シリーズ「女川原発廃炉への道」No,31


シリーズ「女川原発廃炉への道」

ALPS処理水から考える原発問題

理事 矢崎 とも子

 環境省廃棄物・リサイクル対策部によれば、廃棄物に含まれる放射性セシウムの「安全に再利用できる基準」は百Bq/kg、「廃棄物を安全に処理できる基準」は八千Bq/kgである。さて、ALPS処理水として海洋放出されるトリチウムは、プランクトンから魚に濃縮され我々人間の体に取り込まれていく。すなわち命の源である海で再利用されるわけだから、その基準は「安全に再利用できる百Bq/kg」のはずだ。しかし、国は排水の規制値は六万Bq/ℓとしている。海が生産の場であることを全く考慮していないようだ。地球上の海はつながっており、その汚染は全世界に影響を与えるのだが。
 また、無機トリチウムの生物学的半減期は12日だが、タンク内などで微生物や化学反応により有機トリチウムになった場合は40日~1年となる。生体構造物に取り込まれれば、長期にわたりβ線を出して周囲の分子を切断していく。さらに、トリチウム水は通常水よりも重いため平衡状態での分子の入れ替わりが少なく、環境中だけでなく体内でも葉緑素中でも濃縮されていく。知れば知るほどトリチウム水はとても怖いものだった。
 一方、流れ込む地下水をブロックし汚染水を増やさない取り組みは一向にうまくいっていない。正確な地盤調査を行わないまま不十分な凍土壁や井戸の設置、ひいては安全性や耐久性の低いタンクの使用など、これまでの対応はどう見てもずさんだ。それぞれの道の専門家を招いた検討委員会が出す、遮水壁やタンクに対する策は我々素人が学んでも納得できるものが多い。しかし、どのような対策を出しても、国も東電も海洋放出ありきと聞く耳を持たないという。汚染水をこれ以上増やさなければ海洋放出などしなくても安全なレベルまで保管できる方法はたくさんある。
 廃棄物の基準値を見ても、これまでの対応を見ても、国民の命を守るはずの政府が国民に目を向けていないことは明らかだ。実効性のない避難計画に加え、避難経路が広く浸水する予想が出された今、女川原発はもちろん、すべての原発は廃炉以外に道はない。

 

本稿は宮城保険医新聞2022年6月25日(1785)号に掲載しました。

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