シリーズ「女川原発廃炉への道」No,23


シリーズ「女川原発廃炉への道」

女川原発・福島第1原発(1F)による被害の予防策

医科・山元町 齋藤 佐

 女川原発が抱えるリスクは、42年の経年劣化、10年以上の強震・烈震や、近い将来のアウターライズによる大津波だ。女川原発や1FにもあるマークI・IIは、商用原発で最も古くて弱く、烈震に耐えない設計で、烈震がある米国東海岸では稼働禁止なのに、日本では稼働可だ。これは、耐震設計・経年劣化を無視した40年の耐用年数の延長による。柏崎刈羽原発では、烈震の加速度が、設計より桁違いに大きくて、マーク改良型から放射能が漏れた。
 福島第一原発地質・地下水問題団体研究グループ編著の査読済み論文集では(地団研専報61,2021)、地下水の流入防止や汚染水貯蔵タンク全ての全核種の放射能測定の課題、烈震による液状化/地盤沈下による原子炉周囲の埋め戻し地の崩壊の実態や貯蔵タンク漏洩のリスクや、事故前後の調査不足・専門家のリスク評価の無視や官民の隠ぺい・改ざんの悪弊が指摘されている。汚染水が今も一日百㌧以上生じる主因の地下水流入は、砂/火山灰の地層の浸水が水源で、表土の舗装が効いたらしいが、稼働基準では無視されている。汚染水による深刻な健康被害をゼロにする対策の立案で、把握すべきなのは、最悪の汚染だ。これは、気象/施設の悪条件が重なって起きる。このため、汚染強度別にサンプル度数をプロットすると、対数正規分布の様になるはずだ(例 多様な体調・基礎疾患の重なりによる腎機能低下)。けれども、公式報告書では、度数中央値での表記や極端な汚染の無視がみられ、独自調査の水産物の放射能が無視されているので、リスクを小さく見せる粉飾が疑わしいと、私は思う。

今年2月の烈震で損壊した山元町の病院の柱(原発と同じ築40年以上)

 原発爆発で必要に迫られるのは、虚弱な入院・入所者を手厚い介護のもとで搬送/収容する全県の協力体制や、重症者の治療を続ける上に被ばく者の除染にあたる基幹病院の立てこもりに堪える空調の除染能力や大量の物資/装備と技術の蓄積だ。その実現可能性はごく低いので、再稼働中止は、最低限の対策だ。
 幸い、県知事選では、女川原発も争点だ。存続する共同体は、弱者を共有する(内田樹)。専門家の意見や地元合意を蔑ろにし、弱者を担う意思が乏しい人をリーダーに選んではいけないと思う。

 

本稿は宮城保険医新聞2021年10月25日(1764)号に掲載しました。

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