当協会は13年度第12回理事会において下記の理事会声明を決定しました。
理事会声明
国民皆保険を崩壊させる「選択療養制度」の撤回を求めます
3月27日、規制改革会議は、新たな保険外併用療養制度として「選択療養制度」の新設を提案した。4月16日の経済財政諮問会議・産業競争力会議では、安倍首相が関係大臣に検討を指示した。
同制度は、医師が患者に必要な情報提供をすることなどを条件に、患者が選択した行為について、個別に保険診療との併用を認める仕組みである。「患者ごとに自己責任で混合診療を認める」同制度は、混合診療を全面解禁するものであり、国民皆保険制度を崩壊させるものである。
規制改革会議の提案では「一定の手続き、ルール」に基づくとされているが、あげられているのは「患者・医師間の診療契約書を保険者に届け出る」程度で、保険者団体からも「各保険者が個別の保険外診療の有効性・安全性を判断することは事実上不可能である」と指摘されている。さらに、同制度は「必ずしも『評価療養』のように保険導入のための評価を行うものではない」とされ、一部の例外はあるとしても基本的には将来の保険導入を前提としないものである。
同制度が実施されれば、第一に、安全性、有効性の担保されない行為が、保険診療と併用されることになる。患者団体である日本難病・疾病団体協議会も「藁にもすがりたい思いの患者にとって、対等なインフォームドコンセントがどの程度担保できるかは疑問」として、患者の生命と健康に大きな被害が生じることを危惧する声明を発表している。
第二には、新たな治療技術や医薬品が保険給付の対象外に留め置かれ、経済力によって受けることのできる医療に格差が生じる。
第三には、本来は全額自己負担の自由診療に公的医療費が使われることになり、高額な自由診療を利用できる一部の人のために、多くの患者・国民が支払っている保険料や税金が充当されるという「負担の逆進性」が起こる。
2004年12月の厚生労働大臣と規制改革担当大臣の混合診療にかかわる「基本的合意」は、一定のルールの下で保険診療と保険外診療の併用を認めつつも、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」とした。今回の「選択療養」の提案はこの合意にも反するものである。
規制改革会議や厚生労働省では、外国で承認されているものに限ることや審査機関の設置などが検討されているが、それならば現行の「評価療養制度」で対応可能である。
患者団体、保険者団体からも反対の声が出ている「選択療養制度」構想は、ただちに撤回することを求めるものである。2014年5月15日
宮城県保険医協会
第12回理事会