声明「診療報酬オンライン請求『義務化』方針の即時撤回を求める」


 当会は、4月20日付で以下の声明を決定し、内閣総理大臣、厚生労働大臣に送付しました。

 

2023年4月20日

【声明】

診療報酬オンライン請求「義務化」方針の即時撤回を求める

宮城県保険医協会
理事長 井上博之

 厚労省は3月23日の社会保障審議会医療保険部会において、光ディスクなどで請求する医療機関に対して、原則2024年9月末までにオンライン請求に移行することを実質上義務付ける計画案(ロードマップ案)を示した。紙レセプト請求者に対しても、2024年4月以降は新規適用を終了し、既存の適用者には改めて届出を提出するよう求めるとして、2023年度中に請求省令を改正し、期限を区切って実施を迫るものとなっている。
 この計画案は、昨年6月に閣議決定された規制改革実施計画の「社会保険診療報酬支払基金等における審査・支払業務の円滑化」という項で、「将来的にオンライン請求の割合を 100%に近づけていく」「2022年度末までにロードマップの作成を措置する」としていた内容を具体化したものだが、突如1年半後に期限を切ってオンライン請求を「義務化」するという驚くべき方針である。これは医療機関におけるオンライン資格確認の義務化に便乗して、医療機関にさらなる負担と混乱を持ち込むものであり、断じて容認できない。レセプト請求権に対する新たな義務を法律ではなく省令で課すことは、「国会を唯一の立法機関」と定めた憲法41条に違反し、違憲であり無効である。
 厚労省は光ディスク等で請求する医療機関について、アンケートを基に移行計画を示したということであるが、少なくともオンライン請求移行に要する期間が、「1年以上」「わからない」と回答した数は6割にのぼる。またオンライン請求を開始する予定について、「予定はない」という回答が47%と約半数である。このような状態で1年半後に「義務化」を強行すれば、人手が少ない小規模施設が多く光ディスク請求を選択している6割の歯科診療所は影響が大きいことが予想され、歯科診療の安定確保さえ危惧される。医科も1万8000医療機関に影響が及ぶ。
 レセプトオンライン請求義務化を撤回した2009年11月25日の厚生労働省令第151号の概要説明で、厚労省は「電子媒体による請求であっても、医療保険事務の効率化、医療サービスの質の向上等の政策目標は達成可能である」としている。オンライン請求が全医療機関等の約70%に達している現段階で、「より効果的・効率的な審査支払システムによる審査等のため」に義務化を無理強いするのは本末転倒である。
 今回の計画案は、データヘルス改革はじめ「医療DX」の工程管理から明らかなように、審査支払機関を、レセプト分析等を通じた「医療費適正化」(今次法改正で組織理念に追記予定)や医療等ビッグデータ(全国医療情報プラットホーム)の構築・管理に総動員させるため、医療機関に審査業務の手間がかからないオンライン請求へ移行させることが狙いである。しかし、光ディスク等による請求の場合であってもレセプトデータはオンライン請求の場合と同様にデータ化されており、審査上の差異はない。
 当会は、国が医療DXを推し進めるために地域医療に混乱を持ち込み、医療機関の経営を窮地に追い込むこのような提案に断固抗議し、即時撤回することを強く要求する。

 

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