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投稿「『妊婦加算』問題 妊婦の医療費窓口負担金はゼロに」
Posted on
2018年12月25日
by
adminhok
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「妊婦加算」問題
妊婦の医療費窓口負担金はゼロに
理事 北村 龍男
「妊婦加算」問題には二つの面がある。妊婦の診療には配慮が求められ充実した医療を提供する必要があることと、妊婦に医療費の負担を掛けてはならないことである。
子は国の宝である。少子高齢化が進む日本では一人一人の出生を大切にしたい。厚労省には妊婦の診療を敬遠する医師に診療を促す意図があったとも言われている。これらが診療報酬改定で「妊婦加算」を新設した理由であろう。「妊婦加算」では何れの診療科でも妊婦の初診時には75点、再診時は38点が加算される。自己負担3割の妊婦では初診時225円、再診時114円の追加料金となる。医療機関は、妊娠の有無を確認し、診療に当たって放射線検査を避けることや胎児に影響のある薬の処方を見極めるなどの注意が求められる。健康な子の出産のために、このような妊婦の診療に当たっての配慮が必要である。この妊婦加算の新設をきっかけに、医療機関は一層の努力が求められることになった。
妊娠・出産にはただでさえお金がかかる。産前・産後は働くことも制限される。悪阻で入院療養を余儀なくされる妊婦もいる。流産の危険にさらされる妊婦もいる。妊婦に手厚い医療は欠かせない。しかし、妊婦に負担を強いることには、「なぜ妊婦の経済的負担を増やすのか」「これでは少子化はますます加速する」「妊婦税だ」等々の非難・疑問・批判が起こった。当然である。
このような声を受けて、厚生労働省は当面の対応策を示した。①診察後に妊娠が判明した場合やコンタクトレンズ処方など妊娠に関係のない診療を行った際の加算を「不適当な例」として医療機関に通知する。②その上で2020年度の改定で廃止に向け議論する。③ただし、妊婦に配慮した診療がおこなわれるよう診療報酬上の対応策も別途検討する。④2020年度までは運用で対応する。厚労省は「妊婦加算」のうち妊婦の自己負担分(年間約10億円)を公費で補う案も検討していると報道されていた。
しかし、自民党からは加算を「凍結」して事実上、廃止する案が出された。12月19日の中医協は「妊婦加算」について2019年1月1日からの凍結を了承した。結局、自民党の意見に押し切られ、「妊婦加算」は凍結され、事実上の廃止になった。自民党は武器には多額の予算を計上しながら、妊婦加算には公費負担をを拒否し10億円をけちったということになる。
尚、日本医師会は中医協の中で「創設から1年も経過せず、調査や検証もないままに加算の取り扱いに諮問がなされることは、非常に異例なこと。手続きには非常に違和感を覚える」と指摘したが、「妊婦の診療のあり方を検討の場を設け、次回改定で再検討するという前提」で、結果的に了承したと伝えられている。(ミクスonline、2018/12/20)
総務省統計局によれば、2017年4月1日時点で前年比日本の人口は35万人以上減少している。新生児の数も初めて100万人を割り込んだ。日本においてその原因は、長年「若者のセックス離れ」や「女性の社会的進出により、結婚よりもキャリアを優先するようになったこと」だと指摘されてきた。実際、2016年の国の調査によれば、18歳から34歳までの日本人のうち未婚男性の70%、未婚女性の60%に交際相手のいないことが分かっている。しかし、デューク大のアン・アリソン教授は「ジェンダー(文化・社会的な男女の役割)の構造というのは、世の中の社会動向と密接に関連しております。出生率低下、さらに未婚率の増加の背景には、『収入が不安定になっている』という経済的要因が第一に挙げられるのです」と指摘している。日本の失業率は3%を切っている。しかし、それは臨時雇いやパートなどの不安定で低収入な就職口、つまり非正規雇用者ばかり増えているだけであり、正規雇用者は減少している」と指摘している。(クーリエジャパン、2017/9/23)
日本の少子化、出生率低下の最大の原因は非正規雇用者が多く不安定な収入などの経済的問題である。ところが国は「妊婦加算」で新たな負担を妊婦に求めた。これでは日本の少子化からの出口は見出せない。経済的な心配なく、健康な子どもを出産するためには、妊婦の窓口負担金をなくすことが不可欠である。妊婦加算は事実上の廃止になったが、今後厚生労働省は、有識者会議を設置し、妊婦をめぐる診療のあり方を議論したうえで、2020年の診療報酬改定に向けた新たな方針を検討することになった。
私は医療費窓口負担金が患者さんの大きな負担になっていることを肌で感じてきた。東日本大震災の被災者に対する窓口負担金の免除により、被災者が困難な中でも医療を受け続けることが出来た。窓口負担金の免除は、誰でも必要な医療を経済的な心配なく受ける環境を作る。
「妊婦加算」が出産と子育てをためらわせては本末転倒である。2020年の診療報酬改定検討に当たっては、医療機関が十分な対応が出来る診療報酬と、妊婦に対して医療費助成に留まらず、窓口負担金をゼロにすることを提案する。元気な子どもを産み育てる条件・環境を国の責任でつくること望む。
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