Tweet

４病院再編に係わる協議確認書と県の発表文書を読んで

宮城県保険医協会顧問　北村 龍男

　宮城県は２月２０日、４病院再編に係る協議確認書と県の見解について記者発表した。多くの問題を含んでおり、それに対する見解を述べる。

協議方針について
・今後は県立病院機構や各病院を協議に加えることとなった。これまでは頭越しの協議であったことを認めたことになる。
・新病院の病院規模や診療科などの合意が得られていないことが明らかにされた。具体的な協議は停滞しているということか。

新病院の位置づけ：政策医療およびその課題解決について
・県は政策医療の課題解決を求めているとしている。両確認書の中には、救急医療、周産期医療、がん医療、災害医療、新興感染症、地域医療、精神疾患が明示されている。
・県の政策医療の課題解決を求められている分野はこれだけか｡例えば小児医療・成育医療は真っ先に取り上げるべき分野と考える。（国には小児救急を政策医療にとの意見あり）
・県の政策医療の課題解決を言うならば、仙台医療圏の問題として検討するに止めず、まず県全体のおかれている状況、課題の検討から始めるべきである。少なくとも、がんセンター、精神医療センターの再編・移転を前提とした検討から開始すべきでない。
・国は政策医療として19分野をあげ取り組んでいる。宮城県の政策医療の分野も国の１９分野と重なっている。県の政策医療の取り組みは当然国の方針との整合性が必要である。ナショナルセンター、準ナショナルセンターとの意見交換が必要である。
・新病院の解決すべき課題は、仙台医療圏の課題なのか、県全体の医療課題なのか。明らかにすべきである。
・「政策医療の課題解決を図る」とされているが、協議の経過をみると、４病院の統合・合築ありきで、政策医療の話は後からくっつけた話に見える。
追）現在、第８次医療計画の作成が勧められている。今後の宮城県の医療の方向を定めるにあったって、医療計画の検討・作成が優先されるべきである。

運営主体について
・仙台赤十字病院と県立がんセンターは今後の協議とされ、これまでの進展は明らかにされていない。
・東北労災病院と県立精神医療センターは、従前どおりとする以外に手立てはないと思う。

立地場所について
・提案に飛びついたということか。
・仙台医療圏の政策医療の課題を対象とするか、県全体の課題解消を目標にするかで検討される場所は異なる。

日本赤十字社と宮城県の確認に関して；精神科外来機能について
・このような機能は不可欠であるが、救急・入院・地域での患者の日常生活を考えると、外来を作ればこと足りる問題でない。医師・看護師の充足も難しいと考えられる。

労働者健康安全機構と宮城県の確認に関して：合築について
・合築による新病院では、医療機器の共同利用、精神疾患以外の診療に有利とされている。
・医療機器の共同利用では、患者は情報提供書を貰い、初診料を払い、検査を受け結果を情報提供して貰う。各々に患者に負担が生じる。
　また、元々新築される県立精神医療センターに高額医療機器の導入は検討されていないと考えられる。建築に当たって費用の削減にはならない。仮に、県立医療センターの新病院にも高額医療機器を導入する計画があるとしても、経費削減のできるのは、医療機関の側であって、患者の側ではない。
・外来を受診する場合、或いは往診を依頼する場合は、各々患者負担が生じる。情報提供書、初診料などの負担が新たに生じる。

法的拘束力、解除について
・このような確認は何も決められていないことの表明であろう。

村井知事には以下のことを求める。
・宮城県の政策医療、県全体の医療構想について、検討が必要なのは明らかであり、県民、医療関係者を含めた真摯な検討を望む。現在第８次医療計画の検討が開始されている。現段階では、まず第8次医療計画の検討を優先することを求める。その際、検討経過の情報提供は不可欠である。
・今回の統合・合築の背景には医療機関の経営の悪化・困難がある。この問題の主な原因は低医療費政策、低診療報酬である。また、患者数の減少には窓口負担金がある。村井知事は、診療報酬の増額を求めるべきであり、社会保障を充実させる県政を求める。
・４病院の移転について、病院周辺住民の反対がある。一方、富谷市・名取市などでは歓迎の声がある。このことは、仙台医療圏北部・南部の医療環境が手薄であることを示している。仙台医療圏内の住民の分断がなされている。村井知事は住民の分断ではなく、住民の意見を聞き、住民の多くが納得する政策を作る努力をすべきである。

（2023/03/17、2023/03/21訂正）