シリーズ「女川原発廃炉への道」No,20


シリーズ「女川原発廃炉への道」

ALPS処理水の海洋放出
矛盾だらけの説明に納得できるわけがない

理事 矢崎 とも子

 経済産業省は4月13日「福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の処分に関する基本方針の決定を機に、風評被害の防止を目的に、『ALPS処理水』の定義を変更した」という。「汚染水は、ALPS等の浄化装置によってトリチウム以外の放射性物質を取り除く処理を行った『ALPS処理水』として敷地内のタンクに貯蔵してきた」が、「今後は『トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水』のみを『ALPS処理水』と呼称する」と。やっと「現在タンクに貯蔵されている水の約7割にはトリチウム以外にも規制基準値以上の放射性物質が残っている」とHPに明記し認めた。二重にあきれた。
 第一に「トリチウム以外は全て取り除ける」のではなかったか。第二に「トリチウムは『他の原発でも放出している』『自然界にも存在している』から放出しても大丈夫」ではなかったか。福島第一原発の汚染水は「人間どころか機械でも近づくことができずに壊れてしまうほどのエネルギーを放出し続けている燃料デブリに直接接した水」である。他の原発で流しているトリチウム水とは全く異なる、とても危険なものである。
 さらに、自然界には存在しない多くの核物質(炭素14、ストロンチウム90、セシウム137・134、コバルト60、アンチモン125、ルテニウム106、ヨウ素129、プルトニウムなど)が存在していることをようやく認めた。人体を構成する有機化合物に半減期5730年の放射性炭素14が入り込めば、トリチウムより大きなβ崩壊エネルギーで内部被曝をおこす。生物学的半減期400日ではあるが、DNAの蛋白質に取り込まれれば遺伝子を傷つけることになる。
 地球上の海はみんなつながっている。海に放出したらその管理は不可能だ。「目に見えない」からいいのか。「東京ドームサイズに対して小さじ1杯」だから、いいのだろうか。さらには「基準値以下まで薄める」と言いながら、「海に放出する前の処理水の放射性物質の測定は行わない」とはどういうことか。子どもでもわかる矛盾だらけの説明に、納得できる人はいないだろう。
 魚を始め海の生き物は移動している。生態系の頂点にいる人間のエゴで海を汚せば、最後は人間に跳ね返ってくる。水俣病の過ちを二度と再び繰り返してはいけない。

 

本稿は宮城保険医新聞2021年7月25日(1756)号に掲載しました。

This entry was posted in 公害環境対策部, 女川原発再稼働関連. Bookmark the permalink.

Comments are closed.