寄稿
女川原発運転差止請求訴訟 —裁判解説と今後—
会員学習会に参加して
理事 矢崎 とも子
「東北電力女川原発運転差止請求訴訟」をテーマに、1月25日に当会が行った公害環境対策会員学習会(講師:原告弁護団長・小野寺信一氏)について、矢崎とも子理事より感想が寄せられました。
この学習会に参加して、「裁判をするってこういうことなのだ!やっぱり専門家はすごい」と感動すら覚え、元気をもらうことができました。「皆さんにもその感動をお分けしたい」さらには「この訴訟で立証された避難計画の不備に確信をもち、多くの人に広げてほしい」と思い、寄稿します。
東京電力福島第一原発の事故から12年。女川原発をはじめ全国の原発に多くの国民が反対の声を上げてきました。しかし、11万人を超える県民の反対署名をもってしても、地元自治体に反対の声を上げさせることはできませんでした。再稼働にまっしぐらの女川原発の現状は、反対運動の手詰まり感を感じさせ、やるせなさをもたらしています。そんな中、各地で裁判を起こして頑張る人たちに、わずかな希望の光を見いだしてはいましたが、なかなか自分のこととしては考えられませんでした。
今回結審し5月20日に裁決が出る今回の訴訟は、「避難計画の不備」のみを理由に提訴したそうです。仙台市民オンブズマンとして、長年情報公開請求を行ってきた豊かな経験をもつ弁護士さんが、相手の土俵にある問題を自分の土俵で戦える条件で訴訟を起こしたとのこと。机上で考えた避難計画を「実際のものとして考えてみたらこんなにも矛盾だらけ」と一つ一つつぶしていく。その地道な追及は分かりやすく、世論形成に力を発揮するものと実感できました。女川原発から30㎞圏内の住民は約15万人。事故発生後、検査場所に向かっていいのか、一時集合場所でバスを待っていいのか。その判断は誰がして住民にはどのようにして伝えられるのか。現状の避難計画では検査場所は開設すらできず、バスの確保も配備もできないことをほぼ立証したといいます。5月の判決の日まで、一人一人が再稼働反対の声を上げ続け、廃炉へ向けての世論を皆でつくっていきましょう。
本稿は宮城保険医新聞第1808号(2023.3.15)に掲載しました。