5月11日に衆議院で採決された「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」に関して、以下の声明を決定しました。
2021年5月14日
宮城県保険医協会
理事長 井上博之
【声明】
「75歳以上の医療費窓口負担2割化」などを内容とする
健康保険法等の一部改正案の採決強行に抗議する
5月11日、衆議院本会議において「75歳以上の医療費窓口負担2割化」などを内容とする健康保険法等の一部改正案が、自民・公明・維新・国民民主の賛成により可決した。立憲民主党と共産党は反対した。この間、当会も取り組んだ「2割化反対」を求める国会請願署名は100万筆を超え、コロナ感染症が依然猛威を奮い、日々の暮らしや健康への不安が高まっているにもかかわらず、政府・与党が高齢者の必要な受診の機会を奪う法案の採決を強行したことに厳しく抗議し、参議院では徹底審議の上、廃案を求める。
政府の説明によれば「2割化」の狙いは、75歳以上の高齢者の受診を抑制することにあることは明らかで、その効果を900億円と見積もっている。
このことをめぐっては、衆議院厚生労働委員会での質疑の中で、野党から「高齢者が必要な医療を受けられなくなるのではないか」、「受診抑制によって健康への悪影響が生じないか」ということが再三にわたり問われた。しかし、今に至るまで政府から納得のできる答弁はなく、こうした問題があらかじめ検証された形跡もうかがえない。また75歳以上の高齢者のうち、2割負担の対象となる範囲(年収基準)は法改正を要せずに、今後拡大することができる制度設計になっていることも問題である。
参考人質疑では、年金や介護の制度改悪が行われる中で、多くの高齢者とその生活を支える現役世代の不安と懸念の声が紹介され、「患者、国民の生活実態を踏まえた議論をすべき」との指摘もあった。「応能負担」を窓口負担に適用することや、所得再分配の在り方からして医療保険財源を高齢者の負担増で賄うことの問題性も指摘された。
このまま政府の「2割化」が導入されれば「医療費抑制のためには、いのち・健康に影響が及んでもやむを得ない」というに等しいうえ、今後の医療のあり方にも重大な禍根を残すことは明らかである。
今、政府・国会が全力を上げねばならないのは、国民の生活、生業の保障であり、病床や検査体制の確保、速やかなワクチン接種など医療提供体制を立て直すことである。
秋までに必ず総選挙がおこなわれる。当会は、あらためて「2割化」導入に反対するとともに、選挙において国民の命と暮らしを守る政治へ転換させるべく、地域の患者・住民とともに取り組みを進めていくことを表明する。