投稿「新型コロナウイルス感染症 ワクチン接種、国の責任」


ワクチン接種、国の責任

北村神経内科クリニック 北村 龍男

接種目標数について
 新型コロナウイルス感染症の拡大を食い止めるために、新型コロナウイルスワクチン(以下、ワクチン)は重要な役割を果たす。ワクチンが効果を発揮しているイスラエルでは100人当たり121.11回実施され、少なくとも1回接種した人は62.55%、完了したのは58.56%、イギリスでは同じく74.11回、51.26%、23.4%である。(NHK,Our World Dataより 5月6日更新)
 ワクチンは、感染拡大に有効である。これらのデータを参考に、早急に当面人口の半数に接種することを目標にすること。尚、イギリスの感染者減少には、長い時間を掛けた慎重なロックダウン解除も関わっている。
 国は5月7日に「1日100万回接種し、7月末を念頭に希望する全ての高齢者に2回の接種を終わらせる」としている。高齢者は3600万人である。予約の段階でトラブルが続いている。予約出来た人だけが希望者ではない。予約できない人、移動が困難な人を含め丁寧な取り組みで全ての対象の人々に接種の機会を作ることが必要である。また、訪問診療患者にファイザーワクチンを接種するのは、このワクチンは配送、温度管理が特殊で困難を伴う。はっきりした対策を作るべきである。これまでのインフルエンザワクチンでは、1日最大60万回実施されていると報道されているが、コロナワクチンは接種は条件が厳しい、接種を担当する医療機関、医療従事者の負担は一層大きくなる。政府が掲げている1日100万回接種の目標の可能性に根拠はあるのか。
 この1日100万回可能を根拠に政府は市町村に7月末の完了を求めた。市町村の1741のうち1490、86%が7月完了可能と回答したと発表されている。国は市町村の具体的な医療人材の確保など準備状況を確認しているのか。
 東京・大阪などの大規模接種は1日1万回接種としているが、それを担う自衛隊は接種回数の明言を避けている。

情報の透明化について
 ワクチン接種の混乱の原因は、国が情報を透明化せず、情報を小出しに発表し、実施を市町村に丸投げしているためである。国の責任ある計画決定を求める。
 高齢者には7月末までに接種を終了するなどと言いながら、国はファイザーとの契約を盾に入荷予定を明らかにしてこなかった。このことが、現場を混乱させ、国民に不安を与えている。
(尚、5月3日にEUはコロナウイルスワクチンの約1億7800回分の輸出を承認し、そのうち日本向けは7200万回分とEU報道官の記者会見で発表されたと報道された)

接種のすすめ方、スケジュールについて
 ワクチン接種の長期化は必至だ。高齢者の接種は開始されたが、基礎疾患のある人を含め一般の人への対象は、今後の課題となる。
 接種の進め方について、市町村任せにせず、基本的なスケジュールを示し、困難なところには、国が直接手を差し伸べるべきである。
 ワクチン配布は市町村の希望を聞いて配布するのではなく、全国的に基本となる優先順位を決め、対応が困難な市町村には、国が援助の手を差し伸べるべきであろう。
 現状は、国はかけ声をかけるが、方針を示せず、具体的スケジュールを示せない状態である。

ワクチンのの有害事象、副反応について
 副作用発生時のマニュアル、発生時、特にアナフィラキシーショックに対応出来る体制を整える。アドレナリン製剤準備等の医薬品・機材の準備の基本を国が示すこと。医療機関にもワクチン接種の不安がある。問題が起こったときに医療機関・医療従事者の責任が問われないような配慮を国は行うべきである。
 接種する国民の不安を取り除くためには、効果だけでなく、予想される有害事象・副反応について知らせることが必要で、そのことは有害事象・副反応が起こったときの早期の対応にも役立つ。接種直後の有害事象、副反応に関し以下の情報が役立つであろう。
 ・有害事象、副反応の起こりやすい人の特徴を示し、接種者の気づきを促す。
 ・アナフィラキシーについては、起こりやすい人の特徴、はじめの症状を周知する
 ・血栓症についても、起こしやすい人の特徴、はじめの症状を周知する。
 mRNAワクチンの長期の副作用については明らかになっていない。この点も情報として開示すること。
 国の責任をもった補償なしには、ワクチン接種の普及は出来ない。

ワクチン接種を希望しない人について
 他のワクチンと比較しても、このワクチンには未だ明らかになっていないことが多い。当然、これまでのワクチンよりも接種に不安を感じ、接種を望まない人は多くなる可能性がある。また、接種を希望しない人にはそれぞれ理由がある。副反応の経験、持病との関係など。専門家の中にはフレイルの人には接種を避けるべきとしている人も居る。
 国はこれらの人々の責任を問うてはならない。

2021/05/15

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