反核医師の会 西尾正道氏講演要旨


核戦争を防止する宮城医師・歯科医師の会

低線量被曝による健康への影響をテーマに記念講演

核戦争を防止する宮城医師・歯科医師の会は、2月15日、保険医協会研修ルームにて第23回定期総会を開催しました。公開講演では、北海道がんセンター名誉院長の西尾正道氏を講師に迎え、「福島第一原発事故と健康被害ー低線量被曝による健康への影響」と題し、講演いただきました。

以下、西尾氏の講演要旨を掲載します。

現在の放射線医療の教科書のすべてがICRPの基準に準じたものになっている。この基準を作った委員によると「基準を厳しくすれば施設の安全管理に膨大な金がかかる。科学的根拠よりも核開発や原発を担う側の要請に基づいて作られた」と証言している。原子力政策を推進するための基準であり、安全のための基準ではなく科学的でもない。

外部被曝と内部被曝があるが、内部被曝はガンマ線しか測定しておらず、アルファ線とベータ線を測定することが日本でまともにできないのは問題で、検査できる体制を早急に国は作るべきだ。たとえばセシウム137のガンマ線が尿から1ベクレル検出されれば体内ではベータ線とガンマ線の各1ベクレル、合計2ベクレルを被曝しているが、測っているのはガンマ線だけなので1ベクレルのみ被曝したことになっている。

内部被曝を問題にするのは放射性物質が身体に残り、継続的に被曝するという恐ろしいものだからだ。アルファ線は1mmも飛ばず、ベータ線も数ミリしか飛ばない。したがって被曝するのは周辺の何層かの細胞のみとなる。同じ細胞にずっと当たることになり、放射線の影響がより深刻と考えられ、軽視できない。

事故後2012年3月までは暫定基準として水1リットルあたり200ベクレル以下であればよいとされていた。原発の温排水の基準値は1リットルあたり90ベクレルだからその倍以上もの濃度の水を飲まされていたことになる。今は食品で100ベクレル、牛乳50ベクレル、飲料水10ベクレルの基準になったが、1年間で1400ベクレル程体内に蓄積して推移するとみられる。内部被曝は今現実に進行している。日本社会のでたらめさが原発事故をめぐるすべての問題に凝縮している。このことを冷静に考えるべきだ。

 

〈参加者の感想〉

・今まで知らなかった情報も入れていただいてありがとうございました。原発事故後、放射線取扱主任者の資格をとって勉強させてもらいました。自分自身で環境中の線量を測定。食材もNPOの方と協力して測定しております。Β核種、α核種が今後問題となると予想しております。バイオアッセイ等も取り組んでみたいと思います。

・学ぶことの重要性を痛感しました。

・放射線医学専門家からみたICRPの問題とチェルノブイリ原発被害の実態の読み方が大変勉強になりました。

・低線量被曝、海洋汚染の問題をはじめの様なデータを示しながら現在の複合汚染や社会問題まで明らかな話を聞き、ショックを受けました。もっとこのような話を広めて問題解決のための運動化をすすめていく必要性を感じました。

・西尾先生の話は大変良くわかりやすいものでした。特に内部被曝に関しての指摘は正確で重要な点だと思います。つまり放射線が物質と反応し、自己エネルギーを周辺にあたえてゆく、この部分が被曝する。他は到達しないので被曝しない。そこから被曝の本質、原子分子の世界から見るとエネルギーによって分子の切断がおこる。この点まで指摘されてほしかったと思います。(2時間では時間不足だと思いますが。)また、多くの臨床例もrichでpesuasiveでした。時間をかけて再度聞かせて頂きたい内容でした。ありがとうございました。

 

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