被災者医療費免除再開会員アンケート
来年4月以降も必要が半数
東日本大震災被災者の医療費免除の再開に対し、当会は会員医療機関を対象に被災者の受診状況を把握するアンケートを実施しました。その結果、回答のあった9割の医療機関で免除対象者の受診があり、およそ半数の回答者が、来年4月以降も免除の継続が必要だと、考えていることがわりました。
調査は10月22日から31日までFAX送信可能な当会会員816件を対象に協力を呼びかけ、83件(医科会員53件、歯科会員30件)から回答が寄せられました(回収率10・2%)。
免除対象者の受診については、94・0%の方が受診をしていると回答しました。それに関連して、免除対象者による過度の受診や薬の長期処方など、不適切だと思われるような受診があったかということも尋ねました。結果は「いいえ」が95・2%でした。「はい」では、「免除対象になった途端に受診をして、免除の終了が近づくと薬を多く処方するよう求められた(医科)」「免除の期間内に予約をたくさん取り、期間内で治療を終わらせるよう求められた(歯科)」という事例があげられました。
設問3、免除されている患者さんで不適切な受診がありましたか。具体例
- 免除になった途端に受診する。期間終了近くに受診して、薬を多めにと希望する。(医科・皮膚科)
- 免除期間内に多くのアポイントを取り、治療を全て終了してほしいというような無理な注文。(歯科)
今回の限定的な免除の再開に対する患者さんからの不満や意見については、13・3%の方があったと回答し、「免除期間を延長してほしい」「対象範囲を拡大してほしい」などの具体例があげられました。
設問4、受診する患者さんから限定的な再開に対する不満や対象範囲の拡大など免除措置に対する意見を聞くことがありますか。 具体例
- 期限を長くしてほしい。(医科・内科)
- 免除措置の期間を長くしてほしい。(医科・内科)
- 高額なRAの生物製剤が使えなくなった。(医科・整形外科)
- 当院では無料低額診療事業を行っています。そのため、医療費一部負担金免除が打ち切られた際も対応はできますし、実際にしてきました。ただ、無料低額診療ができない体制だったら、恐らく受診することを拒んだのではないかと思います(当院の無料低額診療対象者の大半は生活保護基準以下か、それに準じた生活レベルです)。(医科・内科)
- 所得により、対象外になった方より不満の意見が多々見受けられた。(医科・内科、精神科)
- 免除期間の延長希望あり。(歯科)
- 限定的ではなく、すべての人に拡大してほしい。(歯科)
- 対象範囲を拡大してほしい。(歯科)
来年4月以降も継続すべきかという設問に対しては、48・2%の方が「はい」と回答しました。その理由として、「経済的な支援が必要」「免除再開後、わずかではあるが受診を控える方が減ったから」などがあげられました。それに対し、4・8%の方が「いいえ」と回答。また「どちらともいえない」と回答した方も45・8%と「はい」と同程度の結果となりました。理由としては「各人の経済的状況が異なるため、一律にいえない」「被災者だけが社会的弱者ではないと思うから」などがあげられました。
設問5、今年4月に再開された限定的な免除措置は、来年4月以降も継続すべきだと思いますか。 その理由
はい
- 収入が少ないとの意見あり。(医科・内科)
- 経済的理由により、受診を控えることが少なくなるよう支援したいと考えているから。(医科・耳鼻科)
- 状況の大きな変化(災害公営住宅への入居など)がほとんどないので、継続は当然。(医科・内科)
- 特に震災を受け、収入の減った方にとっては必要かと思われます。(医科・内科)
- 昨年4月に免除中止になってから、受診を控える患者がでてきた。再開後、控える患者が少し減った。(医科・泌尿器科)
- まだまだ復興が遅れている。元々、地方には目がいかない政府だが、復興に関しても同じで置き去りにされている。(医科・小児科)
- 生活困難している方の医療費をバックアップするには必要だから。(医科・耳鼻咽喉科)
- 低所得者に対する免除がなくなると、治療方法に大きな格差を生じてしまう。(医科・眼科)
- 震災後の生活再建がまだ出来ていない人がいる。この方たちに医療面からの支援が必要と考える。(医科・眼科)
- 免除対象者の生活再建が進んでいないため。(医科・内科)
- 慢性疾患のため長期治療中の被災者が多く、免除措置は今後長期に必要です。仮設居住、生活不安定な状況が続くので、低所得に限定しない免除措置が求められています。(医科・内科)
- 患者様の負担が軽減するため、継続していただきたい。(医科・内科、精神科)
- 経済的な支援が必要である。(歯科)
- 医療費支払い困難な方が多いため。(歯科)
- 窓口負担が明らかに受診率に影響するから。(歯科)
- 経済的に不安定な方も、安心して治療を受けることができるため。(歯科)
- 経済的負担が大きいから。(歯科)
いいえ
- 現在、経済的に困っている人は、震災が直接的な原因という人は少なく、以前行っていた日常的な生活に戻れていない人が多いと思われます。当地では求人もたくさんあるが、応募する人があまりいません。(医科・内科)
どちらともいえない
- 費用の問題があり、どちらとも言えません。(医科・整形外科)
- 患者さんによって、必要ではないと思う方もいる。(医科・脳神経外科)
- 本当に困っている人であれば、免除を受けてもいいと思うが、免除に甘えて自立できない人がいるのではないでしょうか?その境界線が難しいです。(医科・整形外科)
- きりがないので、もう終了としても良いと思う。(医科・内科)
- アンケートをとれば免除希望の方が多いのは当然と思います。しかし、いつまでも免除は福祉予算が厳しい現状ではいかがなものでしょうか。いつまで続けるんでしょうか。(医科・内科)
- 免除になる規定が不満。明らかに免除不要の患者も多い印象あり。もう少し厳しい規定でも良い。(医科・皮膚科)
- 長期的に完全な無料化が良いとは思わない。ごく一部でも負担があった方が患者さんの治療意識が高まって良いのではないかと考える。(医科・内科)
- 各人の経済的状況が異なるため、一律にはいえない。(医科・内科)
- 本当に必要があり、免除を受けている人もいるが、そうでもないケースが多々ある気がする。(歯科)
- 免除された患者さんをほとんどみないから、効果はあったのか疑問。(歯科)
- 消費税引き上げに連なる気がする。(歯科)
- 今後、起こりうる自然災害の前例となってしまうため、若い世代の負担が心配です。(歯科)
- 被災者だけが社会的弱者ではないですから。(医科・肝胆膵外科、胃腸外科)
- 個々の被災の程度が違うため。(歯科)
- 価格弾力性にもう翻弄されたくない。保険診療分の来患数、診療報酬いずれも前年同月比微減で、免除措置の効果が実感できなくなっている。まだ必要な方々は多いのかもしれないが……(歯科)
設問6、医療費免除措置についてご意見やご要望をお聞かせください。
- 格差拡大の世情です。被災者だけの免除措置では済みません。医療費無料の理想を追求すべきでしょう。現実的には、法人や富裕(有)層の増税でしょう。(医科・精神科)
- 国保の患者が対象となり、社保の患者が除外されている事に不公平感を感じます。(医科・内科)
- あまりに長く仕事をしない時期が続いたため、仕事をしない生活もいいと思っている人も多く、現金がないから生活できないという人はあまりいないと思います。仕事が出来ないか、職に就いても収入が少なく生活できない人だけ公的な措置で対応すべきと思います。(医科・内科)
- 財源、免除の範囲、期間と簡単ではないが、本当に免除が必要な人への支援は必要です。(医科・内科)
- 防波堤の予算の一部で免除継続できる。(医科・泌尿器科)
- 仮設住宅居住者はすべて免除とすべき(仮設での生活が解消されるまで)。(医科・泌尿器科)
- 岩手県は医療費免除、宮城県は免除しないとなると、不公平感が出て、問題になるので足並みを揃えた方がよい。(医科・内科)
- 本当に免除が必要な方も多いので、継続は必要と思うのが適当な方も多い。(医科・皮膚科)
- 岩手県では被災者医療費一部負担金免除を継続する意思表明をしました。被災者が一番多い宮城県も継続していかなければ、受診を控える方々が増えてしまうという危機感を感じてしまいます。医療機関が一丸となって県に対し、免除継続を訴えていくべきだと思います。(医科・内科)
- 確定申告書類など収支がわかるものを参考にし、免除措置を行うべきである。(歯科)
- 当院では数名しかいらっしゃらないが、地域によってはまだ多数いらっしゃることから、免除措置の再開で、病気を放置する方は減るのではないでしょうか。(歯科)
- 免除措置中止になった以降の患者さんは3割負担、2割負担に対し、高いなあという印象を与えるのではないか。措置あって得したという方もいるので、高齢者、福島県以外の方、仮設住人などを除き、その他の方々はもう不要なのではないか。無料に慣れる人間心理。(歯科)
- 本当に必要な方とそうでない方がいるような気がします。(歯科)
- 最初の免除措置は適用範囲が広すぎ、今年4月からのは狭すぎ、仮設住宅に居住する方の不満はそこにもあるのでは?(歯科)
- 政府の無駄な支出を削減し、医療費免除を継続してほしい。(歯科)
- 気軽に診療を受けやすい環境にしてほしい(医者離れがないように)(歯科)
会員アンケートの結果について
政策部長 井上博之
現在実施中の被災者医療費窓口負担免除の対象者は、全県民の内5%程度だと推定される。沿岸部ではかなりの免除対象者がいるが、その他の地域では免除証明書を持参する患者はほとんどいなくなっているようだ。
今回のアンケートへの回答は、実際に免除対象者の受診があった医療機関からのものが多かった。免除継続についての意見内容を分析すると、賛成が圧倒的多数であったが、「きりがないので、もう終了としても良いと思う」「ごく一部でも負担があった方が良い」との意見もあった。
「無料制度が長く続くと不正受診が増える」といった逆宣伝をする人がいるため、不適切受診の有無を尋ねた。「あり」は2件だけで、不正とは言えない内容だった。