寄稿「13年目の3.11~沿岸被災地の会員各位に思いを寄せて(前編)」


13年目の3.11~沿岸被災地の会員各位に思いを寄せて(前編)

広報部員 八巻 孝之

 当協会の紙面から医療復興の声が消えつつあるが、今年3月初めに医療復興の現状を振り返る大変貴重な機会を広報部から頂き、自身の拙い筆を執ることになった。12年目の3.11を迎えたが、東北沿岸部は未だ復興過程にある。この地の医療資源は、震災前から決して豊富でなかった上、多くの医療機関がその全機能を失い、被災地を離れた医療スタッフは少なくないと聞く。お亡くなりになられた先生方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族に心からお悔やみ申し上げる。また、被災地の医療復興に身を粉にして尽力し続けている先生方には改めて心から敬意を表したい。

12年前の壊滅的被害
 12年前、宮城県は仙台市を除く363施設が被災し、半壊以上の被害率が62施設(17.1%)、休廃止数が44施設(63.7%)という壊滅的被害を受けた。2017年3月1日時点の宮城県保健福祉部調査報告によれば、気仙沼管内・石巻管内・塩釜管内の保健所管内には、順次17、23、11の廃止届が集まり、医療機関等の被害総額は330億円を上回った。
 震災を転機に移動された2015年9月時点の医師数は、同一管内移動数27名(39.1%)に対し、管外移動数42名(60.9%)であった。同一管内で医院を再開・再建できず同一管内での勤務医となった医師数は13名(18.8%)であった。ゆえに、移動医師69人の60.9%が他地区での開業または勤務医となり、管外移動の42名中16名(38.0%)が仙台市へ勤務を移した。仙台市へ移動した16名(23.2%)中、新規開業できたのは6名、県外移動は5名(7.3%)であった。特に、気仙医師会38施設に注目すると、全壊流失が7施設(18.4%)、半壊16施設(42.1%)あり、その内、自院復旧率は47.8%、新設復旧は(13.0%)であり、いまだ仮設診療中が17.4%を占めた。閉院となった10医院中の5医院は、医師6名の死亡による。
 震災前から慢性的な医師不足が指摘されていた沿岸部。多くの医療機関が被災したことで地域医療の課題が顕在化した。被災地における医療提供施設数は、震災前と比較して旧石巻医療圏では89.4%、旧気仙沼医療圏では78.0%まで回復したと言われる。しかし、被災者が実感する生活回復度は「回復した」が4.8% 、「やや回復した」の43.2%を合わせても半数に届かない状況が見え隠れしている。

 

本稿は宮城保険医新聞2023年4月5日(1810)号に掲載しました。

This entry was posted in 会員その他. Bookmark the permalink.

Comments are closed.