反核医師の会オンライン講演会「原発事故ALPS処理水の海洋放出と海産物、漁業への影響を考える」(2021.7.10)


原発事故ALPS処理水の海洋放出と海産物、漁業への影響を考える

反核医師の会オンライン講演会

 みやぎ反核医師・歯科医師の会は7月10日(土)、オンライン公開講演会「福島第一原発ALPS処理水の海洋放出と海産物、漁業への影響を考える」を開催。東北大学農学部教授の片山知史氏がオンラインで講演しました。

講師の片山知史氏

 今年4月13日、政府はALPS処理水の海洋放出処分を決定し、2年後をめどに準備を進めると発表、漁協を中心に反対の声を上げています。これに関し片山氏は、政府が地元合意を尊重するといっても実際は漁協の合意を意味しており、合意がされれば漁協のみが悪者になり「海は漁協だけのものではない」と批判を受ける、合意しなければ漁協のエゴと批判される、地域や住民を分断させ政府の都合のよい方向に導く手段が「地元合意」であると指摘しました。
 続いてトリチウム水放出の影響について、海という特殊性を考える必要があると次のように述べました。1)海は常に海水が動き、そこに生息する魚類も移動するため、平均値で放射能レベルが低くとも個体差が大きく高い変動性がある。セシウムに関しても平均値では下がってきているが直近でもクロソイなど基準値を超える個体が出ている、2)田畑の作物や家畜と違い生まれてから食品になるまでの履歴が完全には把握できない。野生生物が8割、養殖が2割であり管理が難しく汚染に対する安全性を確保することが困難、3)管理が難しい水産物は風評被害にもさらされやすく国内外の消費者に安心を与える情報を提供しにくい、4)マイクロプラスティックの海洋汚染をみても明らかなように、一度海に放出されたものは取り除くことができない。海流がありどこにどのように影響が出るか予測できない。5)減っては増えながら常に海産物を自然的に育てる海は究極の持続可能な生産の場であり、これを汚すことは生産活動に大きな影響を及ぼす。これらの点から、海洋放出方針は見直すべきであり、まずはこうした視点を含めて国民的な議論をすることが必要ではないかと述べました。
 質疑では参加者から「処理水」ではなく「汚染水」と考えるべきではないか、トリチウムの人体への影響は本当にないのか、通常時の原発排水のトリチウム水とデブリに触れてろ過したトリチウム水は違うのではないか、有機結合型トリチウムの場合は魚類で濃縮が起こり、食物連鎖によりさらに高濃度にならないのか、など活発な質問や意見交換がされ、この問題を深める有意義な講演会となりました。当日は会場、オンライン合わせて63人の参加がありました。

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