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2020年3月 理事長挨拶
投稿「新型コロナウイルス感染症 基本方針の実行を 特措法改正は不要」
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投稿「新型コロナウイルス感染症 情報開示、専門家のアドバイス、国の財政措置が必要」
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2020年3月4日
by
adminhok
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新型コロナウイルス感染症
情報開示、専門家のアドバイス、国の財政措置が必要
北村神経内科クリニック 北村 龍男
はじめに
連日、新型コロナウイルス感染症の報道がある。当院でも患者さんから不安の声が聞かれる。
仙台市医師会主催で、1月16日に東北大押谷仁教授の講演会「日本の新興感染症への危機管理の現状と課題」、2月10日には東北医薬大賀来満夫教授の講演会「新型コロナウイルス感染症の現状と対応について」があった。仙台市医師会は、継続的にニュースを発行し、情報を提供している。
この間に、中国の武漢を中心とする感染拡大、日本ではクルーズ船内での感染拡大、更に感染ルートが解明できない患者の発生も見られている。
政府は、やっと2月16日になって専門家会議を開催した。取り組みは、遅れている。
この間の、経過・問題を整理し、HPに投稿する。会員同士の意見交換を通じて、保険医協会が役割を果たすことを期待する。
情報の秘匿が感染拡大に繋がった
何故この感染症がこのように広がってしまったか。中国での経緯をみて、何が問題であったかを考える。
中国の新型肺炎をめぐる経緯(赤旗20年2月20日、他)
12月8日、中国・武漢で原因不明の肺炎が確認された。
12月下旬、インターネット上で、肺炎発生がうわさに。
12月30日、SNS上で李文亮医師が警告。
12月31日、武漢市が新型肺炎患者を認める。
1月3日、武漢市警察が、李医師等8人を、社会を混乱させたと処罰。
1月7日、習近平主席が対策を指示したとされる。
1月11日、初の死者。
1月中旬、肺炎の死者などを少なく公表した疑いが持たれている。
1月18日、武漢市中心部の集合住宅地で、4万世帯以上が集まる大宴会。
1月20日、湖北省以外で患者を確認。習指導部がたたかいを宣言。
1月23日、武漢市の駅・空港封鎖。
2月3日、習指導部が対応の不十分さを認める。
2月7日、李医師が死亡。
2月11日、武漢市の団地などを「封鎖式管理」
2月16日、湖北省全域の団地などを「封鎖式管理」
中国では、医療機関の従事者は、422医療機関で3019人が感染の疑い。感染者の約5%にあたる。(2月17日現在)
以上の経緯をみると、情報の秘匿、過小報道が、対応を遅らせ、感染拡大をもたらした。中国当局の責任は重い。
専門家の知恵を生かす
政府が最初の専門家会議を開催したのは、2月16日であった。
押谷教授によると、以前から日本の危機管理の問題点が指摘されていた。厚労省の医系技官はほとんどが感染症の専門家ではない。しかも2~3年に一度は担当者が代わる。内閣官房は厚労省より更に専門性はない。平常時には厚労省担当者、危機発生時には厚労相・政務官、危機深刻化すると首相・内閣官房が担当するが、専門家との距離は危機が深まるほど広がるという指摘である。本来は高度の専門知識と十分な経験を持つ専門家集団が感染症危機管理を担うべき。対策会議の報道にも問題がある。会議での首相の開会の挨拶を報道し、会議後の会見は厚労相が行っている。少なくとも、記者会見には専門家も出席し、記者の質問に答えて欲しい。決定に至った検討過程を開示することは、方針を理解し実践する上で不可欠である。
国際医療福祉大学矢野晴美教授は以下のように指摘している。日本にも、米国の疾病対策センター(CDC)のような、いろんな領域の専門家が集まって危機下で即座にデータを収集分析し、方策をタイムリーに出してゆく組織が必要。現場のニーズをリアルタイムで吸い上げる、現場と意思決定組織とが直結して意見交換出来るシステム上があれば、高い透明性を確保した協力体制が出来る。
クルーズ船対応
2月5日、クルーズ船の乗客・乗員に対して、長時間接した人、熱・咳のある人に、検査し、陽性の人は医療機関へ、残りは14日間待機するという方針を決めた。この方針は、どのようなメンバーで、どのような検討がされたのか?
クルーズ船内の状態については、厳しい批判がある。神戸大の岩田健太郎教授、国際医療福祉大学の矢野晴美教授等の感染症専門家はクルーズ船乗船を経験し、次のように述べている。クルーズ船に初めに派遣されたのはDMATであった。DMATは災害医療のプロでも感染症のプロではない。厚労省やDMATの本部には「清潔域」と「不潔域」の紙が貼って区別されていたが、医療者と非医療者が混在する環境であった。個人防護具の着脱室は着て出発する人と、戻って来て捨てようとする人が混在していた。船内の汚染区域と非汚染区域が区別されていない。船内は、構造上、個人防護具を着ている人と着ていない人の両方が通らざるをえない通路もあった。クルーズ船内での検疫などに携わった関係者への感染が目立つ。
これらに対して厚労省関係者からは、船内のゾーン区別は出来ており、多様な組織が重層的に活動する極めて複雑な状況で現場の関係者は頑張っている、と反論している。関係者が頑張っているのはその通りであろう。問題は、重層的な状態で、きちんと対応出来ているのか? 感染症専門家の検討を踏まえているのか?
2月13日、尾身茂氏は「船は感染防御目的の構造ではなく、隔離の長期化は強度のストレスを強いている。船内環境の悪化が懸念される。船内にとどめておくことは、感染対策上も倫理的に問題があると指摘している。
基本方針について
新型コロナウイルス感染症対策の基本方針は、2月24日の専門会議の検討を踏まえ、2月25日に決定された。専門家会議の見解のうち、特に強調されている点について転記する。また、基本方針については、拡大防止策、今後の進め方の部分を抜粋し転記した。専門家会議の見解、基本方針ともに、概ね納得出来るものであり、対策のスタートラインに立った感がある。
新型コロナウイルス感染症対策の基本方針に具体化に向けた見解
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 2020年2月24日
感染の拡大のスピードを抑制することは可能だと考えられます。そのためには、これから1−2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります。
これからとるべき対策の最大の目標は、感染の拡大のスピードを抑制し、可能な限り重症者の発生と死亡数を減らすことです。
このウイルスの特徴として、現在、感染を拡大させるリスクの高いのは、対面で人と人との距離が近い接触(お互いに手を伸ばしたら届く距離)が、会話などで一定時間以上続き、多くの人々との間で交わされる環境だと考えられます。我々が最も懸念していることは、こうした環境での感染を通じ、一人の人から多数の人に感染するような事態が、様々な場所で、続けて起きることです。
新型コロナウイルス感染症対策の基本方針
令和2年2月25日 新型コロナウイルス感染症対策本部決定
基本方針 (3)感染拡大防止策 イ)今後
① 地域で患者数が継続的に増えている状況では、
・ 積極的疫学調査や、濃厚接触者に対する健康観察は縮小し、広く外出自粛の協力を求める対応にシフトする。
・ 一方で、地域の状況に応じて、患者のクラスター(集団)への対応を継続、強化する。
② 学校等における感染対策の方針の提示及び学校等の臨時休業等の適切な実施に関して都道府県等から設置者等に要請する。
基本方針 5.今後の進め方について
今後、本方針に基づき、順次、厚生労働省をはじめとする各府省が連携の上、今後の状況の進展を見据えて、所管の事項について、関係者等に所要の通知を発出するなど各対策の詳細を示していく。
地域ごとの各対策の切り替えのタイミングについては、まずは厚労省がその考え方を示した上で、地方自治体が厚生労働省と相談しつつ判断するものとし、地域の実情に応じた最適な対策を講ずる。なお。対策の推進に当たっては、地方自治体等の関係者の意見をよく伺いながら進めることとする。
事態の進行や新たな科学的知見に基づき、方針の修正が必要な場合は、新型コロナウイルス感染症対策本部において、専門家の議論を踏まえつつ、都度、方針を更新し、具体化していく。
基本方針を読んで危惧されること
基本方針は専門家会議の見解を受けて、丁寧に作られていると感じた。しかし、いくつかの危惧がある。
軽症の人は家で静養というのは一つの在り方ではある。しかし、本人は不安だし、受診のタイミングを本人に委ねることになる。当院の方針は、特に高齢者の場合、発熱・咳などがあれば電話を貰い、症状に応じて処方を家族に取りに来て貰う。改善しない場合は、帰国者・接触者相談センターへの相談を勧めることにしている。
一般医療機関での患者受け入れは、感染症になれていない医療従事者が対応する。対応した医療従事者に感染リスクが高まる。
基本方針の意思決定の検討・経過・理由を明示して欲しい。
首相記者会見を聞いて
安倍首相は2月27日、全国の小中高校に一斉休校を要請した。翌28日18時から行われた記者会見のテレビ放送を見た。以下、安倍首相の発言のうち、特に違和感を感じた点について見解を述べる。(斜字は安倍首相の発言)
*「あらゆる手立て」をとる。
具体的だったのは、全国の小中高校の休校要請のみ。あらゆる手立てを検討したとは思えない。
*「私の責任」で決めた。
首相が責任を取るのは当然であるが、各方面からの十分な検討を踏まえない独断的な決定では、有効な具体的方針は生まれない。検証すら難しい。
基本方針に沿った決定でなく、その内容は要請だけ。その上、法的拘束力はないとの言い訳も。
*一律休校。
専門家の意見も聞かず、科学的根拠もない。
地域により状態は異なる。基本方針に基づき、各自治体の判断に任せるべき。政府のやるべきことは、それに対してきちんと財政的支援をすること。
子どものリスクは少ない。WHO 2.4%の報告。
*予算措置。
予備費2700億円の話を持ち出していたが、既に野党が提案していた。野党は約2500億円の組み替え案を提案したが、与党は否決した。
あれもやるこれもやるとの助成金の話はした。2700億円で賄える? その中身は検討したのか? これまでの災害時の助成金、補助金を考えると、名ばかりに終わることが懸念される。
これまで決まっているのは153億円。来年度予算案ではゼロ円。尚、米国の予算は2800億円、シンガポールは5000億円。
*検査件数 4000回/日用意している。
実施出来ているのは、1000回/日以下。韓国では、1万回/日以上実施している。クルーズ船乗船した検疫官なども当初は検査しなかった。きちんと検査すればどの位の患者がいるかも分かっていない。
具体的改善の対応策は示されていない。
*病床の確保。5000床確保すると。
現在でも医師・看護師不足で利用出来ない病床がある。
一律休校により、新たな患者の受け入れを断るなど、診療を縮小せざるをえない医療機関が増えている。
重症化しやすい高齢者の対応が、話題にもならなくなっている。
*ダイアモンド・プリンセスの乗客・乗員には、最大限の措置をしてきた。
持病の薬が5日間も手に入らない等を訴える乗客がいた。最小限の措置もしなかったということではないか。
*学習塾にも自粛を要請しながら、保育園や学童保育には開設を求める。
学童保育は人で不足で大変な状況。学童保育では、接触は普通の学校より多くなる。ちぐはぐの極み。
*子どもたちの健康・安全第一
子どもに説明する時間もない。一番の犠牲者は子ども。給食のない長期の休みで痩せて学校に戻る子どももいる。「子ども食堂」でも自粛の動き。
*「株価下落に見合うだけの経済・財政政策をとる」
恐らくこれはきちんとやるだろう。
今後の検討課題を整理すると
・対策本部は、感染症専門家の検討を踏まえ、方針を充実させる。
・感染症専門家のみならず、当事者・関係者の意見を聞き知恵を生かす。
・検討の過程を明らかにすること
・国の責任、特に財政措置を具体的に。
・状態の危惧される人には、早期の対応を。特に、重症化しやすい高齢者に対する対応を。
・感染症対策での医療機関、特に公立・公的病院の役割は重要。
公立・公的病院の再編・統合が誤りであることが明らかになった。
・地域毎の状況は異なるので、医師会をはじめ、宮城県・仙台市の情報の収集に努める。
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