声明「『マイナンバー法等の一部改正法案』の成立に強く抗議し現行の健康保険証廃止は中止するよう求める」


 当会は、6月7日付で以下の声明を決定し、内閣総理大臣、厚労大臣、デジタル大臣、宮城県選出国会議員に送付しました。

 

2023年6月7日

【声明】

「マイナンバー法等の一部改正法案」の成立に強く抗議し現行の健康保険証廃止は中止するよう求める

宮城県保険医協会
理事長 井上博之

 6月2日、参議院本会議において、現行の健康保険証を廃止しマイナンバーカードと一本化することを含む「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案(マイナンバー法等の一部改正法案)」が、自民党、公明党、維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決成立された。マイナンバーやマイナンバーカードをめぐって、各種証明書等の誤交付や公金受取口座・医療情報の誤登録など、システムの根幹を揺るがすような不祥事が次々と明らかになったにもかかわらず、問題解決の見通しどころか事態の全容すら把握できていないまま、法案成立を強行したことは到底許されるものではない。同法案は健康保険証の廃止のみならず計13の法改正を内容とするものであり、審議はマイナンバーカードの健康保険証利用にかかる問題点に集中したが、マイナンバーの他の重要な論点を含め十分な審議が尽くされたとは到底言えない。このような議会制民主主義を蔑ろにした法案審議も断じて容認できない。
 健康保険法で保険者に「発行・交付義務」が定められている健康保険証を廃止し、法律上「任意」と規定するマイナンバーカードに一本化することは全くもって合理性がない。健康保険証をマイナ保険証・資格確認証に置き換えることは申請主義への転換であり、本人が申請しなければ保険料を支払っているにもかかわらず無保険状態となり、保険診療が受けられない事態を引き起こす。国が政策的に大量の無資格・無保険者が生み出すことになり、日本国憲法第25条に基づく国民の受療権を侵害することにほかならない。
 保険証廃止の前提となっているオンライン資格確認システムでは、全国保険医団体連合会をはじめ、全国の保険医協会の調査で数々のトラブルが報告されている。当会の調査でも73.3%の会員医療機関でトラブルがあったと回答し、「資格がある方なのに該当なしと表示された」「顔認証ができず苦情を言われた」「10割負担を求めたところ、マイナンバーカードを作った意味がないと怒りをぶつけられた」などの事例が寄せられた。現在は保険証の記載情報を優先して確認する取り扱いが認められているが、廃止となれば医療機関は保険者情報を確認することができず、患者と医療機関との間で深刻なトラブルや信頼関係の喪失という事態にも発展しかねない。
 当会の調査では「高齢の患者が多く、資格確認の端末の使い方の説明で人員が取られる」「保険証を出す方が楽でマイナ保険証は面倒という声が沢山」「保険証での確認より時間と手間がかかり、業務負担が増える」「保険証の廃止は本末転倒」などの現場の声が寄せられた。現行の健康保険証は存続し、希望者だけがマイナ保険証を利用するのが最も簡便かつ合理的である。
 以上のことから当会は、国民のいのちと健康を守る医師・歯科医師の団体として、マイナンバー法等の一部改正法案の成立に強く抗議するとともに、国民皆保険制度を揺るがす現行の健康保険証の廃止は中止とするよう求める。

 

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