談話「公的医療保険制度を崩壊させる医療保険制度改革関連法 参議院では徹底した審議を求める」理事長 北村龍男


 政府・与党は4月26日の衆議院本会議で医療保険制度改革関連法案(以下、法案)を強行採決した。すでに参議院での審議が開始されている。法案は国民健康保険法、健康保険法、高齢者医療確保法などの改正を一括して提案、審議された。14日に衆議院本会議で趣旨説明され、17日から委員会で審議が開始されたばかりで、全国民の命と健康に関わる法案にもかかわらず十分な審議がされていない。
 国保料の滞納者が360万世帯ある。民医連調査によると、無保険のため受診が遅れ多くの死亡者がでている。現在医療保険に求められのは、受診抑制を防ぎ、皆保険制度を守るため、速やかに被保険者が払える国保料とすることである。今回の改革で国保料は払えるようになるだろうか。
 国は国保財政の安定化に計3400億円を投じ、一人当たり約1万円の財政効果、すなわち国保料減額の効果があるとしている。だが実際には、被保険者の負担が減るわけでない。これまで市町村は一般会計からの繰り入れによって、国保料の上昇を抑えてきた。現在市町村が行っている一般会計からの繰り入れは3500億円にのぼる。それにも関わらず多くの滞納世帯がいる。ところが法案では、市町村の繰り入れを禁止し、繰り入れれば支援金の減額というペナルティが課される。国は自治体の判断としているが、市町村は一般会計から繰り込めず、被保険者に請求することになる。市町村は補てんされても、被保険者の国保料は上がることになる。
 国保財政の安定化に加え、国は国保を都道府県化することで、都道府県が市町村から国保事業費納付金を徴収し、市町村に国保給付費交付金を交付する仕組みをつくろうとしている。都道府県は100%の収納を前提に納付金を求める。しかし、現在の国保の収納率は90%といわれ、これは国保料が高額なためである。市町村は収納できない分も保険料に上乗せする。徴収できなければ差し押さえなどの強制的な収納をこれまで以上に厳しく行うことになる。また、都道府県には医療費適正化計画や病床削減の「地域医療計画」をリンクさせて、給付費抑制も求めている。
 改革は、後期高齢者の特例制度を段階的に廃止し保険料の負担増を求めている。865万人に影響がある。後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入によって、健保組合、共済組合の保険料も増額する。
 保険料だけでなく、入院食事費は1食260円から460円に増額され、紹介状なしで大病院を受診する場合の定額負担などで、患者負担は増加し受診抑制も起こる。安全性、有効性の未確立な医療を患者の責任で受けられるようにする「患者申出療養制度」の創設は、実質的な混合診療の導入といえる。
 安心して医療が受けられる医療保険制度のためには、国が責任を持つことが不可欠である。特に国保では、減額され続けてきた国費からの繰り入れを早急に戻すことが欠かせない。
 参議院では十分な審議時間を確保し、国民に法案の真の姿を明らかにしてほしい。国民に必要な医療を提供できない法案であれば、廃案とすべきである。

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