シリーズ「女川原発廃炉への道」No,47


シリーズ「女川原発廃炉への道」

ついに海洋放出、ALPS処理水に三つの嘘

理事 八巻 孝之

◆ALPSを通した水:一つ目の嘘◆
 東京電力が公開したALPS処理施設出口における放射線核種の残留濃度(https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/images/exit.pdf)によれば、セシウム・ストロンチウム・ヨウ素・炭素など、あらゆる核種が水1㍑当たり0・1ベクレルぐらい残留している。ALPSを通った水はトリチウムしか残っていないという言説が、一つ目の嘘。
◆トリチウム排水の海外比較:二つ目の嘘◆
 経産省は、トリチウムであれば世界中の原発が海に捨てている(環境省 トリチウムの年間処分量~海外との比較~(https://www.env.go.jp/chemi/rhm/r4kisoshiryo/r4kiso-06-03-09.html)、日本より中国の方が多く捨てている(2023年6月23日読売新聞ウェブ版(https://www.yomiuri.co.jp/world/20230622-OYT1T50205/)と資料を出す。
 世界の原発は、原子炉を出た蒸気を絶対に外へ捨てていない。海や川から取水した放射能を帯びていない水に熱交換器で熱だけを移し、海や川に排水している。原子炉内から飛び出す中性子の影響で、この温排水の中にトリチウムが発生(水素H2→トリチウム:H3)することは避けられないが、これが健全な原発のトリチウムの排水である。
 福島第一原発の炉底にたまったデブリは、ウランが核分裂したプルトニウムが鉄やコンクリートを溶かし込み、いまだ得体が知れない。それに触れた水はALPSに通せば海に捨ててもよい水になるという言説が、二つ目の嘘。核物質に触れた水を海に捨てている原発は世界でただ一つなのだ。
◆海洋放出以外の選択:三つ目の嘘◆
 1979年3月、米国スリーマイル島の原発事故(レベル5の過酷事例)の汚染水処理は、タンクに入れた汚染水が蒸発するのを待つという、いわゆる自然乾燥(タンク内に放射性ヘドロが残留)であった。1950年代米国サウスカロライナ州のサバンナ・リバーの廃炉では、汚染水の中にコンクリートを流入して固体化させた。陸上でAPLS処理水を処理する方法がある。それを政府が隠蔽、メディアが協力しているのは、三つ目の嘘。

本稿は宮城保険医新聞2023年9月25日(1825)号に掲載しました。

This entry was posted in 公害環境対策部, 女川原発再稼働関連. Bookmark the permalink.

Comments are closed.