シリーズ「女川原発廃炉への道」
「原発回帰やむなし」が基本方針は危険な道
内科・仙台市 千葉 明日香
5月16日付の河北新報に「原発・再エネ最大活用」の見出しで経済産業省が5月15日エネルギー基本計画の見直し議論に着手し、2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする政府目標と人口知能(AI)の電力需要拡大を見据えて再生可能エネルギーと原発を最大限活用する方向で検討との記事がありました。ロシアのウクライナ侵攻による燃料輸入費高騰、地震による火力発電所停止などの経過、国際的に石炭火力廃止の流れなどあり、原発の積極的活用を明記したという政府方針を紹介し、次世代型の技術も繰り出し再生エネルギーを積み増すが、再エネの2022年実績は21.7%で達成への道のりは遠いと述べられていました。
2021年決定の現行第6次計画では2030年の電源構成における原発比率を20~22%、再生エネルギーを36~38%とされています。目標に向けて、再生エネルギー導入・普及のための科学技術開発が進むこと、省エネルギー対策が進むこと、それらの取り組みに対して政府が積極的な支援施策を講じることなどが基本方針になって欲しいと思います。戦禍の中で原発が攻撃の標的になる可能性が示唆され怖かったことや能登半島地震が起き、1973年に地元住民の反対で珠洲原発建設が中止されていなかったら・志賀原発が稼働中だったら、さらなる困難が生じた可能性があると強い危機感を感じたことなどを振り返りながら「原発回帰やむなし」を基本方針にするのは危険な道だと思うのです。
基本の方向性は、目先の利益よりも国民の生命に配慮したエネルギー政策、長期的な安全性、経済効率を考慮した方針であってほしい。そんな願いとは逆行するように地元宮城県では十分な議論もないまま、老朽化した女川原発2号機の再稼働準備が進められています。一県民としてとても悲しいです。
本稿は宮城保険医新聞2024年6月25日(1846)号に掲載しました。