む。(2020/10/23)

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