投稿「県民投票を求める署名活動に取り組んだ経験」


県民投票を求める署名活動に取り組んだ経験

北村神経内科クリニック 北村 龍男

県民投票のための署名が提案された時の受け止め

・宮城県知事のもと、女川原発の再稼働を止めるのはこれ以外にないと思った。
・しかし、県民投票が実現するまでには、幾つも越えなければならない壁がある。
・この壁を乗り越えるためには、県議会で自民党議員も賛成せざるを得ない署名数を集める必要がある。
・目標通りの署名を集めることができれば、例え県民投票が出来なくとも、女川原発再稼働反対の県民の意思に確信を持つことができ、原発推進派である村井知事、自公に大きな打撃を与える。
・そればかりでなく、市民と野党の共同を前にすすめる大きな力になる。

署名の目標を達成するために

今回の署名の特徴を踏まえて
・自宅は泉区で、クリニックは宮城野区のため、直接署名を集めるのは限られる。
・クリニックの待合室での取り組みには、職員の体制が弱くなる時期なので取り組は難しい。とは言え、職員の協力なしには、クリニック内では取り組めない。配布されたチラシなど繰り返し見てもらい、署名の理解を深めてもらった。
・受任者を拡げることを活動中心にすることとした。
・これまでも各種署名は、患者・家族の皆さんに署名用紙を渡し「次回受診の時持ってきて」と依頼していたので、署名の依頼はお互い慣れている。
・受任者を依頼するには、説明に一定の時間が必要であり、「集める人になって、集めるのは家族だけでも」と訴えた。
・受任者を依頼する対象は、患者・家族、隣近所、医師の知人を考えた。

受任者について

・依頼した受任者は120人を超えた。
・外来では、受診の時に殆どの方に訴えた。
・近所の方は日曜日の夕方訪れた。選んで訪ねたこともあり、結果的には訪れた方は全員が受任者や署名の協力者になってくれた。
・医師には、電話をして、受任者申し込み書をFAXし、FAXで返事をもらった。お願いした半数以上が受任者になってくれた。
・受任者を断る理由はいろいろあった。「息子が東北電力で働いている」「東北電力の下請けで働いたことがある」「義父が東北電力の役員だった」「選挙管理委員だ」など。
・終わって考えてみると、特に医師への取り組みは、手間はかかるがもっとできたと思う。

宮城野区での署名取り組みの実際

・署名開始時には、受任者になってくれた人にどうやって署名簿を届けるか、集めてくれた署名簿をどう回収するか方針を決められないでいた。
・みんなで決める会宮城野連絡会の存在を教えてくれた方がいて、責任者の方と話し合いを持ち、集まっていた受任者に署名用紙を入れた封筒と私のメッセージを渡し、連絡会のメンバーに私が依頼した受任者に届けてもらうことになった。メッセージの中には、集まった署名簿を当院受診の時に持参してもらうか、連絡会の担当者に渡してくれるように依頼した。
隣近所の受任者以外の青葉区などで受任者となってくれた方にも、決める会を通じて届けてもらうことになった。
・直接私が署名数を確認できたのは、クリニックに届けてくれた分、自宅に届けてくれた分、郵送したきた分であった。
・連絡会で回収した分も相当数あったはずだが、連絡会では数を確認する余裕がなかったと聞いている。結局、私が受任者を依頼した方が集めた署名数は確認できなかった。

県議会での審議、否決

・県議会では少なくとも形の上ではていねいな審議が行われた。また、河北新報など、多くの報道があった。これは11万を超える成果である。
・県議会の審議が行われている期間ににも、街頭でのシール投票が各地で行われ、県民投票条例に賛成が圧倒的に多かった。
・しかし、自公の反対で県民投票の条例は否決された。
・自公の反対の理由の一つは、県民投票は県議会を縛るという論拠であった。しかし、県民投票は、間接選挙の弱点を補うものである。県民は県政のすべてを知事や議員に白紙委任しているのではない。世論調査などで多くの県民が反対・疑問を持っている問題については県民投票を行うことは、県民の意思に基づいた政策決定のための最良の選択である。県民投票が議員の活動を制約するという議論は、議員として謙虚さに欠ける。
・結果は極めて残念である。しかし、県民の意思を示す今回の運動の経験には多くの教訓がある。また、村井知事、自公の県民の意思に向き合わない姿勢を明らかにした。

今後の取り組み

・賛成の四党が修正案を出すなど、終始団結して取り組んだ。このことは、今後の県議会における再稼働に向けた審議に大きな力を発揮する。
・第2ラウンドの運動として、市町村段階での住民投票の展望も示されている。
・4月14日には「みんなで決める会『原発』県民投票運動 報告集会」が計画されている。衆知を集めた新たな運動方針が示されることを期待する。

保険医協会の次の機会での取り組み方の提案

・まず、協会内で、丁寧な議論が必要である。それを前提に以下の提案をする。
・保険医協会は女川原発再稼働の問題で、原子力災害時の避難計画アンケートなどの取り組みを積み重ねてきた。引き続き取り組みを強めてほしい。
・県民投票条例を作る運動は、他の問題で今後も取り組まれることが予想される。会員の先生方にどのような運動を提起するか、振り返っておきたい。
・会員自身が県民投票条例を求めるような条件の多い署名は説明に時間がかかり、通常の署名と異なり、多数の署名を集めることは困難である。
・会員の先生方には、受任者になってもらう、また受任者を拡げる運動に取り組んで貰うことが有効であると思う。
・協会でも受任者申し込みの窓口となり、今回のような運動の主体(今回は、決める会)とのネットワークをつくることが必要であろう。
・署名済みの用紙を集めるため、協会の受け取り人払いの封筒などの利用も検討してほしい。

 私にとって非常に貴重な経験でした。恐らく今後いろいろな課題で、今回のような県民投票をおこなうための運動が行われると予想する。このような署名運動は、通常の署名運動と異なり、依頼・受任確認・用紙届け・回収にシステムを作ることが必要である。次の機会には今回の経験も生かしたい。

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