投稿「ChatGPTと医療~ 近未来の多活用とそのリスク~」


ChatGPTと医療~ 近未来の多活用とそのリスク~

宮城県保険医協会理事 八巻 孝之

 ChatGPTは既に文書作成の効率化や論文の検索・要約などに応用され始め、医療者の業務負担を軽減するツールとしても大いに期待されている。しかし、注意いただきたいのは多活用による情報漏洩リスクだ。アメリカのOpenAIが開発したChatGPTは、組み込まれた自然言語処理モデルと呼ばれるAIが自動的に最適解を生成する。その知能はアメリカの司法試験を突破し、日本の医師国家試験問題解答も合格水準に達した程だ。AIは、ディープラーニング技術を使用しているため、使えば使うほど進化する。ご存じのように、文書作成、プログラミング、要約、外国語翻訳などが得意だ。例えば「りんごとはどういう果物」と質問すると、りんごについての説明を始める。「〇〇の機能を持つプログラムを作りたいのでコードを教えて」と入力すれば、プログラミングのコードを自動的に生成する。加えて、長文を要約し、他言語翻訳が得意だ。

1.医療現場への多活用
 先に述べたテキスト生成機能は、診断書など、文書作成の効率化やホームページ制作のサポートなど、医療現場への活用が始まっている。私的には、論文要約や英文翻訳、文献検索に活用しやすい。確かに上手く活用すると、医療者の業務負担軽減、業務効率化につながる可能性は高いだろう。ChatGPTを使いこなすためには、ユーザーが入力するプロンプトが重要である。回答を正確に得るために、できるだけ正確な要求をプロンプトに入力する。例えば、論文要約を求める場合、プロンプトに要約したい論文内容を入力し、例えば「〇〇字程度で」と具体的指示を行う。「〇〇という医師が発表した△△の症例に関する論文を探して」など、具体的指示は情報を正確に取得するコツである。

●文書作成
 ChatGPTに最も期待される活用法が診断書などの文書作成であろう。従来、文書作成は、医師、看護師、薬剤師等が1から入力する必要があった。現在私は、病状説明や処方薬説明に関して、たたき台をChatGPTに作成させ、十分に確認し、手直しを行い、完結させている。文書件数が増えるほど、ChatGPTを多活用すれば重要業務に多くの時間を振り分けられる。

●情報発信
 クリニックや病院のホームページの制作サポートも得意だ。患者さん向けに、院内広報や自院ブログなど、周知したい情報ベースをChatGPTで生成し、その内容を添削すれば簡単に情報発信を行える。

●検索・要約・翻訳
 論文要約、英文翻訳、文献検索の手間も省けている。かつて自身が必要とする医療系論文をWeb検索する場合には、検索ワードを考え、何度か試し、内容を精査し、抽出論文を確かめる手間が生じていた。今はChatGPTに読みたい論文の適切な内容を入力すると、該当論文を探し出し、最適論文をピックアップしてくれる。見つけた論文をそのまま要約、翻訳し、閲覧にかかる一連作業も大きく短縮できている。ただし、ChatGPTは2021年9月までの情報しか学習していないため、無料版GPT-3.5は最新論文を取得できない点に注意が必要だ。有料版GPT-4は、Web上からリアルタイムな情報を取得する「Webブラウジング機能」を使うため、常に最新の情報検索が必要な場合は有料版を契約する方が良い。特に、医療係論文は海外発が多いため、ChatGPTで翻訳し、その上で全体要約するなどの使い方が便利だ。ChatGPTは、近未来の情報発信・情報収集双方を効率化させるツールとして、医療界が広く受け入れることだろう。

2.医療現場で活用するリスク
 便利なAIサービスを医療現場で扱うにあたり、3つのリスクが指摘されている。個人情報漏えいリスク、誤情報拡散リスク、著作権侵害リスクである。ChatGPTは、入力された回答をデータベースに蓄積し精度を高めている。そのため、患者の個人情報を安易に入力すると、他ユーザーの回答にその個人情報が表示され、情報漏えいにつながる恐れがある。また、出力された情報の真偽を確かめずに使用し、誤情報に気がつかず発信し、信頼を失う危険性も高い。さらには、出力情報が著作権保守されるかどうかを確認し、著作権侵害に該当しないようチェックすることにも十分な配慮が求められる。このように、その利用にあたって上記リスクを考慮し細心の注意を払うことが、ChatGPT活用のお作法といえる。
既に、医療機関におけるChatGPTの活用例を紹介した。いくつかの病院では、より多くの医学論文を作成し、医療の質向上に寄与できると高評価だ。当然ながら、出力された論文の正確性については、医師の慎重な判断が必要であることに言及している。ChatGPTが出力した情報は必ずしも正確ではない。私も、情報が正しいかどうか、出力してくれた内容と情報のプロセスには十分な時間を費やしている。

AI技術の進歩により、医療現場がその活用をめぐって動き出した。私的には、働き方改革の本質に迫る活用法を広げ、現場に適した活用事例が一層増えることを願っている。

(2024/2/15)

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