コロナワクチン接種後死亡例について
国は原因解明の努力を
2022/02/08版
宮城県保険医協会顧問 北村 龍男
はじめに
ワクチン接種の死亡例は1400例超が医療機関から報告されているが、国の救済制度への申請は40件あまりに止まっている。資料が足りないとして申請が控えられている例が多いとみられる。
国の審査では、情報不足等によりワクチンと死亡の因果関係が評価不可との判定が圧倒的に多い。
国は提出された情報だけでなく、積極的に因果関係の解明の努力をすべきであり、現状のままでは、コロナワクチンに対する信頼は獲得できず、ワクチン接種を積極的にすすめることもできない。
厚労省の発表
2022年1月21日の審議会(*1)では、死亡例はファイザー社ワクチンでは1、372件(100万回接種あたり8.2件)、武田/モデルナ社ワクチンでは65件(100万回接種当たり2.0件)、アストラゼネカ社ワクチンは1件(100万回接種当たり8.2回)であった。
ファイザー社ワクチンの症状概要に記載された死因等は、虚血性心疾患136件、心不全123件、出血性脳卒中106件当であった。因果関係評価結果α(ワクチンと死亡との因果関係が否定出来ないもの)0件、β(ワクチンと死亡との因果関係が認められないもの)9件、γ(情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価出来ないもの)1、363件であった。
武田/モデルナ社ワクチンの症状の概要に記載された死因等は、出血性脳卒中10件、虚血性心疾患9件、心筋症関連事象5件等であった。評価結果は、α0件、β1件、γ64件であった。
アストラゼネカ社ワクチンは死因等の記載なく、α0件、β0件、γ1件であった。
審議会の報告では、接種と接種後の死亡事象との因果関係に関する現時点の考え方として、特に以下の点を強調している。現時点では、「mRNAワクチンとの因果関係がある」と結論づけるの事例は認められない。現時点においては、mRNAワクチンの接種と疾患による死亡との因果関係が、統計的に認められた疾患はない。
以上が厚労省の発表であるが、インフルエンザワクチンの死亡例は、100万回当たり0.1~0.2件と言われている。明らかに異常ではないか?
(*1):厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)
小島勢二氏の見解
小島氏は月刊保団連2021年11月号に論考「新型コロナウイルスワクチンにおける情報公開」を載せている。以下、小島氏の見解を紹介する。
接種直後の死亡件数の集積
小島氏は死亡報告が554件の時点でワクチン接種後3週間の死亡報告をグラフにした(下図)。図のように接種当日が25件、翌日が98件、翌々日が54件と接種後1週間に明かな集積がみられた。8日以後はほぼ一桁になっている。この結果から「10件までの死亡はベースラインに含まれていると思われているが、接種1週間以内の10件を超える死亡は、ワクチン接種に何かしら関連すると考えるのが自然と思われる」と述べている。
さらに、剖検が行われた70件についても、全例が情報不足で因果関係の評価ができないとされている。中には、剖検した病理医が喉頭浮腫を認め、死因としてアナフィラキシーショックの疑いありとするも、情報不足でワクチン接種と死亡の因果関係が評価出来ないとした例もある。また、担当医が死因とワクチン接種に因果関係ありと報告した59例についても判定はすべて情報不足で因果関係は評価出来ないとされている。
この様な判定は、担当医を含め国民の納得を得ることができるだろうか?
引き金は接種後の血圧上昇か
死亡例報告には、くも膜下出血などの出血性脳卒中、肺梗塞、心筋梗塞など、心血管系の疾患を原因とする場合が多い。心血管系疾患の増加を説明するにはワクチン接種で急激に血圧上昇したことが引き金になった考えやすい。また、ワクチンそのものあるいは産生されたスパイク蛋白が血管内皮細胞を傷害する可能性も考えられると述べている。
判定不能の症例が多すぎる
小島氏は同論考の中でアナフィラキシーショックについても触れている。
部会(*2)では副反応として2、571例が報告されている。部会では、ブライトン分類に従って、報告例をアナフィラキシーに合致するかどうかを判定している。カテゴリー1から3はアナフィラキシーと判定されているが、カテゴリー4は十分な情報が得れれておらずアナフィラキシーと判定出来ない。カテゴリー5はアナフィラキシーでないと判定される。
カテゴリー4で判定不能とされた2症例について例示している。
症例1:ワクチン筋注5分後に鼻汁と咳嗽が出現、みるみる呼吸困難となり気道狭窄等が著明となって、アドレナリンの筋注計4回、ステロイド、抗ヒスタミン薬などの薬物療法を行い回復。
症例2:ワクチン接種後22分の経過で突然の咳嗽発作と同時に咽頭痛および嚥下時痛、急激なアナフィラキシー様症状が出現し、アドレナリンを投与した。
この2症例は皮膚症状などの記載がないので判定不能と判断されたと想像し、それではこの様な症例はなんと診断したらよいのであろうかと述べ、小島氏は判定の意義について疑問を投げかけている。
情報不足なのに情報公開を簡素化
厚労省は「情報量が多すぎて整理してほしい」、「部会(*2)の役割は、個々の症例の判定ではなく、なにか異常な動きがないかを捉えて全体の動向をみることである」との理由で(公開)資料を簡素化したとされている。小島氏は死亡例やアナフィラキシーと報告された症例のほとんどが、情報不足でワクチン接種との因果が評価できないと判定しながら、情報の簡素化を図るのは矛盾していると指摘している。
(*2):厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
報道から見える問題
死亡以外の健康被害については、すでに約400件が認定されているが、死亡例は認定例がない。
死体検案書、剖検結果で死因が「不詳」「特記すべき所見がない」などと記載されている事例については、情報不足と評価されている。剖検例については、さらなる検討が可能でないか?
救済申請の書類を市の段階で一時見合わせなど保留される事例がある。この問題も重要である。コロナワクチン接種後死者が増えているかというのは本当か?という疑問もある。例えは、保険医協会での講演で、宮坂昌之氏は厚労省資料を基に「2/17/2020~12/4/2020の約38週間で、ファイザー社ワクチン接種後に1、269名が死亡した」「単純計算で、1週間で約500万回のワクチン接種が行われたとすると、接種後1週間で突然死する人数の予測値は95人ということになる」「上記の38週間で突然死する予測値は3,610人となる」従ってワクチン接種で死者は増えていないとしている。しかしながら、ワクチン接種後の死亡が確実に報告されている保障がない中での死者が増えたかどうかの議論は全く意味がない。
死亡例報告の判断基準がなく、自治体には戸惑いがある。厚労省は「申請が妥当かを判断するのは国。市町村はまず国に申請をあげてほしい」と求めているが、自治体向けにガイドラインなどを作る予定はないとしている。
一方、コロナとワクチンの情報サイトを運営している「専門家」でも、「疑いがあれば、当事者や遺族は窓口で救済申請することができ広く審査の対象となる」など、実態とかけ離れた情報を流している。
まとめ
国はワクチン接種後死亡例の全例報告の体制、ガイドラインを作成する必要がある。
国は死亡例の審査を書類審査に留めるのではなく、死亡例のみならずアナフィラキシーについても情報不足例は、現場等に赴くなど、原因の究明に当たるべきである。特に剖検例などでは、積極的な検討を求める。
死亡例の原因究明、救済なくして、ワクチン接種への信頼は生まれない。また、実態を明らかにする努力なくしては国民の不安は増すのみである。
死体検案書、剖検結果で死因が「不詳」「特記すべき所見がない」などと記載されている事例については、情報不足と評価されている。剖検例については、さらなる検討が可能でないか?
救済申請の書類を市の段階で一時見合わせなど保留される事例がある。この問題も重要である。コロナワクチン接種後死者が増えているかというのは本当か?という疑問もある。例えは、保険医協会での講演で、宮坂昌之氏は厚労省資料を基に「2/17/2020~12/4/2020の約38週間で、ファイザー社ワクチン接種後に1、269名が死亡した」「単純計算で、1週間で約500万回のワクチン接種が行われたとすると、接種後1週間で突然死する人数の予測値は95人ということになる」「上記の38週間で突然死する予測値は3,610人となる」従ってワクチン接種で死者は増えていないとしている。しかしながら、ワクチン接種後の死亡が確実に報告されている保障がない中での死者が増えたかどうかの議論は全く意味がない。
死亡例報告の判断基準がなく、自治体には戸惑いがある。厚労省は「申請が妥当かを判断するのは国。市町村はまず国に申請をあげてほしい」と求めているが、自治体向けにガイドラインなどを作る予定はないとしている。
一方、コロナとワクチンの情報サイトを運営している「専門家」でも、「疑いがあれば、当事者や遺族は窓口で救済申請することができ広く審査の対象となる」など、実態とかけ離れた情報を流している。
国は死亡例の審査を書類審査に留めるのではなく、死亡例のみならずアナフィラキシーについても情報不足例は、現場等に赴くなど、原因の究明に当たるべきである。特に剖検例などでは、積極的な検討を求める。
死亡例の原因究明、救済なくして、ワクチン接種への信頼は生まれない。また、実態を明らかにする努力なくしては国民の不安は増すのみである。