投稿「意見交換会『地域包括ケアシステム実現のための医療と介護の連携』での発言」


〈投稿〉

意見交換会「地域包括ケアシステム実現のための医療と介護の連携」での発言

理事 北村龍男

 NPO法人介護サービス非営利団体ネットワークみやぎ政策立案チーム主催の意見交換会「地域包括ケアシステム実現のための医療と介護の連携」が2016年(平成28年)2月13日、フォレスト仙台で行われた。参加団体は、宮城県保健福祉部長寿社会政策課、仙台市保険高齢部介護保険課、仙台市医師会、仙台市地域包括支援センター連絡協議会、及び宮城県保険医協会であった。私は発言の機会を与えられたので、発言内容に筆を加え投稿する。
 発言は、保団連の「地域包括ケアシステムに対する見解」の紹介を基本に地域包括ケアシステム(以下、「システム」)についての見解を述べた。また、地域ケア会議(個別ケア会議)の参加経験について報告した。まとめに代え、困難事例についての把握、対応について発言した。(参加者に「保団連見解(ダイジェスト版)」を配布した)

1.地域包括ケアシステム、保団連見解を踏まえて 

11.この「システム」は求められている
①高齢者が、生を全うできる日常生活を営むことができるように、医療・介護・介護予防・住まい及び日常生活の支援が「総合的」に確保される社会の確立は、患者・住民、医療・介護担当者の願いである。
②これまでもこのような取り組みは一部地域で実践されてきた。例えば、公立みつぎ病院の実践がある。御調町での成果は、病院・医療者からの問題提起を行政が積極的に受けとめたことによる。
12.政府のすすめている「システム」
①医療・介護総合確保推進法では、病床削減を主目的とした地域医療構想である「効率的かつ質の高い医療提供体制の構築」と「システム」の構築を車の両輪としている。
②「システム」を確立することにより政府が推し進めようとしているのは、公的な医療・福祉にかかる給付抑制と、自助・互助、営利市場化である。今でも経済的な側面から必要な医療・介護を受けられない人は少なくない。このままでは、自治体間での医療・介護力、患者・利用者の経済状態、地域の環境の違いなどがある中で格差を一層増幅させる。
③具体的には、政府は高齢者に対して、できる限り医療や公的なサービスに頼らず、地域住民の助け合いやボランティア精神に依拠することを求めている。地域包括ケア研究会報告書・概要版PDF(平成25年3月)では、地域包括ケアシステムの5つの構成要素と「自助・互助・共助・公助」の中で、5つの構成要素を支える基盤として[本人・家族の選択と心構え]を示している。そこでは[本人・家族の選択と心構え]は「単身・高齢者のみ世帯が主流になる中で、在宅生活を選択する意味を、本人家族が理解し、そのための心構えを持つことが重要」としている。これは何を意味しているのか? 孤立死・孤独死を制度の前提として求めているのか? (尚、平成27年5月19日の厚労省による都道府県介護予防担当者・アドバイザー会議のPDFでは「本人・家族の選択と心構え」の説明は省かれている)
④政府が求めているのは究極の自助・互助である。政府がすすめようとしている「システム」では患者・国民に必要な医療・介護を提供することはできない。
13.患者・住民が求める「システム」
 それでは患者・国民に必要な医療・介護を提供するためには、どのような「システム」が求められるか。保団連見解では、患者・住民の求める「真の地域包括ケアシステム」の項目で、(1)「真の地域包括ケアシステム」とは何か、(2)公立みつぎ病院の実践から学ぶべきことについて述べている。(公立みつぎ病院の実践については、先に触れた)
 保団連見解を踏まえ、私は患者・住民、医療・介護担当者が求める「システム」の条件を以下のように考えている。
①医療、介護、福祉、公衆衛生、保健サービスを国が財源負担し、費用の心配なくサービスが受けられること。感染症などの取り組みも忘れてはならない。
②必要な時に必要なサービスが受けられること。特に高すぎる窓口負担金免除について取り組みが必要である。
③終末期をどう迎えるか? 生を全うできること。看取り、平穏死を必要以上に取り上げることは、障害期の高齢者から必要な医療の機会を奪い、早すぎる終末期を迎えさせることにならないか?
④医療提供に国が自治体と共に責任を持つこと。
⑤医療(医師、歯科医師、看護師、薬剤師など)・介護・福祉従事者の養成に国が責任を持つこと。
⑥医師・歯科医師の役割の見直しは慎重に。高齢者医療では広い視野の医療が求められている。
⑦非営利によるサービスの提供を堅持し、公共性・公益性を維持すること。
⑧地域包括支援センターの人員増、機能強化を国の負担で行うこと。
14.個々の医師・歯科医師の取り組み
 政府がすすめようとしている「システム」と患者・住民が求める「システム」は明らかに異なる。患者・住民の求める「システム」とするためには、日常診療を通じて地域と深い関わりを持つ医師・歯科医師の取り組みと参加は欠かせない。以下の取り組みが求められる。
①本人・家族との情報共有が求められる。より患者の状態・状況を把握すること。
②地域での連携。医療・介護・福祉関係者間の多職種連携、更に町内会長、民生委員などとの連携が情報の内容を充実し、きめ細かなものとする。
③サービス担当者会議への参加、対応を積極的に行う。
④困難事例の把握と対応。
・ケアマネージャー・地域包括支援センターと連携、問題・課題を連絡、問題提起を行う。
・サービス担当者会議開催提案し、解決策を探る。
・院内に「医療相談係担当者」を表示し、気軽に相談を持ちかけることができるようにする。
⑤地域ケア会議(個別ケア会議)に参加する。仙台市医師会のアンケート調査によると、医師からは、参加したいが診療時間内での開催では参加が難しいと開催時間の要望がある。
⑥今後整備される予定の在宅医療・介護連携支援センター(仮称)の活動への参加、支援要請を行う。
⑦在宅医療に関する各種研究会、学習会への参加・報告を行う。

2.地域ケア会議(個別ケア会議)への参加 

 地域で活動している医師・歯科医師の「システム」への関わりで、特に重要なのは直接参加機会の多い個別ケア会議への参加であり、そこで具体的な事例に取り組むことである。以下、参加経験を述べる。
 福田町地域包括支援センター主催の個別ケア会議参加をしている。参加経験を地域包括支援センターのまとめを中心に紹介する。
21.個別ケア会議への参加のきっかけ
①当院は高齢者が多く、地域包括支援センターへ相談するケースが多かった。
②それまでの相談活動・交流の中で、「システム」について、関心はあるが、十分理解できなかった。実践してみることの重要性を感じていた。
③当院患者の相談の折に、たまたま困難事例について地域包括支援センターとの意見交換があり、一歩前に足を踏み出し個別ケア会議の開催を提案した。
④手探りであったが、地域包括支援センターが積極的に受け止め、準備し開催してくれた。
22.地域包括支援センターの平成27年度まとめより
 平成27年度は3回の個別ケア会議が開催された。以下、地域包括支援センターのまとめを当院職員との意見交換を踏まえ報告する。  (*平成26年度は2回開催)
取り上げられた事例
①軽度の認知症であるが、被害妄想のため家庭内トラブルが起きている事例、
②複数医院に通院、服薬管理ができていない事例。    * ①、②は26年度
③サービスを拒否し介護者に暴力をふるう事例。
④医療や介護サービスを拒否している単身高齢者の事例。
⑤住民とのトラブルが続く高齢女性の事例。
参加者構成(平成27年度)
家族2人、町内会役員 3人,民生委員 3人、サービス事業所関係 2人,市建設公社2人、区役所1人、医師 1人,医療機関関係者 4人,地域包括支援センター4人。
 (追1:延べ人数ではない、 追2:平成26年度には薬剤師の参加もあった)
会議の内容
①適切な内服管理の方法、スムーズなサービス導入について、専門医の受診について。
②見守り体制について、緊急時の対応について。
③対応方法について、支援策について。
会議の成果
①介護保険サービス導入のめどが立った。ケアマネ支援ができた。
 このことを通じて、個別事例への包括の関わりを地域住民に伝えることができた。
②ご近所の見守り状況がわかり、今後の役割分担について確認できた。
 地域の方に地域包括支援センターの活動を紹介でき、より円滑に連携がとれるようになった。
③具体的対応の基本について確認できた。本人の負の部分だけでなく強みも一緒に確認でき、本人理解が進んだ。
見えてきた地域課題
①単身高齢者、身寄りのない高齢者(若しくは身内と疎遠)が増加している。
②支援を進めるうえで身内の協力者がいない。
③認知症のケース増加は認められるが介護者の認知症の理解が低い。
個別ケア会議を実施して感じること
①一連の作業に時間を要し負担が大きい。
②その後のモニタリングや参加者への報告などのしくみができていない。
③主治医の参加について。
これからの活動
①きめ細かな活動、例えば「ゴミ出し」「電灯交換」などに地域の方に参加してもらえるのではないか。
②モニタリングが必要であるが、各回の個別ケア会議の参加者は同じでなく、個人情報の問題もあり工夫が必要である。参加者が個別ケア会議の理解を深めるためにも報告は必要である。
③今後も継続し、年3回計画する。
23.平成27年度第2回個別ケア会議(平成27年7月)の紹介
対象者
80才代、男性、医療や介護サービスを拒否している単身高齢者。
参加者
前・現町内会長、民生委員、地域包括支援センター(所長、主任ケアマネージャー、生活支援コーディネーター、社会福祉士)、医師、看護師、医療事務。
課題及び対応策
①見守りの分担(民生委員と包括職員)の確認をした。
②緊急連絡先(孫さん)の確認をした。
③生活改善の支援を続け、サービス利用に結びつけることを目標とした。
会議開催の成果
 ネットワーク構築ができた。ご近所の見守り状況が分かり、今後の役割分担について確認し合うことができた。
残された課題
①不衛生な環境と栄養状態の改善をする。
②医療機関への受診をすすめる。
⇒平成27年1月に腰痛をきっかけに当院受診。来院時4日間食べていなかった。点滴などは断られたが、検査の結果骨粗鬆症等の治療開始した。

3.まとめに代えて、困難事例の把握・対応

 「システム」は、患者・住民の課題を解決することが期待される。何が必要であるか。
①単身・高齢のみ世帯が増加しており、医療・介護を利用していない事例の対応が重要な課題である。
②多職種連携に留まらず、町内会・民生委員などとの連携が必要である。
③困難事例は、医療・介護サービスを拒否している事例がみられる。待っていてはいけない。困難事例の問題は「自己責任」では解決しない。「医療・介護を拒否して死んでも、それは尊厳死」などの考えを克服する。
④個別ケア会議で取り上げられる事例は一部であるが、「システム」の理解を広げるためにも粘り強い継続が必要である。
⑤行政担当者との連携を密にする。行政の援助なしには基本的解決は難しい。
⑥社会資源、特に人材の掘り起こしが必要である。一方、ボランティアとしての参加を求め続けていては、継続は困難である。
⑦更に、「個別事例としての具体的解決方法」や「制度として解決すべき課題」の提案が求められる。
〈参考〉
保団連:地域包括ケアシステムに対する見解
〈謝辞〉意見交換会でのご意見を参考にさせていただきました。主催者、ご発言の皆様に感謝します。また、個別ケア会議を開き、その資料を参考にさせて頂いた福田町地域包括支援センターの皆様ありがとうございます。

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