声明「いのちと暮らしを支える医療と逆行する軍備拡大路線に抗議する」


 当会は、5月18日付で以下の声明を決定し、内閣総理大臣、財務大臣、宮城県選出国会議員に送付しました。

 

2023年5月18日

【声明】

いのちと暮らしを支える医療と逆行する
軍備拡大路線に抗議する

宮城県保険医協会
理事長 井上博之

 岸田内閣は昨年12月16日、歴代政権が戦後一貫して否定してきた敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を明記した安保3文書(「国家安全保障戦略」(NSS)、「国家防衛戦略」(NDS)、「防衛力整備計画」)を閣議決定した。日本の防衛の基本方針である『専守防衛』を崩し、23年度から5年間で総額43兆円の軍事費、10年後にはGDP比2%(年10兆円超)の軍事費を計画している。3月末に成立した23年度予算は、米国製ミサイル・トマホーク取得に2113億円を投じ、反撃能力に必要な装備と継戦能力を高めるための弾薬の購入費は3倍超に増やし、軍事費を前年度比1.3倍となる大軍拡予算である。さらに今国会では「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案(財源確保法案)」「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案(防衛産業強化法案)」を成立させようとしている。
 岸田首相は、国民へのまともな説明も、信を問うこともないままに、5年間で防衛費を43兆円とすることを閣議決定した。『専守防衛』を形骸化させる安保政策の大転換となった敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛費の倍増を決めた防衛省の「防衛力強化加速会議」の検討過程も不透明なまま、国会での審議もなく、バイデン米国大統領との会談で軍事費の倍増を約束した。岸田首相の姿勢は、法治主義を踏みにじる閣議決定ありきで、平和のみならず国民の生活や権利より米国を優先し、国会(国民)を軽視するものである。
 軍備拡大路線の財源に被災地復興の復興特別税や、国公立病院機構や地域医療機能推進機構の積立金を流用し、コロナ対策や物価高騰対策の予備費を決算剰余金として防衛費に活用しようとしている。被災地復興、年金、医療は国民が『生きる』基盤であり、いのちと暮らしを支える予算を財源としている。
 政府は相次いで社会保障の削減政策を実行し、国民の暮らしのための予算を削減し続けてきた。ロシアのウクライナ侵略や中国の脅威を口実に、米国の言いなりに軍備拡大を進めることは、諸外国の目から日本の軍事大国化を推し進めることとして映り、ひいては日本の安全保障を脅かすことにつながる。国民が真に求めているのは、日本国憲法の平和主義の下に誰もが安心し安全に暮らせることで、そのためには社会保障のための予算を拡充することである。当会は国民のいのちと健康を守る医師・歯科医師の団体として、政府の軍備拡大路線に強く抗議し、人権尊重、平和主義、民主主義にもとづく日本国憲法を堅持した外交努力の強化を求める。

 

This entry was posted in 決議・声明. Bookmark the permalink.

Comments are closed.