投稿「台風王国ニッポン~職場には出勤判断の基準が必要」


災害大国ニッポン~職場には出勤判断の基準が必要

宮城県保険医協会理事 八巻 孝之

 九州・沖縄地方に大被害をもたらした台風6号、被害に遭われた皆様へお見舞い申し上げます。さて、台風7号が非常に強い勢力を持って日本列島に上陸する見込みです。既に、陸空便の計画運休が発表され、大きな影響が予想されます。交通網の乱れの他、強風、河川の水位上昇、排水の遅れ、地盤の緩みなど、風水害・土砂災害が発生する危険を予測し、発表情報に注意し、無理な運転や出勤は避け、自身の安全を守るなど、先生方の職場には出勤停止や早期帰宅などの事業継続判断基準があるでしょうか。

◆◇台風の強さを判断する基準◇◆
1)台風の強さを表す言葉
台風発生時から気象庁の情報を監視されている先生方は多いのではないでしょうか。気象庁が台風の強さを表すために用いている表現には、猛烈な(最大風速54m/S以上)、非常
強い(44-53m/S以上)、強い(33-43m/S以上)、台風(18-32m/S以上)のように明確な基準があります。想定される被害の目安(表1)をご存じでしょうか。

2)中心気圧と最大風速の関係
 台風発生時、中心気圧や最大風速などの情報が発表されますが、数値を捉える上で目安となる判断の基準がなく分かりづらいと感じている方も多いと思います。そこで、過去3年分の
数値から中心気圧と風速の関係を算出してみました。

3)風速による影響
 台風(風速20-25m/s以上)でほとんどの高速道路が通行止めになり、強い台風(風速25-30m/s以上)でほとんどの鉄道は運休になります。そして、非常に強い台風(35m/s以上)では電柱や樹木が根こそぎ倒れる可能性があり、身の危険が及びます。風速40m/sが予想される場合には、送電鉄塔が倒壊する可能性があり、数日間に及ぶ停電に備える必要があります。

4)風台風か雨台風か
 2019年9月の15号は“風”台風でした。記録的な強風が千葉県を中心に送電塔2本・電柱84本をなぎ倒し、約2,000本の電柱を損傷させ、大規模かつ長期間の停電が発生しました。この時の経済損失は100億米ドル相当、2019年の世界3位でした。
 一方、同年10月の19号(東日本台風)は“雨”台風でした。記録的な大雨となり、河川の氾濫、土砂災害などが各地で相次ぎ、宮城県伊具郡丸森町では尊い人命を失いました(死者11名・行方不明者1名)。この時の経済損失は150億米ドル相当、2019年の世界1位でした。

◆◇職場は判断の基準を示すべき◇◆
 14日、私は雨が激しく窓を叩く勤務先の個室で執筆しています。接近中の”強い”台風7号は、中心付近の最大風速が40メートル、最大瞬間風速は55メートルと予想され、10日夕方、私の勤務先では、機構グループから「有事の際の体制を整え、被害を最小限に抑えるための細心の注意と出勤される職員の安全確保」」を喚起する通告がありました。
 大地震と異なり、予想される進路と時間帯において厳重な警戒が必要になります。しかし、強い、非常に強い、猛烈な台風であっても、私たちは何とか出勤しようとするでしょう。だからこそ、自身の安全を確保するために、出勤停止や早期帰宅の判断基準を職場が明確に示すべきなのです。

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