保団連受診実態調査2015結果について
1、調査の目的
治療の中断、投薬拒否等、医療現場で起きている患者の受診実態を明らかにする
2、施設類型
医科は、診療所が81.6%と最も多く、次いで有床診療所9.7%、病院6.9%。歯科は、診療所が96.3%と多くを占め、病院が1.5%であった。
3、調査結果の概要
(1)「2-1 この半年間に、主に患者の経済的理由と思われる、治療を中断する事例がありましたか?」
医科では34.7%が「あった」と回答し、「なかった」32.3%、「わからない」は31.8%であった。それに対し歯科では「あった」が51.3%、「わからない」が28.2%、「なかった」19.7%という順であった。
(2)「2-2 治療中断事例の患者の病名は?」
医科では「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」の順に多く、歯科では「歯冠修復」が最も多く、「う蝕」と「歯周病」が同程度の割合であった。
(3)「3-1 この半年間に、医療費負担を理由に検査や治療を断られたことがありましたか?」
医科は34.7%、歯科は32.3%が検査・治療・投薬拒否が「あった」と回答した。対して宮城県分の集計では医科で40.0%、歯科では55.3%という結果であった。
(4)「4-1 この半年間に次のような事例がありましたか?」
医科では「受診回数を減らしてほしい」「薬代の負担を減らしてほしい」「薬が切れているはずなのに受診に来ない」の割合が高かった。歯科では「自己負担額について質問されることが増えた」「痛みがとれたら受診に来ない」「保険のきく範囲で治療してほしいといわれた」の割合が高かった。宮城県分の集計も同様の傾向を示している。
(5)「4-2 その他、患者の受診状況について、気になった事例などを具体的にご記入ください」
医科
・高額の薬を低額にかえるよう希望が増えた
・内服2回1日を1回1日にしていた。2種類1日の薬を交互に1種類1日にして、1カ月分を2カ月で飲んだ。インスリンを減量して使っていた
・高齢者で湿布や風邪薬など多く欲しがる人や来院のための交通手段がなく、来れなくなる人がいる。若年層(20代)で、支払いが困難で来なくなる人がいる
・窓口負担が払えなかったり薬代を貸す事例が増えた
歯科
・生活保護世帯の小児のう触罹患歯が多い症例の中断が見受けられる
・経済的理由で治療中断する患者が多い
・悪い部分のみの治療を希望する患者が増えた
・若い人で、医療費が払えないために治療できない人が増えた
・給料日にしか来院できない患者がいる
(6)「5-1 この半年間に、患者一部負担金の未収金がありましたか?」
医科・歯科ともに4割以上の医療機関で未収金が「あった」と回答している。
(7)「5-2 未収金の処理や対応は?」
全額回収できた医療機関は24.0%にとどまり、43.4%が「一部支払われたが、未収金が残った」、29.7%が「後日支払う約束だったが、その連絡がなかった」、15.9%が「催促したが、まったく回収できなかった」となっている。
(8)「6-1 今後検討されている75歳以上の患者窓口負担の2割への引き上げについて、患者の受診に影響があると思いますか?」
全国集計、東北6協会集計ともに7割の医師・歯科医師が2割化について「受診抑制につながる」と回答している。
(9)「6-2 75歳以上の患者の窓口負担の2割への引き上げについて、ご意見がありましたらご記入ください」
反対意見が多数を占める一方で、「2割は仕方ないかもしれないが、これ以上は上げないでほしい」「今現在の75歳以上に関しては影響はないと思われるが、今後繰り上がる年齢層に関しては厳しくなるように思う」などの意見もあった。