ALPS処理水の海洋放出に関する公開質問状および回答


 みやぎ反核医師・歯科医師の会は、7月21日、ALPS処理水の海洋放出に関し、経済産業省資源エネルギー庁および東京電力(本社)に対し下記の公開質問状を送付しました。
 資源エネルギー庁からは、「質問状が届いたことおよびその内容については確認しているが、貴会に限らず、こうした質問の書状に対し、当庁として書面での回答はしておらず、廃炉・汚染水・処理水対策ポータルサイトにおいて適時更新し、Q&Aや解説という形で掲載することにしており、当該サイトを参照いただきたい」との回答がありました。
 東京電力からは9月30日付で下記のおとり書面の回答が寄せられましたので公開致します。

公開質問状

 本年4月13日、政府は東京電力福島第一原発事故に伴う放射能汚染水のALPS処理水を海洋放出する方針を決定し、2年後をめどに準備を進めると発表しました。これに関し、経済産業省資源エネルギー庁原子力発電所事故収束対応室ホームページにALPS処理水について「今後は、トリチウム以外の核種について環境放出の際の規制基準を満たす水のみをALPS処理水と呼称することとします」「タンクに貯蔵されている水の約7割には、トリチウム以外にも規制基準値以上の放射性物質が残っています」とあります。また貴社ホームページに「ALPS処理水に炭素14が含
まれている」とあります。この件について、以下のとおり質問しますので、文書にてご回答のほどお願い致します(回答期限9月末日)。いだだきました回答は原文のまま当会ホームページでの公開を予定しています。よろしくお取り計らいのほどお願い申し上げます。

質問事項
1、 ALPS処理水に含まれるトリチウム以外の核種は何でしょうか。把握している範囲のすべての核種名を回答ください。
2、それら核種それぞれの環境放出の際の規制基準を回答ください。
3、ALPS処理水に炭素14が含まれていることを東京電力として認めていますが、そのまま海洋に放出されるのか、除去した上で放出するのか回答ください。
4、トリチウム以外の核種が含まれるALPS処理水を再処理するとしていますが、それぞれの核種の規制基準以下であれば放出するのか、検出限界レベルに到達した場合のみ放出するのか回答ください。
5、他の原発での海洋排水においてもトリチウム以外の核種がたとえ環境放出基準以下であっても含まれているのか、含まれていないのか回答ください。

【東京電力の回答】

Q1. ALPS処理水に含まれるトリチウム以外の核種は何でしょうか。把握している範囲のすべての核種名を回答ください。
A1.
〇 多核種除去設備の運用にあたり、「放射性物質等による敷地境界での追加的な実効線量年間1ミリシーベルト未満」を維持するため、線量の高い汚染水を可能な限り速やかに処理する方針で運用しておりました。そのため、多核種除去設備等処理水の中には、トリチウム以外の核種について、環境へ放出する際の規制基準を超えるものが約7割含まれております。
〇この中でこれまでにトリチウム以外に規制基準を超えて確認されている核種は、7核種(セシウム137、セシウム134、ストロンチウム90、イットリウム90、アンチモン125、ルテニウム106、ヨウ素129)となります。
〇今後、環境へ放出する際には、この約7割の処理水は二次処理を確実に実施し、トリチウム以外の放射性物質について告示濃度限度比の総和を1未満とする方針です。
〇また、昨年実施した二次処理試験において、これらの核種が規制基準値以下になることを確認しています。
〇多核種除去設備除去対象の62核種、炭素14並びにトリチウムのうち、2次処理性能確認試験で検出された、すなわちND以外の核種はトリチウムも含め13核種となります。
〇また、参考ではありますが、告示濃度比1以上の核種はトリチウム以外にはなく、トリチウムを除く告示濃度比総和は12核種で0.15になります。

※内訳は以下の通りとなります。
核種;二次処理後の分析結果(ベクレル/リットル)/告示濃度比
①ストロンチウム90;0.0357/0.0012
②イットリウム90;0.0357/0.00012
③ルテニウム106;1.43/0.014
④ロジウム106;1.43/0.0000048
⑤アンチモン125;0.226/0.00028
⑥テルル125m;0.226/0.00025
⑦ヨウ素129;1.16/0.13
⑧セシウム135;0.00000118/0.0000000020
⑨セシウム137;0.185/0.0021
⑩バリウム137m;0.185/0.00000023
⑪コバルト60;0.333/0.0017
⑫炭素14;17.6/0.0088
⑬トリチウム3;822,000/13.7

Q2.それら核種それぞれの環境放出の際の規制基準を回答ください。
A2.前述で示した核種の告示濃度限度は下記の通りとなります。
セシウム137:90Bq/L
セシウム135:600Bq/
セシウム134:60Bq/L
ストロンチウム90:30Bq/L
イットリウム90:300Bq/L
アンチモン125:800Bq/L
ルテニウム106:100Bq/L
ヨウ素129:9Bq/L
ロジウム106:300,000 Bq/L
テルル125m:900 Bq/L
バリウム137m:800,000 Bq/L
コバルト60:200 Bq/L
炭素14:2,000 Bq/L
トリチウム3:60,000 Bq/L

Q3.ALPS処理水に炭素14が含まれていることを東京電力として認めていますが、そのまま海洋に放出されるのか、除去した上で放出するのか回答ください。
A3.〇トリチウムを除く核種(炭素14も含む)の告示濃度比総和が1以上の水については、告示濃度比総和が1未満となるよう処理を行います。

Q4.トリチウム以外の核種が含まれるALPS処理水を再処理するとしていますが、それぞれの核種の規制基準以下であれば放出するのか、検出限界レベルに到達した場合のみ放出するのか回答ください。
A4.
〇希釈する前の測定・確認用設備において、トリチウムを除く核種(炭素14も含む)の告示濃度比総和が1を確実に下回っていることを確認した上で放出します。
〇そのため、これらの核種は全て規制基準である告示濃度限度を下回ることとなります。

Q5.他の原発での海洋排水においてもトリチウム以外の核種がたとえ環境放出基準以下であっても含まれているのか、含まれていないのか回答ください。
A5.
〇通常の原子力発電所で海洋に排水している水は、主として機器の点検等のために使用した水や廃液を、蒸発(蒸留)や濾過、脱塩といった処理をした水のうち、発電所内で運転のために再利用する分を超え余剰となった水ですが、この水には、トリチウム以外に、微量の腐食生成物(コバルト58、コバルト60、マンガン54 等)が含まれています。

 当社は、原子力事故の当事者として、事業運営への信頼回復に努めるとともに、「復興と廃炉の両立」の大原則のもと、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水・処理水対策を、安全確保を最優先に一つひとつ着実に進めるとともに、処理水に関する正確な情報を、社会のみなさまへ迅速かつ透明性高くお届けする取組を徹底してまいります。

以 上
2021年9月30日
東京電力ホールディングス株式会社

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