投稿「北朝鮮問題と核兵器禁止条約」


北朝鮮問題と核兵器禁止条約

宮城県保険医協会理事 北村 龍男

北朝鮮に核実験・ミサイル発射をやめさせるためにも
日本政府は核兵器禁止条約の署名・批准、対話の推進を

 北朝鮮の動向は、私たちの日常生活に影響を及ぼすようになった。朝鮮労働党創建70周年の10月10日の朝、当院の職員が掃除をしながら「Jアラートが鳴るのではないかと心配した。鳴ったらどうしてよいか分からない」と話していた。
 7月7日国連交渉会議で核兵器禁止条約が採決された。10月6日には、核兵器禁止条約の成立に大きな役割を果たしたICANのノーベル賞が決まった。核兵器禁止への一歩前進だ。これは核兵器保有国や核の傘の下にいる国々への大きな圧力である。当然北朝鮮に対しても大きな圧力であろう。世界の国々に核兵器禁止条約の署名・批准を求めたい。特に日本政府に強く求める。世界の核兵器をなくす活動は、被爆国国民のねがいであり、北朝鮮の非核化を図る唯一の方法である。
 このような情勢の中で、日本政府がまず第1にやるべきことは、核兵器禁止条約に署名・批准し、米朝に無条件で対話を求めることである。

核兵器禁止条約の意義、世界の人々の期待を裏切る北朝鮮

 国連交渉会議参加国は国連加盟国193カ国の内124カ国、賛成は122カ国であった。日本政府はついに参加しなかったが、日本からも多くのNGOが参加した。政党では日本共産党が参加していた。長くなるが核兵器禁止条約前文の一部を引用する「核兵器のあらゆる使用がもたらす破滅的な人道的結果を深く憂慮し、そうした核兵器を完全に廃棄するという当然の必要−それはいかなる状況においても核兵器が二度と使用されないことを保証する唯一の方法でありつづける」「偶然、誤算、あるいは計画によって核爆発を含め、核兵器の継続的存在がもたらす危険に留意し、そしてこれらの危険が全人類の安全に関わることであること、また、すべての国がいかなる核兵器の使用も防止する責任を共有していることを強調する」「核兵器の法的拘束力をもつ禁止は、不可逆的で検証可能な、かつ透明性のある核兵器の廃棄を含め核兵器のない世界の実現と維持に重要な貢献となることを認識し、そしてその目的のために行動することを決意する」等と記載されている。第1条(a)では締約国は「核兵器またはその他の核爆発装置を開発し、実験し、生産し、製造し、その他の方法で取得し、保有しまた貯蔵すること」をいかなる場合にも、行わないことを約束するとしている。これが現在の世界の人々の核兵器禁止の共通認識である。(訳文は日本共産党による仮訳)
 それにも関わらず北朝鮮は9月3日に6回目の核実験を行い、弾道ミサイル発射を繰り返している。

米朝の対立、対話以外に解決の糸口はない

 アメリカと北朝鮮の対立は深まり、戦争勃発の危険がある。戦争は何としてでも止めなければならない。激しい言葉のやり取りで軍事的緊張は高まっている。トランプ米大統領は北朝鮮を「完全に破壊する」と恫喝し、北朝鮮は「超強硬な対抗措置をとる」と応じている。当事者の意図とは別に、偶発的な軍事衝突の危機は高まっている。一度軍事衝突が起こったらコントロールできなくなる。戦争になる。計り知れない犠牲、破滅をもたらす戦争を避けねばならない。戦争を回避するために対話を求める。
 これまでアメリカは、対話に応ぜず、圧力を強めることで、北朝鮮の核実験、軍事強化を留めようとしてきた。日本政府はそれに追随してきた。また、国連安保理も繰り返し、北朝鮮の核実験、ミサイル発射に反対、制裁の決議を上げてきた。いろいろな形で経済制裁も行われてきた。これらの取り組みは成功していない。対話以外に解決の糸口がないことをお互い認めることを求める。

北朝鮮の翻意を促すために、北朝鮮と国交のある国の支持を得ること

 北朝鮮は国連(193カ国加盟)に加盟し、166カ国と外交関係がある。安倍首相が言う国際世論とは安保理加盟の国々などである。北朝鮮にしてみれば、安保理の非難は織り込み済みであろう。それでは、如何にして北朝鮮の意志を変えさせるか?
 必要なことは、北朝鮮と国交のある国々の支持を取り付けることである。またドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領なども「対話による平和的解決」を訴え、米朝間の対話の仲立ちになろうとしている。この力を借りることも欠かせない。

核兵器保有国は廃棄の決意を固めること

 核兵器禁止条約は、国連交渉会議で正式に採択されている。交渉会議には124カ国が参加し、122カ国が賛成した。北朝鮮と国交のある多くの国々も禁止条約に賛成した。ここに希望がある。
 核兵器禁止条約の弱点は、北朝鮮を含め、核保有国が1国も交渉会議に参加していないことである。米・ロ・中・仏・英など安保理常任理事国は、自らの核兵器は保持したまま、敵対する相手に核兵器の放棄を求めている。無理がある。長い道のりであろうが、自らの国の核兵器を放棄することを決意し、少なくともその方向を確認することを求める。

安倍政権の圧力一辺倒の姿勢は既に破綻している

 世界で唯一の被爆国である日本は、核兵器禁止条約の国連交渉会議にも参加せず、北朝鮮との対話も拒否している。安倍首相は、国連総会で「対話をやっても意味がない」「対話でなく圧力を」と緊張をあおり、「すべての選択肢がテーブルの上にあるという米国政府の立場を支持する」とアメリカの軍事力行使を認める態度をとっている。
 安倍政権は安保法制を発動し、海上自衛隊の艦船がアメリカの軍艦に燃料補給をしている。そして、安保法制のもとで万一軍事衝突が起これば、米国の戦争に自動的に参戦することになっている。日本は戦争の当事者になってしまう。安保法制は、日本国民を守っているのでなく、危険にさらしている。
 日本政府が核兵器の放棄の立場に立ち、北朝鮮との会話をめざすことは、日本国民だけでなく、世界の反戦・平和を願う人々から求められている。

 日本政府は核兵器の廃絶をめざす決議案を今年も国連の委員会に提出した。昨年は167カ国が賛成し、23年連続の採択となった。報道によればこの決議案には核兵器禁止条約への言及がなく、昨年の「核兵器の廃絶を達成するという核保有国の明白は任務」の文言は、「核保有国の核拡散防止条約(NPT)の履行という任務」に変更され、核軍縮を求める表現が後退している。日本政府の決議案は、非核国が主導した核兵器禁止条約に触れない一方、核保有国の義務を緩和している、核兵器禁止条約を推し進める国々は決議案への賛成に慎重になっていると報道されている。

総選挙で署名、批准をめざす政府を

 今回の総選挙はこの北朝鮮の問題も重要な争点の一つである。この問題についての国民の関心も高い。北朝鮮問題を解決する手立ては手詰まり状態である。核兵器禁止条約はこの状況を切り開く力になる。日本政府に核兵器禁止条約の署名、批准を求める。
 安倍政権が核兵器禁止条約の署名、批准を行わないならば、総選挙を核兵器禁止条約を積極的に実現しようとする政府、北朝鮮との対話をすすめる政府をつくる機会にしよう。

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