(2022年11月)
保険証廃止方針は撤回してください
理事長 井上 博之
マイナンバーカードの普及が予定通り進まないためか、政府は力ずくで全国民の取得へ向けて推し進めようとしています。先月13日、河野太郎デジタル大臣は、2024年秋に健康保険証を廃止する方針を示しました。実行されれば保険証が登録されたマイナンバーカードがないと受診できなくなります。
2016年1月から始まったマイナンバーカード。総務省は、その交付率が10月18日時点でようやく人口の半数を超えたと発表しました。これを今年度中に一気に100%に近づけようというプランです。マイナンバーカードの取得や携帯に不安を抱く患者さんにも、カード持参を強要しようとしています。
これに先立って9月5日、療養担当規則に来年4月からの「オンライン資格確認システム導入原則義務化」が収載されました。医療機関に対しては、マイナンバーカードを専用機器(顔認証付きカードリーダー)にかざして、通信回線に接続し資格確認するシステムを準備するよう押しつけです。しかし、医療機関側の体制はまだまだ整っていません。
マイナンバーカード使用によるオンライン資格確認義務化や保険証のマイナンバーカードへの一本化について、当会の会員からは意見や相談が多く寄せられています。「あまりに性急すぎる」「義務化に対応しない医療機関に保険医取り消しをにおわせてくるのではないか」といった声が上がっています。
医療機関には、お子さん中心の医院や高齢者の多い診療所など、規模も違うさまざまな形があります。マイナンバーカードの扱いに慣れず戸惑ってしまう患者さんも少なからずあると想像できます。訪問診療ではどのように扱うのかその方法は示されていません。医療機関の特性を無視した一律の義務化は、百害あって一利なしです。それぞれの判断に委ねてもらいたいと思います。
そもそも法律ではマイナンバーカードの取得は任意とされています。しかし、保険証が廃止となれば、マイナンバーカード所持は事実上の義務となります。こんな無法は許せません。保険証廃止方針は撤回し、まずはきちんとした議論を行うことを優先することを求めます。