「医療・社会保障の充実へ尽力を」第47回衆議院議員総選挙の当選者に対し要請


第47回衆議院議員選挙で当選した宮城県選出の国会議員に対し、協会は1月27日付けで以下の要請書を協会重点要求とあわせて提出しました。

2015年1月27日
宮城県保険医協会
理事長 北村龍男

医療・社会保障充実のためにご尽力ください

 先の総選挙で当選し、国政の重責を担ってのご尽力に敬意を表します。
 私ども宮城県保険医協会は、県内の開業および勤務の医科・歯科保険医約1630人の団体です。全国の保険医協会・保険医会には10万4000人を超える医師・歯科医師が会員となっています。
 さっそくですが、次期通常国会では、「医療保険制度『改革』」法案が提出されようとしています。
 医療、社会保障制度の充実は国民生活の「安心」の土台です。議員におかれましては、社会保障費・医療費抑制政策の継続ではなく、国民・患者の立場に立って、医療、社会保障費の総額引き上げのためにご尽力いただきたいと思います。
 つきましては、下記の項目について要請するものです。

要請項目

一、新たな患者・国民負担増の計画は中止してください

・入院時の食事代の自己負担引き上げをやめてください
 入院時の食事代の自己負担を1食260円から460円に引き上げることが計画されています。引き上げられれば、1カ月入院すると現行の2万3400円から4万1400円となり、1万8000円もの負担増になります。しかも高額療養費制度の対象になりません。入院時の食事は「治療の一環」です。これ以上自己負担を引き上げれば、必要な入院治療を受けられない事態が広がりかねません。

 ・紹介状なしで大病院を受診する場合の定額自己負担をやめてください
 紹介状なしで大病院を受診する際の定額自己負担(5000円以上)が検討されています。追加の自己負担の導入は、「将来にわたり7割給付を維持する」とした健康保険法の規定(附則2条)に抵触しかねません。

・高齢者への大幅な負担増となる後期高齢者の保険料軽減特例を廃止しないでください
 後期高齢者医療制度で、所得の低い人などへの保険料軽減措置を段階的に廃止することが計画されています。軽減措置廃止によって負担増となる高齢者は約865万人と加入者の半数以上にのぼり、保険料負担が3倍になる世帯も生まれます。所得の低い高齢者の生活をさらに困難に追い込む保険料軽減措置の廃止は止めるようご尽力ください。

一、「患者申出療養(仮称)」の創設はやめ、必要な医療は公的保険で保障してください

 保険外併用療養費制度の「評価療養」「選定療養」と並ぶ3つめの新しい仕組みとして、「患者申出療養」の創設が計画されています。実施できる医療機関は臨床研究中核病院のほか、基準を満たせば原則として、全国の病院や診療所でも申請を行うことができます。これまで平均6~7カ月かかっていた審査期間を原則2週間又は6週間に大幅に短縮するとしています。
 このような新たな枠組みが実施されるならば、①安全性、有効性の担保されない行為が、保険診療と併用され、想定外の薬害や医療事故が起きる危険性がある、②新たな治療技術や医薬品が保険給付の対象外に留め置かれる恐れがある、③本来は全額自己負担の自由診療に公的医療費が使われることになり、高額な自由診療を利用できる一部の人のために、多くの患者・国民が支払っている保険料や税金が充当される、④患者の自己責任のもとで対象となる疾病の種類や治療法に制限はなく、限りなくどこの医療機関でも実施できるということは、混合診療の大幅拡大であり、国民皆保険制度が形骸化される恐れがある、ことなどを懸念しています。安全性、有効性の確認されたものは速やかに保険適用することを求めます。

一、医療費抑制や保険料の引き上げ等につながる国保の都道府県単位化は行わないでください

 政府は、2015年の通常国会に、現在市町村で行っている国民健康保険(国保)の運営を都道府県に移行する法案を提出しようとしています。
 都道府県単位化の議論の中で、「保険料の算定・賦課」については「分賦金方式」が検討されています。市町村は100%上納するために、滞納世帯への保険料の機械的な取立てや、保険料の引き上げなどが迫られます。
 また、将来的に都道府県全体で保険料の平準化が行われれば、保険料を高い自治体に合わせることになり、さらに保険料が高騰することも懸念されます。
 都道府県は国保財政と給付・医療提供体制の両方に管理・運営責任を持つことになります。国庫負担が減る中、都道府県は、病床数を減らすなどして給付を抑制するか、保険料を上げるかの厳しい選択が迫られます。
 赤字の保険者が存在する、保険料が高いなど国保財政が不安定なのは、保険者の規模だけによるものではなく、非正規雇用の増加など、貧困と格差の広がりによる矛盾が国保に集中しているからです。構造的課題が解決されなければ、都道府県単位化しても問題は解消されません。
 また、国保の保険料が上がり続けている原因は、国庫負担が引き下げられてきたことにあります。国保の建て直しのためには、国の財政負担を増やし、住民に身近な市町村が制度運営を担うべきです。

一、国の責任で東日本大震災被災者の医療費一部負担免除を継続してください

 東日本大震災被災者の医療費一部負担金免除について、宮城県では昨年4月から国保と後期高齢者医療保険に加入する一部の方の免除が再開されました。しかし対象者が全県民の5%程度に絞り込まれたことで、被災者間に新たな格差が生まれています。当会が仮設住宅居住者を対象に行った調査では、免除の継続や拡充を求める声のほか住民税が非課税世帯であるという免除対象の条件について「免除されていること=非課税世帯であると周りに知られ、恥ずかしい」という声も多く寄せられました。被災者間の格差は許されません。加入する医療保険の種類にかかわらず、生活再建に至らないすべての被災者の免除を復活するよう、国の制度として必要な財政支援をするようご尽力ください。

一、東北地方への医学部新設について、必要な予算措置をおこなうよう求めてください

 政府は一昨年12月、「好循環のための経済政策」を決定し、その中に医学部新設を盛り込みました。その後、東北薬科大の構想が選定され2016年の開学に向け準備が進められておりますが、奨学資金貸与の縮小や入学定員に計画していた「復興支援特別枠」の取りやめなどが報道されています。基本方針である震災復興、医師不足解消、原発事故からの再生を実現する医学部新設ならば、国の財政支援が必要です。大学任せにするのではなく、国による積極的な対応を求めます。

以上

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