核兵器禁止条約 第1回締約国会議 ウィーン宣言(全文)


「核兵器のない世界への私たちの誓約」
 1 私たち、核兵器禁止条約の締約国は、条約の発効を記念し、核兵器の完全な廃絶を実現するという私たちの決意を再確認し、条約の完全かつ効果的な実施のために私たちの進むべき道を示すために、第1回締約国会議に結集した。私たちは、署名国やオブザーバー国、その他のオブザーバー、市民社会の代表、核兵器の使用や核実験の生存者の幅広い参加を歓迎する。

 2 私たちは、2021年1月22日に条約が発効したことを祝する。核兵器は、生物・化学兵器が長らくそうであったのと同様に、いまや国際法によって明示的かつ包括的に禁止された。私たちは、条約が大量破壊兵器に対する国際的な法体系の空白を埋めていることを歓迎し、すべての国家が国際人道法を含む適用可能な国際法を常に順守する必要性を再確認する。

 3 私たちは、この条約の創設を鼓舞し動機づけた、そしていまもこの条約の実施を推進し導いている以下の道徳的・倫理的要請を再確認する。

 ―法的拘束力のある核兵器禁止の確立は、核兵器のない世界の達成および維持にとって、したがって国際連合憲章の目的および原則の実現にとって必要とされる不可逆的で検証可能かつ透明性のある核兵器の廃絶に向けた基本的措置である。

 ―核兵器がもたらす壊滅的な人道的影響は、適切に対処することができず、国境を越え、人間の生存と幸福に重大な影響を与え、生存権の尊重と相いれないものである。核兵器は、破壊、死、強制移住をもたらすだけでなく、環境、社会経済的持続可能な開発、世界経済、食糧安全保障、女性や少女に与える不釣り合いに大きな影響に関するものを含め現在および将来の世代の健康に、長期にわたる深刻な損害を与える。

 ―すべての国は、国際法および2国間協定に基づくそれぞれの義務に従って、核軍縮を達成し、あらゆる面で核兵器の拡散を防止し、核兵器の使用または使用の脅威を防止し、核武装国の過去の使用および実験によって生じた被害者を支援し、被害を救済し、環境被害を修復する責任を共有している。

 ―事故、誤算、故意による核兵器の爆発リスクは全人類の安全保障に関わり、核兵器のない世界の実現と維持は、国家的および集団的安全保障上の利益に資する。

 ―核兵器の存在が全人類にもたらすリスクは非常に深刻であり、核兵器のない世界を実現するために直ちに行動を起こすことが必要である。これが、いかなる状況下でも核兵器が再び使用されないことを保証する唯一の方法である。私たちには待っている余裕はない。

 4 私たちは、核兵器使用の威嚇と、ますます激しくなる核のレトリックに恐怖を抱き、かつそれにがくぜんとしている。私たちは、核兵器のいかなる使用または使用の威嚇も、国際連合憲章を含む国際法の違反であることを強調する。私たちは、明示的であろうと暗示的であろうと、またいかなる状況下であろうと、あらゆる核の威嚇を明確に非難する。

 5 核兵器は、平和と安全を守るどころか、強制や威嚇、緊張の高まりにつながる政策の道具として使われている。これは、核兵器が実際に使用されるという脅威、すなわち無数の生命、社会、国家を破壊し、地球規模の破滅的な結果をもたらす危険性に基づいている核抑止論の誤りを、これまで以上に浮き彫りにしている。私たちは、核兵器が完全に廃絶されるまで、すべての核保有国がいかなる状況下でも核兵器を使用したり、使用の威嚇をしたりしないよう要求する。

 6 私たちは、9カ国が依然として約1万3000発の核兵器を保有していることや、核兵器の使用や威嚇の根拠を並べた安全保障政策に対し、強い懸念を抱いている。これらの核兵器の多くは一触即発の警戒態勢にあり、数分以内に発射できる状態にある。さらに私たちは、一部の非核保有国が核抑止力を擁護し、核兵器の継続的な保有を奨励し続けていることに懸念を抱いている。増大する不安定性と明白な紛争は、意図的であれ事故や誤算であれ、核兵器が使用される危険性を大きく高めている。核兵器の存在は、すべての国家に共通する安全保障を低下させ、脅かすものである。それはまさに、私たちの生存を脅かしている。

 7 このような恐ろしいリスクがあるにもかかわらず、また、軍縮の法的義務や政治的公約があるにもかかわらず、核武装国や「核の傘」の下にあるその同盟国のいずれも、核兵器への依存を減らすための真剣な措置をとっていないことを、私たちは残念に思い、深く憂慮している。それどころか、すべての核武装国は、核兵器の維持、近代化、改良、拡大のために巨額の資金を費やし、安全保障政策において核兵器をより重視し、その役割を増大させているのである。私たちは、こうした不穏な動きを直ちに停止させることを強く求める。これらの資源は持続可能な開発のためにこそよりよく活用できることを、私たちは強調する。

 8 このような状況において、核兵器禁止条約はこれまで以上に必要とされている。私たちは、核兵器にさらに汚名を着せ、正統性を奪うために、核兵器に反対する強固な世界的規範を着実に構築することを目指し、その実施を進めていくつもりである。

 9 私たちは共に、条約のメカニズムを発展させていく。私たちは、国家の義務を完全に果たしていく。私たちは、国連、国際赤十字・赤新月運動、その他の国際・地域機関、核兵器廃絶国際キャンペーンなどの非政府組織、宗教指導者、国会議員、学者、先住民族、核兵器使用の被害者(ヒバクシャ)、核実験の被害者、青年グループと協力する。彼らの核兵器廃絶のための貴重な貢献を認識し、感謝している。私たちは、今後も第一線の科学者の専門知識を活用し、影響を受けた人々と協議し、包括的に活動していく。

 10 この条約の人道的精神は、核兵器の使用や実験によって引き起こされた被害を是正することを目的とした積極的義務に反映されている。私たちは、この条約の積極的義務の履行を進めるために、締約国間の国際協力を強化する。私たちは、核兵器の使用または実験の被害者に差別することなく年齢や性別に配慮した援助を提供し、環境汚染を是正するために、影響を受けた人々と協力する。私たちは、この条約の革新的なジェンダー規定を重視し、核軍備撤廃外交に男女が平等かつ完全で効果的に参加することの重要性を強調する。

 11 私たちは、すべての地域において条約の加盟国を増やすよう努力する。私たちは、条約の普遍化とその完全な実施という私たちの目標を支持するために、公衆の良心に訴える。私たちは、条約の目的と目標を達成するための努力の指針として私たちが採択した行動計画を実施するために努力する。私たちは、この条約の実施を検討するために定期的に会合を開き、この条約を強化し、核軍備撤廃を前進させるための追加的な措置を確認する。

 12 私たちは条約の外の国とも協力する。私たちは、核不拡散条約(NPT)を軍縮・不拡散体制の礎石と認識し、それを損なう恐れのある脅威や行動を遺憾とする。私たちは、全面的に義務を果たしているNPT締約国として、本条約とNPTの補完性を再確認する。私たちは、核軍拡競争の停止および核軍備撤廃に関連する必要かつ効果的な措置として、核兵器の包括的な法的禁止を発効させることにより、NPT第6条の実施を前進させたことを喜ばしく思う。私たちは、全てのNPT締約国に対し、第6条の義務およびNPT再検討会議において合意された行動と約束を完全に実施するための努力を再活性化することを求める。私たちは、共通の目的を達成するため、全てのNPT締約国と建設的に協力するとの約束を改めて表明する。

 13 私たちは、核軍縮に効果的に貢献できるあらゆる措置を引き続き支持する。これには、包括的核実験禁止条約の発効に向けた努力、核兵器の使用および使用の脅威を軽減するための暫定措置、軍縮検証措置の更なる発展、消極的安全保障の強化、核兵器およびその他の核爆発装置製造用の核分裂物質を禁止する法的文書が含まれる。私たちは、非核兵器地帯との協力を継続し、核兵器禁止条約の禁止事項、義務および目的が、これらの地帯の設立条約と完全に適合し、補完的であることを確認することを誓約する。

 14 私たちは、核軍備撤廃の緊急性、核兵器の存在がもたらす人道的影響とリスクに関する重要な証拠を、関連するすべての軍縮・不拡散プロセスにおいて、そしてより広く世界の人々に対して、さらに強調することを誓約する。こうした影響を防ぐことは、核兵器のない世界を実現し維持するための私たちの集団的努力の中心になければならない。

 15 私たちは、すべての国に対し、核兵器禁止条約に遅滞なく加盟するよう求める。私たちは、このステップを踏む準備がまだできていない国々に対し、この条約に協力的に関与し、核兵器のない世界という私たちの共通の目標を支援するために、私たちと協力するよう訴える。私たちは、一部の核武装国が、非核保有国に対して条約への加盟を思いとどまらせるような行動をとっていることを遺憾に思う。私たちは、こうした諸国はそのエネルギーや資源を、核軍縮に向けた具体的な進展に向ける方がよいと提案する。そうすれば、すべての人のための持続可能な平和、安全、発展に真に貢献することができる。私たちは、そのような進展を歓迎し、祝福する。

 16 私たちは、この条約の目的を実現する上で私たちの前に立ちはだかる課題や障害に幻想を抱いていない。しかし、私たちは楽観主義と決意をもって前進する。核兵器がもたらす破滅的なリスクに直面し、人類の生存のために、そうしないわけにはいかない。私たちは、開かれた道をすべて選び、まだ閉ざされている道を開くために粘り強く努力する。私たちは、最後の国が条約に参加し、最後の核弾頭が解体・破壊され、地球上から核兵器が完全に廃絶されるまで、休むことはないだろう。

(原文は英文。仮訳。出典「しんぶん赤旗ホームページ」→https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-06-27/2022062706_02_0.html

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