シリーズ「女川原発廃炉への道」
仙台市の東北電力株主権を正しく行使させよう
内科・仙台市 水戸部 秀利
女川原発2号機再稼働は規制委員会の審査を通過し、周辺自治体や県の議論に移った。しかし東北に電力不足はなく、3.11以降の省エネ努力と再エネ増加、少子高齢化で電力需要は減少し、さらにコロナ禍でエネルギー浪費文化の転換期に入った。地震で傷ついた原発の安全対策費増加で、その経済性も論拠を失った。今回の再稼働の2年先延ばしは、苦悩を長引かせるだけである。私たちは東北電力に引導を渡す必要がある。
私は、篠原弘典氏と一緒に「脱原発仙台市民会議」の共同代表になっている。この市民会議は仙台市民の安全を守るために、仙台市として再稼働に反対の立場に立つことを求めて活動している。特に、東北電力の大株主(約520万株保有)として、株主総会でその立場を明確にすることを求めてきた。
共同代表の篠原氏は「脱原発東北電力株主の会」代表も兼ね、毎年株主総会に再稼働の中止を求める動議を提案している。今年も6月25日に株主総会が開催され、篠原氏らの株主の会は6案件を提案したが、残念ながら否決された。自治体別でみると、美里町は賛成したが仙台市は前年同様反対の態度をとった。棄権(福島県)や白紙(山形県)という意思表示をした自治体もある。
仙台市は、原発事故時の東松島市などUPZ自治体住民の避難受け入れ先になっているが、女川原発から仙台平野まで50㎞、途中平坦な海原で遮るものはなく、風向き次第では仙台市民も避難が必要になり、決して安全圏ではない。
市民と野党の共闘で3年前誕生した郡市政だが、原発政策については奥山市政からの前進は見られない。この間、私たちは市財務担当部局と交渉を重ねてきたが、突き詰めていくと「原発などのエネルギー政策は国が判断すべき事案」という答弁に行きついてしまう。国の政策が住民の安全を脅かす場合、それに異議を唱えることは地方自治の基本である。
来年は、宮城県も仙台市も首長選挙がある。首長を原発ノーの立場に変えることが、廃炉への重要なステップとなる。
本稿は宮城保険医新聞2020年10月5日(1730)号に掲載しました。