宮城県保険医協会公害環境対策部 部長談話「避難計画が破綻している原発の再稼働を中止し、原発ゼロ社会へ ~能登半島地震被害で再認識させられた事実~」


宮城県保険医協会公害環境対策部 部長談話

避難計画が破綻している原発の再稼働を中止し、原発ゼロ社会へ ~能登半島地震被害で再認識させられた事実~

宮城県保険医協会公害環境対策部
部長 杉目 博厚

 2024年1月1日午後4時10分、石川県能登半島でマグニチュード7.6、最大震度7の地震が発生し、甚大な被害をもたらした。この震災により、お亡くなられた方々に対し哀悼の意を表しますと共に、被災された全ての方々に対し心よりお見舞い申し上げます。

 この度の能登半島地震の被害により、原発事故が発生した場合の避難計画がいかに実効性のないものであるかが浮き彫りとなった。
北陸電力は再稼働審査に際し、能登半島北部の活断層の長さを96㎞と評価していたが、今回の地震では150㎞にわたって活断層が動いたとみられている。
海岸では最大約4mの隆起が認められ、志賀原発敷地内でも一部が陥没し35㎝も段差が生じている。いずれも北陸電力の想定外の事象が発生したのである。

 自然災害はこのように時として「想定外」の大きさで、「想定外」の被害をもたらす。
「想定外」が起こるからこそ大規模災害、大規模事故は起こるのである。これは避けられない事実である。
この避けられない事実がある限り、我々はその被害を最小限に留めるための意思決定を行い、実行しなければいけない。

 先に述べたように、原発事故が発生した際の避難計画は今回の地震被害によって破綻した。これは志賀原発に限ったことではなく、日本にあるすべての原発の避難計画が破綻したといえる。
地震による道路の崩壊や、土砂崩れによる寸断。事故時に想定されている屋内避難はその家屋や建物自体が倒壊。地盤沈下や海底隆起により港が使えなくなり船舶が接岸できない事態。津波による被害。通信障害などによる避難の指標となるべきモニタリングポストの機能喪失。
自然災害による複合型災害においては、全国の原発立地自治体が掲げている避難計画など絵に描いた餅にしかならない。広域避難や屋内退避など全く実効性のない机上の空論である。

 もし女川原発で自然災害による事故が発生した場合、女川原発は牡鹿半島の付け根にあり、その避難の困難性は更に高まる。東日本大震災発災時のことを思い出してみても明らかだ。地震による道路の損壊、寸断。津波による大規模な被害。あの時の女川町や石巻の状況を思い出すだけで、避難計画は破綻していることは既に明らかなのだ。
自然災害においては「想定外」は必ずあり得ることである。これは人類の歴史を振りかえれば自明の理である。原発事故もその域から外れることはない。

 私たち宮城県保険医協会は、震災後から一貫して実効性が破綻している避難計画の女川原発再稼働反対を訴え続けてきた。今回あらためて能登半島地震の被害を目の当たりにし、その主張に確信を持ち、より一層の緊張感と緊迫感をもって訴える。

・原発事故発生時の避難計画は破綻しており、実効性のある避難計画などは未来永劫あり得ないことから、女川原発再稼働は中止し、廃炉とすること
・同上の理由から、日本における原発は廃炉とし、原発政策に費やす資金を再生可能性エネルギーの拡充・拡大、蓄電システムの更なる研究開発・運用、送電網の整備などへと移行し、原発ゼロのエネルギー社会を実現すること

以上

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