決 議
岸田政権は、マイナンバーカード利用ありきの「医療DX」推進、防衛費の大幅増、原発回帰など新自由主義と軍拡路線に舵を切り、医療・社会保障費を切り捨てる方針を鮮明にしている。75歳以上医療費窓口負担2割化、保険料引き上げなど、さらなる負担増・給付削減は受診抑制を加速させ、国民の健康悪化が懸念される。2024年度の診療報酬改定は本体部分0.88%引き上げに抑え、全体では0.12%のマイナス改定である。昨今の物価・光熱費の高騰も負担となり医療機関の経営は厳しさを増している。このような改定では、従業員の賃上げどころではなく、国民に良質な医療を提供するのにも極めて不十分な改定である。
さらに政府は、2024年12月2日に現行の健康保険証を廃止する方針を閣議決定した。マイナ保険証の利用率は4月時点で6.56%であり、データの誤登録をはじめとしたトラブルに対する国民の不安が払拭されたとは到底いえず、医療現場に負担や混乱を招くことは必至である。また、オンライン資格確認システム導入義務化に続き、オンライン請求の導入義務化も強引に推し進めている。これは導入できない医療機関を廃院に追い込むことにつながり、地域医療の崩壊を引き起こしかねない。
2024年度政府予算では、社会保障費を削る一方で防衛費に約8兆円を計上している。今、政府がすべきは防衛費の大幅増額ではなく、医療・社会保障を充実させ、疲弊した国民生活の改善に努めることである。
本総会にあたり、医療の第一線を担う我々は、地域医療の充実を求め、広く人々と協力・協同し、下記の要求実現に向け取り組むことを決議する。
記
一、2024年12月に現行の健康保険証を廃止するとの政府方針は撤回し、存続さ
せること。
一、オンライン資格確認システムとオンライン請求導入の原則義務化を撤回する
こと。
一、地域医療を守るため、診療報酬を抜本的に引き上げるとともに、医科歯科格
差をなくすこと。
一、だれでもどこでも安心して医療が受けられるよう医療費抑制策を改めること。
75歳以上の窓口負担2割化を中止し、患者窓口負担を引き下げること。
一、宮城県立がんセンター、精神医療センターと仙台赤十字病院、東北労災病院
との統合、移転構想は撤回すること。
一、地域の実状を鑑みない行政主導による公的病院の再編・病床削減をやめるこ
と。保健所体制を強化するなどコロナ禍を教訓とした公衆衛生体制の確保を
図ること。
一、医療従事者の労働環境を改善・充実させる施策を講じること。公的責任で必
要な医療従事者を養成・確保し、医師不足・偏在を解消すること。
一、医師、歯科医師の裁量権を尊重した審査、行政手続法に則った指導・監査と
すること。
一、消費税率を引き下げ、医療にはゼロ税率を適用すること。
一、東日本大震災を教訓とした大規模災害時の被災者の医療費免除や生活再建支
援、民間を含む被災医療機関への公的支援等を制度化し、拡充すること。
一、女川原発をはじめとする全ての原発を廃炉とし、再生可能エネルギー政策へ
抜本的に転換すること。東京電力福島第一原発事故によるALPS処理水の海洋
放出を中止すること。
一、防衛費の大幅増を中止し、社会保障費の拡充を図ること。
一、人命を守る医師、歯科医師の団体としてロシアのウクライナ武力侵攻および
イスラエルとハマスの軍事衝突に抗議し、外交的解決を強く求めるとともに、
人権尊重、平和主義、民主主義に基づく日本国憲法を堅持すること。
2024年5月25日
宮城県保険医協会第54回定期総会