声明「岸田首相の現行の健康保険証『廃止』強行宣言に抗議し、存続を求める」


 当会は、12月21日付で以下の声明を決定し、内閣総理大臣、厚生労働大臣、デジタル大臣、宮城県選出国会議員に送付しました。

【声明】

岸田首相の現行の健康保険証「廃止」強行宣言に抗議し、存続を求める

 岸田文雄首相は12月12日の「マイナンバー情報総点検本部」において、現行の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」へ移行することについて、当初の予定通り2024年秋に切り替える方針を改めて表明した。
デジタル庁は、医療機関でマイナ保険証と窓口負担割合が異なって表示されるトラブルについて、9月29日に5695件確認されたと公表したが、各保険者で再点検を実施し、さらに1万5879件の相違が判明したことを明らかにした。しかしながら医療現場では、現在もトラブルは続いている。全国保険医団体連合会が行っている「10月以降のマイナ保険証トラブル調査」の一次集計(回答数1000件)では、10 月 1 日以降に「資格情報の無効」「名前・住所の間違い」「負担割合の齟齬」など、マイナ保険証・オンライン資格確認に関するトラブルがあったと回答した医療機関は、約6割に及んでいる。また、8割超がマイナ保険証・オンライン資格確認により、トラブルへの対応を余儀なくされており、「健康保険証を残すべき」との意見は8割を超えている。政府の「総点検」では医療現場のトラブルはなんら解決しておらず、「問題が無い」と判断できる状況にはない。それにもかかわらず、来年秋に現行の健康保険証を予定通り廃止するとの表明は言語道断である。
岸田首相は国民の「不安払拭」を強調してきたが、トラブルへの対応はその場しのぎのものばかりで、問題の全容解明・再発防止は放置してきた。当会と宮城県社会保障推進協議会、宮城県民主医療機関連合会が共同で県内の高齢者施設におこなった調査(回答数118施設)では、約8割の施設が利用者・入所者の健康保険証を管理しているのに対し、マイナカードの申請(代理)や施設での管理(暗証番号含む)に8割以上が「対応できない」という結果である。また、半数以上が来年秋の健康保険証の廃止に反対している。政府は介護が必要な方々への対応策をまとめたマニュアルや、暗証番号が不要なマイナカードの交付を示したが、介護現場の不安が払拭されていないことが調査結果からも明らかである。国民の不安も払拭されてはおらず、医療現場の「マイナ保険証」利用率は5%を切る状況が続いている。国民が信頼を寄せ、長年安定的に運用されてきた健康保険証を存続させる決断こそが求められると考える。
すべての国民が安心して医療が受けられる、世界に誇る国民皆保険制度を堅持するためには、すべての国民に遅滞なく健康保険証を発行・交付することが不可欠である。現行の健康保険証を廃止し、「マイナ保険証」に一本化することは、申請漏れや遅れ、行政手続き上のタイムラグ、医療現場でのトラブルなど、様々な要因によって「無保険の状態」が生み出されてしまうおそれがある。国民の受療権を保障するため、改めて当会は、現行の健康保険証の存続を強く求める。

2023年12月21日

宮城県保険医協会
2023年度第7回理事会

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