女川原発の再稼働に関する公開質問書


当会公害環境対策部は以下の「女川原発の再稼働に関する公開質問書」を作成し、12月10日に東北電力へ送付しました。

平成26年12月10日

公開質問書

東北電力株式会社取締役社長
海輪 誠 殿
東北電力株式会社女川原子力発電所所長
津幡 俊 殿

「東北大震災後の女川原子力発電所の再稼働に関する質問」

宮城県保険医協会
理事長 北村龍男
公害環境対策部長 島 和雄

拝啓

 貴社におかれましては電力の安定供給のため日夜、ご努力のこと、ご苦労様です。
 平成23年3月11日の東日本大震災に際して、女川原子力発電所(以下、女川原発)が福島原発のような大惨事を起こさなかったことに多くの県民、国民は安堵したものです。現在、地震・津波による破損の修理にご多忙なことと拝察いたします。
 当会は県内の医師・歯科医師約1,640人が加入する団体で、地域医療の向上に努力しております。日頃より、当会にいただいておりますご厚情に感謝申し上げます。
 さて、当会の中に公害環境対策部があり、平成26年5月25日(日)には部会員を中心に11名が女川原発のPRセンターを見学させていただきました。その際、いくつかの質問をさせていただき、それぞれに回答していただきました。しかしそのご回答になお疑問が残り、今回、公開質問書としてお送りいたしますので、平成27年1月末までに書面にてご回答をお願いいたします。

質問1.女川原発の敷地にある6箇所のモニタリングポストの測定値について
 大震災後、一号炉に近い1箇所(MP-2)で、放射能が異常に高くでました。(3/13 AM1:50, 21μSV/hour、前日は0.03μSV/hourなので677倍)気象庁気象研究所の動画資料によれば、最初の福島からの大気が風向きによって牡鹿半島に達したのは、3月12日20:00から13日12:00頃までの16時間。その後、風向きが変わり、同日16:00からは断続的に3月14日の12:00まで、福島からの大気が牡鹿半島の原発地域を流れています。3月12日以降のモニタリングポストの異常値について貴社職員は「福島原発からの放射能が海上を飛んできたため」と説明されました。しかし女川と福島の原発は約120キロも離れており、狭い敷地の中の1箇所だけが高い値を示すのは不自然で、モニタリングポストの異常値は3峰性に上昇し、3峰目の上昇が最も大きく、MP-2以外の放射能値は約2時間ほどで低下、MP-2だけが比較的高い値を維持しました。この放射能の上昇と下降は福島からの大気の動きとは一致していません。また排気口からの放射能がモニタリングポストの異常値より15分ほど遅れて検出されたことは、むしろ原発建屋内部で放射能漏れがあり、まず排気口以外のところから漏れ、その後、排気口からも漏れたことを示しているのではないでしょうか。我々は、老朽化した女川原発の一号炉で放射能漏れが起きたのではないかと考える方が真実に近いのではないかと考えます。どんな破損が起きたのか、放射能漏れの有無を公開していただきたいと思います。もし一号炉からの放射能漏れがなかったら、6箇所のモニタリングポストのうち何故1箇所だけが高い値を示したのか、排気口からなぜ放射能が検出されたのか、合理的な説明をいただきたいと思います。我々は復旧作業に当たった作業員から、事故後、建屋内で非常に高い放射能を観測したしたとの証言を聞いています。我々は、女川原発の再稼働に大きな不安を覚えざるを得ません。異常値が検出された時期の建屋内の放射能の測定値、排水の放射能の測定値も含めて、ご説明下さい。(なお、福島原発では地震のあと、浪江町から飯館村を皮切りに非常に高い放射能汚染が広がったのは、15日朝からです。)

質問2.使用済み核燃料プールの容量について
 現在、一号機プールの容量790tに対し420tが使われており、再稼働した場合、試算では5.9年(東京新聞による)、あるいは8.2年(資源エネルギー庁、平成26年9月)で満タンになります。再処理施設(六ヶ所)が事実上見通しが立たない中、また、核燃サイクル事業が事実上破綻している中、この問題についてどう考えているかについて質問いたしました。貴社職員は、「六ヶ所が稼働することを期待している。また、プールの容量はラックを増やすことでまだまだ十分対応できる」と回答されました。問題は、現在使用済み核燃料は安全に保管するために必要とされる基準の間隔で保管されていますが、東北電力が言うラックを増やす(リラッキング)はその間隔を限りなく狭め、詰めこむという方法です。この方法は再臨界を起こす可能性も高く、大きな地震により、使用済み核燃料の損傷も懸念される非常に危険性の高い方法です。貴社は本当にこの方法をとることを検討しているのでしょうか。しているとすれば、その安全性を担保できる確固とした科学的根拠を示してほしいと思います。

質問3.運転開始から約30年を経過した一号機について
 今回10年の延長を申請したようですが、そのあと、廃炉とすると考えていいのか、その計画はあるのか、質問いたしました。貴社は、「廃炉は全く考えておらず、40年を経過しても例外的に20年間の延長は可能という、改正原子炉等規定法があるので、それを目指したい」と回答されました。しかし、そもそも原子炉は30~40年がその耐用期間と考えられていた事実が存在する中、最大20年の特別処置まで考えて廃炉は全く考えていないという姿勢には、疑問を感ぜざるを得ません。老朽化した被災原発の安全性を、不十分な安全基準をクリアするということだけで良しとすること自体に問題があると思います。まして、コスト面から考えても巨額の設備投資が必要となり、そもそも採算がとれるか疑問です。その巨額な費用は電気料金に上乗せされ、ユーザーの負担となります。むしろ廃炉の方向性、採算性を打ち出すべきと考えますがいかがでしょうか。

質問4.事故発生時の避難計画について
 自治体に作成が義務化されている事故発生時の避難計画は、女川原発の周辺の道路状況などから考えると実行困難なものが予想されます。基幹道路が一本しかなく、その損壊や渋滞も予想され、多数の自動車の行く先も宿泊地も確保されていません。自治体が有効且つ実行可能な避難を作成しなかった場合、貴社はそれにどう対応し、それでも再稼働するのでしょうか。

資料:気象庁気象研究所の動画(別添資料を参照下さい)

連絡先:宮城県保険医協会
〒980-0014
仙台市青葉区本町2丁目1−29
仙台本町ホンマビルディング 4F
TEL 022-265-1667
FAX 022-265-0576

 参考

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