石炭火力発電所 仙台パワーステーション公害問題


石炭火力発電所 仙台パワーステーション公害問題

はじめに
 関西電力と伊藤忠商事を親会社に株式会社仙台パワーステーション(以後「仙台PS」と略)が設立され、一昨年の9月、仙台港に石炭火力発電所の建設が進められ、本年10月1日付けで営業運転が開始された。
 この仙台PS は、11万2千kWと言う設備容量で計画されており、国の環境アセスメント法で定めている実施基準11万2千5百kWをわずか5百kW下回ることにより、環境アセスをすり抜けると言う手法でスタートした。
市民の動き
 発電される電力は東京電力に売電され、収益は関西へ。仙台には何を残すつもりか。
 近くには蒲生干潟があり、自然環境の破壊が心配される。CO2排出の問題もある。PM2.5やダイオキシン等大気汚染による健康への影響が懸念される。それにもかかわらず、仙台PSは、施設完成間近になって説明会を一度開いただけで、それ以外何の情報も公開していない。しかも説明会は市民の強い要請に押されてのことである。
 これに対し、市民は営業開始前の9月27日、仙台PS株式会社に対し

  1. 有害物質により、原告らの健康が侵害されること、
  2. 温室効果ガスがもたらす気候変動により、原告らの生命、健康及び身体が侵害されること、
  3. 有害物質により、蒲生干潟の生物多様性が損なわれること

を争点に、発電所の稼働差し止めを、求め仙台地方裁判所に提訴した。これは公害問題として、日本で初めての石炭火力発電所に対する差し止め裁判となる。
 公害裁判は勝訴がきわめて難しいと言われている。しかし仮に敗訴であっても裁判から導き出される事実や隠された情報の公開、公害の改善策など、得られるものは決して少なくない。
全国的課題
 2015年末の地球温暖化に対するパリ協定以来、脱炭素化は世界的潮流となったが、それにも反し、先進国の中で日本だけが石炭火力発電を増設しようとしている。日本ではこのパリ協定時点で48カ所余の火力発電所の新規建設が計画されていた。これは年間約1億4100万トンのCO2排出と推計されている。
 2016年以降ネットに公表されている新規の石炭火力発電所(既稼働も含め)の予定地は福島県6、兵庫県6、千葉県5、愛知県4、山口県4、秋田県4、茨城3、宮城県3、広島県3、神奈川県2、福岡県2、岡山県、岩手県、宮崎県、三重県、静岡県、長崎県、島根県、北海道各1となっている。今や石炭火力発電問題は全国的な課題と言える。
 国・企業は、安全性・安定性・環境保全性・経済性への配慮が必要とされる電力・エネルギー政策のうち、一貫して経済性のみを重視する政策を打ち出しているかのようだ。発電技術の違い、排出される有害物質の違いなど、各地での状況の違いにも考慮したきめ細かな運動も要求され全国的な対応が望まれる。
宮城県保険医協会が今後予定していること
 宮城県保険協会では、女川原発過酷事故における避難計画に対する実効性の問題、福島原発(F2)事故による放射能汚染物の廃棄処理問題、F2事故後の健康問題等原発廃止に向けた活動等々を行っているが、これらの問題だけでなく、石炭等によるCO2 、NOX、SOX、PM2.5などの有害物質を放出するいわゆるダーティーエネルギー問題にも目を向けることも必要と考える。
 そこで宮城県保険医協会では以下のような取り組みについて検討している。

  1. 石炭火力発電排ガスによる健康被害に付いての健康調査(健診活動・地域住民へのアンケート調査等)・学習活動
  2. 石炭火力発電から排出される有害物質による自然環境破壊に関する調査・学習活動
  3. 健康被害への対応等地域医療体制作りに関する運動
  4. 仙台市・多賀城市・塩竃市等関係自治体への働きかけ(得られた調査・情報等に基づいて)
  5. 仙台PS操業差し止め裁判への協力

 健康被害も含めた状況の(調査)把握と運動の支援、それにCO2等地球温暖化物質の規制(温暖化防止)、再生可能(自然)エネルギーの開発・自然環境の保全等についての政府への働きかけを強化したい。(公害環境対策部長 島 和雄)

This entry was posted in 公害環境対策部. Bookmark the permalink.

Comments are closed.