投稿「HPVワクチンの勧奨再開に関して 保団連に期待すること」


HPVワクチンの勧奨再開に関して
保団連に期待すること

保団連地域医療対策部員、宮城協会顧問  北村 龍男

 保団連では、「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関する要望」(資料①)を2021年10月11日、厚生労働大臣に提出した。要請書の発表を受けて、宮城県保険医協会理事会では多くの反対の声が挙がった。また、他協会の理事の先生から、勧奨再開反対の観点から個人的に意見交換を求められた。東京協会の会員からも意見が出ている。保団連地域医療対策部会は、これらの意見を踏まえ、11月20日に「HPVワクチンに関する要望書案(12月理事会提案)」(資料②)を確認した。一方、厚労省は11月26日に、「ヒトパピローマウイルス感染症に係わる定期接種の今後の対応について」(資料③)を発出し、市町村長に個別勧奨を行うことを求めた。
 資料②は、12月5日の保団連理事会決定を経て12月6日に厚労省に提出した。要望内容は地域医療対策部や各協会での意見を一定程度踏まえたものである。積極的勧奨の再開だけでなく、子宮頚がんから命と健康を守る取り組みの強化を求めている。評価出来る内容も含んでいる。しかし、厚労省の文書(資料③)は、ワクチンの副作用で苦しんでる被害者への配慮や、医師・歯科医師の提案についての言及はない。この間の混乱は何だったのか?

 2009年10月厚労省がHPVワクチンを承認。2013年4月定期接種化。2013年6月厚労省専門部会が接種の積極的勧奨中止を決定。
 十分な情報提供がないまま定期的接種になったことについては、製薬メーカーの活動が目に余った。
 厚労省の専門部会は「ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な痛みの発生がより明らかになり、国民に適切な情報提供が出来るまでの間、接種を積極的に勧奨すべきでない」として積極的勧奨を中止した。
 厚労省の素早い反応の後ろには、HPV感染症は性交渉が原因とされていることから「性の乱れを促進させかねない」との理由で自民党内、特に日本会議関係者から強い反対があったのが影響したと報道されている。

 今回の再開にあたっては、有効データが蓄積されたためとされている。しかし、ネット上で「HPVワクチン 安倍晋三」を検索してみると、情報誌選択2017年5月号「子宮頸がんワクチン問題のネック 被害者団体を応援する昭恵氏」、毎日新聞2018/6/15「HPVワクチン 再開は『政治案件』 厚労省幹部『首相も後ろ向き』」、情報誌選択2019年4月号「子宮頸がんワクチンの最大障害壁首相夫人が反対派から『宗旨変え』」の記事が見られる。更に、再開に根強く反対していた複数の自民党議員が引退し、安倍首相も退陣した、自民党議員連盟が再開を求める意見書をまとめた。HPVワクチンの定期化、勧奨中止、勧奨再開には安倍政権や日本会議が強く影響していることをうかがわせる

 これらの状況は、①私たちの前に提示されるデータの信頼性に疑問を持たせる。②賛成派、反対派の医師・歯科医師が互いにリスペクトして意見交換する状況になることを困難にしている。医療に関する問題、特にワクチンは全ての国民に透明化された情報が必要である。しかし、HPVワクチンをめぐる経過は不透明で、何がこの様な混乱をもたらしたか明らかになっていない。保団連にはこの点で力を発揮することを求める。そのことは、今後のワクチン行政にも役立つし、医師・歯科医師の意見交換にも役立つと考える。

追)千葉協会は”VPDはワクチンで防ぐ運動”に熱心に取り組んできた。しかし、HPVワクチン接種勧奨に疑問を持つ会員の先生もいる。千葉協会も協力して、HPVワクチン問題の連続講演会をこれまで2回開催している。今後も継続して講演会を行い会内で理解を深めてゆくとしている。保団連でもこの様な活動を広める必要がある。

以上、2021/12/5

    

追)資料②は、12月5日の保団連理事会で討議され、理事会では接種後の健康被害等について検討いただきたいとの意見を反映させて、厚労大臣に提出された。(2021/12/10に追加)

資料①「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関する要望」
資料②「HPVワクチンに関する要望書案(12月理事会提案)」
資料③「ヒトパピローマウイルス感染症に係わる定期接種の今後の対応について」

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