全国保険医団体連合会「緊急事態宣言を受け、改めて 医療提供体制等確保に向けた、物的・経済的支援を求める緊急要望書」


 全国保険医団体連合会(保団連)は4月10日、以下の緊急要望書を首相、財務相、厚労相、経産相あてに発出しました。

 

内閣総理大臣 安倍 晋三 様
財 務 大臣 麻生 太郎 様
厚生労働大臣 加藤 勝信 様
経済産業大臣 梶山 弘志 様

2020年4月10日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

緊急事態宣言を受け、改めて医療提供体制等確保に向けた、物的・経済的支援を求める緊急要望書

前略 新型コロナウイルス感染症対策に対するご尽力に敬意を表します。
4月7日、政府は、7都府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)を対象に、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令しました。

 流行の拡大が続く新型コロナウイルス感染症によって、医療分野においても、マスクや消毒液などの不足や高騰、一層の感染予防対策のための支出、学校の休校等による職員の休業、受診や健診の手控えなどによって、医業収支は悪化しています。
 緊急事態宣言発令によって、対象となる都府県だけでなく、緊急事態宣言の対象外となっている道府県においても、こうした状況が広がり、医業収支はさらに厳しくなることが予想されます。
 政府は、一般会計からの支出16.8兆円、総額108兆円の緊急経済対策を表明しましたが、いま必要なことは、①知事会も要望しているように、自粛や私権の制限による損失は国が補填する方針を明確にすること、②医療崩壊を阻止するために、感染拡大防止策とともに医療機関に対する財政措置を伴う支援を行うことです。
 この立場から当会では、下記の実現を強く求めるものです。

1.国民生活を支え、感染症対策を実効性のあるものとするために、次の措置を行うこと
① 緊急事態宣言に伴って取られる対策について、国民の理解が得られるよう説明責任を果たすこと。
② 自粛要請、私権の制限によって生じる損失は国が補償する方針を明確にすること。
③ 無保険者や在留外国人を含め、国内にいるすべての方が受診および検査を受けられるようにすること。国保資格証明書の交付をやめ、通常の国保証をすべての加入者に届けること。
④ 緊急に、すべての国民を対象に1人10万円の給付金を支給すること。申請方式では給付金が届くまでに期間を要します。今直面している生活危機を打開するためには、プッシュ型の支援が必要です。
⑤ 賃金、収入の8割以上が補償できるようにし、申請・支給を簡素化すること。
⑥ 償還据置期間を十分にとった無利子・無担保融資を行うこと。

2.医療提供体制等を確保するために、万全の財政措置を行うこと。
① 通常の医療提供体制の確保及び、介護保険事業所や障害者福祉事業所における事業継続のため、医療機関やこれらの事業所にマスク、ゴーグル、消毒液などの提供ができるよう、国・自治体が責任をもって確保すること。
② 中小企業への最大200万円の給付金とは別に、医科・歯科医療機関に対して感染者発生に伴う減収および外来患者や健診受診者の減少等に伴う損失を補填すること。少なくとも、医療機関や介護保険事業所、障害者福祉事業所等において、赤字が発生しないよう、費用補填を行うこと。
 歯科医療については、国が「緊急性がないと考えられる治療については延期」を要請しており、これに伴う歯科医療機関の減収を補填すること。
③ 院内感染を防止するためにも、新型コロナ対応の医療機関と一般患者対応の医療機関に役割分担を行うこと。
 今後、重症患者の集中が予想される感染症指定医療機関に対しては、機能不全を起こさないよう国が物的、人的支援を強化すること。
 軽症者については、借り上げホテル等における療養を前提とし、ホテルコストを含めた療養費にかかる費用は、公費で支給すること。
 新型コロナ対応病院を増やすために、防護服、人工呼吸器、陰圧機器の供給の抜本的強化や、人的補充を行うこと。これに対する費用は国が負担すること。
 感染者が増加している地域には、これまでの「帰国者・接触者外来」に加えて臨時的に「発熱外来」を設置し、感染が疑われる患者が受診できるようにすること。
 外来における診療報酬「院内トリアージ実施料」の特例的対応が決められました。これに伴う患者負担が生じないよう、公費で賄うこと。
 医療従事者が安心して治療に当たれるよう、新型コロナウイルスに感染した場合の補償制度を作ること。
④ 緊急経済対策に盛り込まれた「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(1490億円)」を増額するとともに、多くの医療機関が活用できるように交付の簡素化と利用方法の周知を図ること。
⑤ 償還据置期間を十分にとった無利子・無担保融資を行うこと。
⑥ 公立・公的医療機関の再編統合を直ちに凍結すること。医師需給推計を抜本的に見直すこと。

3.医師が必要と判断した患者に新型コロナウイルス検査が実施できるよう必要な措置を早急に講ずること。血液抗体価検査の導入を速やかに行うこと。

4.新型コロナウイルス治療薬やワクチンの開発・生産を早急に行うこと。医療担当者等へのワクチン接種、治療薬の提供を無償で行うこと。

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