シリーズ「女川原発廃炉への道」
地震大国のニッポン 原発は安全か
理事 矢崎 とも子
女川原子力発電2号機の再稼働は7回目の延期で、さらに遅れることが決まった。工事完了に向けた確認作業でケーブルのルート変更が生じ、火災防護対策として耐熱材を巻き付ける電線管が、42カ所300メートルから52カ所430メートルに増えたという。完了前の修正は、安全性を高める上で大切ではあるが、そもそもさまざまな観点から専門家が熟慮して決めた計画ではなかったのか。
さて、元日に起きた能登半島地震。幸い志賀原発での重大事故は起こっていないが、誤報や訂正報道が続き住民の不安は計り知れない。志賀原発1号機は東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型で、その原子炉建屋直下にはS-1断層がある。2016年原子力規制委員会が「活断層の可能性を否定できない」としたのを、昨年3月に北陸電力が覆し、再稼働に舵を切ったばかりだった。
今回の余震の震源域は150km以上と広く、いくつかの断層が連動して動く新知見の可能性が言われている。震源近くでは地盤の隆起が確認され、志賀原発内でも舗装部が沈下し最大35cmの段差が確認されている。「敷地内に活断層はない」と言ってはいられない事実が突きつけられている。
さらに地震の揺れの大きさを示す加速度が、原子炉建屋の基礎部分で設計上の想定を上回ったという。東西方向の0.47秒周期の揺れに対して、1号機では957ガル(想定918)、2号機では871ガル(想定846)。
建物の耐震性も不十分だったことに加え、変電器配管が破損し外部電源5回線のうち2回線が使えなくなった。変電器からは約2万リットルの絶縁油が漏れ、一部が海に流出。使用済み燃料プールの水も飛散し、1号機では一時冷却が出来なくなった。使用済み燃料が十分冷やされていたことも含め、長期にわたって運転中止中だったことが幸いしたが、運転中だったらと思うと背筋が寒くなるだけでは済まされない。
今回の地震を受け、女川原発では事故時に海路や空路での避難も検討すると言い出した。トモダチ作戦で駆け付けた軍隊でさえ逃げ帰ったというのに、一体誰が助けに来てくれるのであろうか。大切なのは住民に向き合い、その声を聞く首長を選ぶことか。被災地の復興を切に願う。
本稿は宮城保険医新聞2024年1月25日(1835)号に掲載しました。