【声明】 安倍晋三元首相の国葬に強く反対し、中止を求める


 当会は、9月15日付で以下の声明を決定し、内閣総理大臣、総務大臣、宮城県選出国会議員に送付しました。

 

【声明】

安倍晋三元首相の国葬に強く反対し、中止を求める

 政府は7月22日の閣議により、安倍晋三元首相の「国葬」を9月27日に日本武道館でおこなうこと、岸田文雄首相が葬儀委員長を務め、必要な経費は国費とし、一般予備費を使用することなどを決定した。当会は、「国葬」には法的根拠がなく財政立憲主義に反すること、国民の思想・良心の自由を侵すおそれがあることから、中止を求める。

 「国葬」は、明治憲法下において国葬令があったものの、日本国憲法に不適合なものとして失効している。唯一の例外として、1967年に吉田茂元首相の「国葬」が実施された際には、翌年の国会答弁で当時の大蔵大臣が「法的根拠はない」と答弁し、当時の総務長官も「根拠になる法律もなく苦労した」と述べている。また、1975年に佐藤榮作元首相の「国葬」が検討された際は、「法的根拠が明確でない」とする当時の内閣法制局の見解等によって見送られてきた経緯がある。
 政府は、今回「国葬」をおこなう法的根拠について、内閣府設置法第4条3項33号で、内閣府の所掌事務とされている「国の儀式」として閣議決定をすれば、実施可能との見解を示しているが、そもそも内閣府設置法は内閣府のおこなう所掌事務を定めたものにすぎず、その「国の儀式」に「国葬」が含まれるという法的根拠はない。したがって現在は「国葬」をおこなうことも、その経費を全額国費から支出することも、法的根拠となる規定は存在しない。法令上の根拠のないものを内閣の独断でおこなうことは、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならない」(憲法第83条)とする財政立憲主義の観点からも認められない。
 岸田首相は、今回の「国葬」において、国民一人ひとりに対し弔意の表明や黙祷等は求めないと説明しているが、葬儀を国が主催し、国費を支出することは、個々人が故人を悼むこととは異なり国家として当該個人への弔意を表すことになり、すべての国民が安倍元首相への弔意を事実上強要されることになりかねない。国会の閉会中審査で岸田首相は、「国葬」とする理由について「総合的に勘案」などと説明し、曖昧なままである。とりわけ安倍元首相についての評価は大きく分かれ、各局、各紙の世論調査で「国葬反対」の声が過半数を超えている状況を鑑みれば、これを強行することは国葬に反対する国民の思想・良心の自由(憲法第19条)を侵すおそれもある。

 このような憲法上の問題点があることから、当会は安倍元首相の「国葬」に強く反対し、政府に中止を求める。

2022年9月15日

宮城県保険医協会
2022年度第4回理事会

 

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