シリーズ「女川原発廃炉への道」
ファシズムの初期兆候が見え始める状況
一人一人が知識を身につけ声を上げることが必要
理事 矢崎 とも子
物理学者 矢ケ崎克馬先生の話は理路整然として明快だ。「事実をありのまま認識することは民主主義の土台である。そして、人間存在の安全保障は、民主主義・国家主権の基礎である。さて、日本住民は民主主義国家のなかで法律通りに守られているだろうか」と問いかける。
日本政府はICRP1990年勧告「公衆の被曝線量限度は年間1m㏜」を2010年に国内法に取り入れた。これらは今もって変更されていないにもかかわらず、現状はICRP2007勧告の「事故の際には100m㏜/年まで可」をもとに、法改正をしないまま、なし崩し的に被ばくを住民に押し付けている。チェルノブイリでは事故後住民の命と人権を守るため、汚染地域の法制度に関する国家法と、社会的保護に関する国家法をつくったことをあげ、日本は平和・民主国家ではないのかと問う。
また事故後海産物汚染の報道を丹念に追いかけている。ストロンチウム90は2017年クロダイから30Bq/kg、2019年クロソイから54Bq/kg測定されていること、セシウム137は2022年にクロソイから500Bq/kg、2022年クロソイから1400Bq/kg、2023年クロソイから18000Bq/kgと今なお過去最高の値を更新していることも伝え、これらの事実からもALPS汚染水の海洋投棄は住民の人権破壊であると訴えている。
放射性物質の放出を99%阻止するというバグフィルターの国の実証実験についても、内部被ばくの過小評価の手段についても、一つ一つ丁寧に科学的に反論を展開しており、納得させられる。
市民が主権者として生きていくためには、①ありのままをきちんと見ることができる ②自分で考えることができる③自分の考えに基づいて行動できるという3要素が必要で、そのためには自然と社会についてと民主主義のルールについてしっかりと学習し基本的知識を身につけなければならないと訴える。
いま私たちは、ファシズム(独裁恐怖政治)の14の初期兆候が見えてきている状況に危機感を感じ、一人一人が知識を身につけ、声を上げる必要がある。
矢ケ崎の発信に注目してみえください。
本稿は宮城保険医新聞2023年8月25日(1822)号に掲載しました。