投稿「医療機関の統廃合、病床削減をめざす 医療介護総合確保推進法から病院機能再編支援事業・重点支援区域」


医療機関の統廃合、病床削減をめざす

医療介護総合確保推進法から病院機能再編支援事業・重点支援区域

宮城県保険医協会顧問 北村 龍男

はじめに
 村井知事は、4病院の統合・合築を推し進めている。なぜこんなことを強引に進めるのか? どんな政策が彼の考えを支えているのか? 政府も闇雲に、医療機関の統廃合、病床削減を進めようとしている。政府はどんな手段で、医療機関・病床削減を達成しようとしているのか? 医療提供体制について、発端の医療介護総合確保推進法から支援策-病院機能再編支援事業と重点支援区域-までの流れを改めて確認する。

本稿と同趣旨の文章を『みやぎの社会保障』に投稿しています。HPへの投稿について了解を得ています。
< >内は資料を示す。

1.医療介護総合確保推進法
 正式名称は「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」であり、公布日は2014(平成26)年6月25日、医療法関係の施行日は2014(平成26)年10月以降に順次施行された。以下、推進法と略す。

11.推進法の目的・趣旨
 この法律は目的(第1条)を、「国民の健康の保持及び福祉の増進に係る多様なサービスの需要が増大していることに鑑み、地域における創意工夫を生かしつつ、地域において効率的かつ質の高い医療供給体制を構築するとともに地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を促進する措置を講じ、もって高齢者をはじめとする国民の健康の保持及び福祉の増進を図り、あわせて国民が生きがいを持ち健康で安らかな生活を営むことができる地域社会の形成に資することを目的とする」としている。

12.推進法の要点
 厚労省は、「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置」として推進法政策の概要を示しており、その要点は以下のとおりである。
<厚労省医政局、平成26年9月19日、第106回市町村職員を対象とするセミナーの資料>

121.新たな基金の創設と医療・介護の連携(医療介護総合確保推進促進法関係)
 ①消費税増税分を活用した新たな基金を都道府県に設置する。
②医療と介護の連携強化のため、厚労大臣が基本的な方針(総合確保方針)を策定する。

122.地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係)
 ①医療機関が知事に病床の医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)を報告し、都道府県は地域医療構想を医療計画の一部として策定する。

注)地域医療構想は2025年に向け、病床の機能分化・連携を進めるために、医療機能毎に2025年の医療需要と病床の必要量を推計し、定めるもの。<厚労省医政局地域医療計画課、地域医療構想について、令和2年10月9日>

 ②医師確保支援を行う地域医療支援センターの機能を法律で位置付ける。

注)地域医療支援センターは、地域医療に従事する医師のキャリア形成支援と一体的に、医師が不足する病院への医師の派遣調整・あっせん等をおこなう。

123.地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険関係)
 ①在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業を充実させ、予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行し多様化する。

注)地域支援事業は、介護保険財源で市町村が取り組む事業。

 ②特別養護老人ホームを、中重度要介護者を支える機能に重点化する。

 ③低所得者の保険料軽減を拡充する。

 ④一定以上の所得の利用者の自己負担を2割に引き上げる。

124.その他。
①診療の補助のうちの特定行為を明確化する。それを手順書により行う看護師の研修制度を新設する。
②医療事故に係わる調査の仕組みを位置付ける。

<コメント>
 推進法の目的から見える政府の分析・めざすことは、①健康・福祉サービスの需要が増大することを前提に、②持続可能-削減しなければ社会保障が崩壊-のためという脅し、③医療提供体制と地域包括ケアシステムを車の両輪として、医療と介護を一体化し、地域での療養生活に誘導する、④診療補助のうちの特定行為を明確化し、医療の役割を減らす、⑤医療・介護を見直すため、医療法・介護保険法を改定する、⑥地域の創意工夫を求めているが、政府が責任を持つとは言っていない、⑦地域社会の形成-互助-を求めている。
少子高齢化や人口減少について、なんら展望をもっていないため、思いつくのは如何にダウンサイジングさせるかである。
医療・介護が地域社会の形成に資するとの指摘は、医療・介護をないがしろにすれば地域社会が崩壊すると政府・厚労省も理解していることを示している。医療・介護の充実を求める。

13.2025年に向けた医療提供体制の改革について
 団塊の世代が75歳以上(国民の5人に1人が75歳以上)となる2025年を展望し、どのような医療提供体制を策定するか、厚労省は以下の様に分析し、対策をおこない、改革するとしている。

131.高齢化の進展に伴う変化ついての分析
①慢性疾患、複数疾病の患者が増える。
②手術だけでなく、リハビリが必要な患者が増える。
③自宅で暮らしながら医療を受ける患者が増える。

132.推進法による改革の主な内容:地域における質の高い医療の確保、そのための基 盤の整備
①医療機関の医療機能の分化・連携をすすめ、在宅医療を充実する。
②医師・看護師等の確保対策、医療機関の勤務環境改善、チーム医療を推進する。
③医療事故調査の仕組み等を創設する。

133.改革の方向性
①高度急性期から在宅医療まで、適切な医療を、地域において効果的・効率的に提供する体制を整備する。
②患者ができるだけ早く社会復帰し、地域で継続して生活を送れるようにする。

<コメント>
 推進法から見えてくるのは以下のとおり。
①推進法をすすめるために消費税増税分を利用する。即ち、消費税増税分で社会保障費を削減する。特に、病床削減を推進する。
②医療と介護の連携強化で、医療の役割の一部を介護に移す。
③病床機能の報告を求め、医療機関・病床の確実な削減のため、現状を把握する。
④高度急性期・急性期病床を削減し、リハビリに力を入れ、在宅医療を拡大する。
⑤在宅での療養を支えるための、在宅医療・地域ケアシステムを強化する。
⑥医師・看護師等の増員はおこなわず、在宅療養で支えるシステムに力を入れる。医師・看護師等の数、医療費を押さえ、しかも医療の質をあげようとすれば、高度急性期・急性期医療を提供する期間を短くすることが必要になる。高度急性期・急性期に必ずしも十分な診療をおこなえず、医師・看護師等には疲弊をもたらす。

2.地域における医療及び介護の総合的な確保のための基本的な方針(総合確保方針)
総合確保方針は推進法第3条を受けて2014(平成26)年9月12日に告示された。厚労省が示している総合確保方針の要点は以下のとおりである。

注)総合確保方針はその後改定され、概要の最新版は2023年8月25日に出されている。本稿は医療介護総合確保推進法から病院機能再編支援事業・重点支援区域を振り返るものであるから、2014年の総合確保方針について述べる。

21.意義・目標
 ①「団塊の世代」が全て75歳以上となる2025年に向け、地域で安心して生活を継続し、その地域で人生の最期を迎えることが出来る環境を整備する。
②利用者の視点にたって切れ目のない医療及び介護の提供体制を構築し、自立と尊厳を支えるケアを実現する。

22.基本的方向性
①効率的で質の高い医療提供体制の構築と地域包括ケアシステムを構築する。
②地域の創意工夫を活かせる仕組みとする。
③質の高い医療・介護人材の確保と多職種連携を推進する。
④限りある資源を効率的かつ効果的に活用する。
⑤情報通信技術(ICT)の活用する。

23.行政の役割
国:基金を通じた都道府県、市町村への財政支援をする。
診療報酬・介護報酬を通じた医療・介護の連携を推進する。
都道府県:地域医療構想に基づく医療機能の分化・連携を推進する
市町村:地域包括ケアシステムを推進する。

24.サービス提供者
情報を共有していく仕組みを構築し活用する。
人材の確保・定着に取り組む。

25.利用者の役割
効率的かつ効果的にサービス利用する。
高齢者が、地域の構成員として積極的に社会参加していくことも重要である。

<コメント>
 総合確保方針から見えてくること
①推進法を進めるため、きめ細かな方針を示している。
②医療提供体制について示されている内容からは、医療機関数・病床数の増加、医師・看護師等の増員が期待されるが、医療機関・病床増、医師・看護師等の増員政策はない。
③切れ目のない医療・介護の提供体制とは、スムーズに、速やかに入院生活から在宅療養へ移すことであり、入院日収を削減・リハビリの強化を進める診療報酬に改定し、患者は病状とは関係なく、退院・転院を迫られる可能性がある。
④介護報酬2024の内容では、在宅療養に必要な訪問介護の継続が危ぶまれている。

3.地域医療構想策定ガイドライン

31.ガイドライン等に関する経緯
地域医療構想策定ガイドラインに関する検討会(以下、検討会)は、医療介護総合確保推進法を受け公示された総合確保方針を踏まえ、2014(平成26)年9月18日に設置された。
推進法では、医療法をはじめとする関係法律の整備を行うものとされ、医療計画の一部として「地域医療構想」が位置付けられ、その実現を目的に「協議の場」を構想地域毎に設置することとなった。また、「病床機能報告制度」が開始されることが合意された。(「協議の場」は「地域医療構想調整会議」と呼称することとなった)
検討会では、「地域医療構想の策定プロセス」をとりまとめた。
地域医療構想は、策定するだけでなく、実現に向けた取り組み等と合わせてこそ意味があるとの理由でガイドライン(以下、GL)の形でとりまとめた。

GLは2015(平成27)年3月18日の検討会で了承された。

32.ガイドラインの位置付け
GLの「位置付け」の中には、下記の記載(要請)がある。
①厚労省は、都道府県が地域医療構想の策定が進むよう周知を図られたい。都道府県の医療構想の策定状況等を把握し、研修・情報提供・技術的助言をすすめられたい。
②都道府県においては、医療関係者・保険者・市町村だけでなく、住民との連携の下で地域医療構想を策定するとともに、医療提供体制に対する理解や適切な医療機関選択・受療が行われるよう周知をする取り組みをされたい。また、地域医療構想を策定する際には、地域医療全体を見据え、五疾病、五事業等の医療計画において既に記載されている内容も踏まえて検討されたい。
③厚労省においては、第7次医療計画及ぶ第7期介護保険事業計画の策定に向け、地域医療構想の実現に向けた取り組みを進めるに際して、地域の医療需要に円滑に対応出来る人員配置等の検討を進めるとともに、今後、入院医療ではなく在宅医療等で対応するとした者の介護分野等の対応方針を早期に示されたい。

33.地域医療構想策定プロセス
検討会は、策定プロセス及び策定後の取り組みを図の様に整理し示している。

<コメント>
 検討会は、GLの位置づけの中で、都道府県は「住民との連携の下で地域医療構想を策定する」ことを求めている。大切な指摘である。この様な指摘は、推進法を進める方針・通知等の他の部分では見当たらなかった。
村井知事の4病院統合・合築の提案・進め方は、この地域医療構想策定GLからも全く外れている。住民の声ばかりでなく、医療関係者・保険者・市町村等の声も聞かず、全く独善的な手法で進めている。混乱が起こるのは当然である。

4.その後の取り組み・支援(2017〈平成29年〉~2018〈平成30〉年)
 その後、推進法の実現のため政府・厚労省は、医療法改正を行い、また以下の様な事務連絡・通知を矢継ぎ早に出し、医療機関統合・病床削減を急いでいる。
○通知:地域医療構想GL 2017(平成29)年3月
○事務連絡:地域医療構想・病床機能報告における回復機能について                               2017(平成29)年9月
○通知:地域医療構想の進め方について 2018(平成30)年2月
○医療法改正(地域医療構想の実現のため知事権限の追加)  2018(平成30)年
○通知:地域医療構想調整会議の活性化に向けた方策 2018(平成30)年6月
○通知:地域の実情に応じた定量的な基準の導入 2018(平成30)年8月

<コメント>
 推進法の実現のため、政府・厚労省は、色々な手を打てきた。力が入っていた。しかし、医療機関数・病床数の削減は思うようには進まなかった。

5.424公立・公的病院の統廃合
 「2018年度中に公立病院・公的病院等で機能の検証等を行う」ことになっていた。おこなわれた検証に対し、骨太方針2019の検討の場などで財界などから「形だけの機能改革論議や現状追認にとどまっているケースが少なくない」と指摘され、「役割は適切か(民間病院でも代替え可能なのではないか)」、「病床規模は適切か」などの意見が出され、再検証する動きが出た。
特に、地域医療構想に関するワーキンググループ(以下、地域医療構想WG)では熱心な討議がおこなわれた。2018年12月~2019年9月までに第17回~第24回の8回の地域医療構想WGが開催されている。
第17回~第20回までの主な議題は「地域医療構想の実現に向けた一層の取り組みについて」であった。
第21回~第23回の主な議題は「具体的対応方針の検証等の議論の整理」であった。
第24回の主な議題は「具体的対応方針の再検証の要請等」であった。
このように2018年12月~2019年9月まで公立病院・公的病院の統廃合の検討を行い、9月末に要請にいたった。機能分化やダウンサイジング等の必要性を改めて検討すべき424公立・公的病院等を公表した。「がん、心疾患、脳卒中、救急、小児、周産期」医療などの診療実績が少ないことから、「公立・公的病院等でなければ果たせない機能をはたしているのか」という点について再検討を求め、必要に応じて機能分化やダウンサイジングなどを含めた再編・統合の検討を求めた。

<コメント>
 骨太方針2019では「地域医療構想の実現に向け、全ての公立・公的医療機関等に係わる具体的対応について、診療実績データの分析を行い、具体的対応方針の内容が、民間医療機関では担えない機能に重点化され、2025年において達成すべき医療機関の再編、病床数の適正化に沿ったものとなるよう、重点支援区域の設定を通じて国による助言や集中的な支援を行うとともに、適切な基準を新たに設定した上で原則として2019年度中に対応方針の見直しを求める。」とされている。
骨太方針2019の検討過程で出された意見を踏まえ、厚労省は地域医療構想WGをおこない、公立病院・公的病院の統廃合要請の実名発表をおこなうことになったと考えられる。
政府・財界の、医療機関数・病床数の削減の方針を進める強い意思が見られる。

6.医療機関統廃合のための支援策
公立・公的病院、さらには民間病院を含め、再編統合-医療機関・病床の削減-は進まず、以下のような支援事業がおこなわれることとなった。

61.病床機能再編支援事業
<資料:新たな病床機能の再編支援について、2020(令和2)年10月9日、厚労省医政局地域医療計画課>

611.事業の要旨
①人口減少・高齢化の進行を見据えて、新型コロナウイルス感染症への対応で顕在化した地域医療の課題への対応を含め、地域の実情に応じた質の高い効率的な医療提供体制を構築する。
②地域医療構想の実現を図るため、地域医療調整会議等の合意を踏まえておこなう自主的な病床削減や病院の統合による病床廃止に取り組む際の財政支援を実施する
③2021(令和3)年以降も、地域医療構想調整会議の議論を踏まえ、消費税増税財源による「医療・介護の充実」とするための法改正をおこない、病床機能の再編支援を実施する。

612.「病床削減」に伴う財政支援
病床を削減した病院等に対し、削減病床1床あたり、病床稼働率に応じた額を交付する。
要件は、①病床削減後の許可病床数が、2018(平成30)年度病床機能報告における稼働病床数の合計の90%以下となること、②許可病床から休床等を除いた稼働している病棟の病床の10%以上を削減する場合に対象とする。

613.「病床統合」に伴う財政支援
①統合支援
 統合(廃止病院あり)の病床削減の場合、関係病院全体で廃止病床1床あたり、病床稼働率に応じた額を関係病床全体に交付する。
重点支援区域のプロジェクトは一層手厚く支援する。要件は関係病院の総病床数の10%以上削減する場合に対象とする。

②利子補給
廃止される病院の残債を統合後に残る病院に承継させる場合、当該引き継ぎ債務に発生する利子について一定の上限を設けて統合後の病院へ交付する。
要件は、関係病床数の10%以上削減する場合に対象となり、承継に伴い引き継ぎ債務を金融機関等からの融資に借り換えた場合に限る。

<コメント>
 支援内容は、医療機関の病床削減、医療機関の統合の際には病床削減を10%以上おこなうことが要件である。
しかも稼働病床率に拘る。このことは実質的な診療報酬の削減を狙っている。

62.地域医療構想に基づき選定する重点支援区域
<資料:重点支援区域について 令和3年2月12日第13回地域医療構想及び医師確保計画に関するWG資料>

621.背景
骨太方針2019において、2025年において達成すべき医療機関の再編、病床数の適正化に沿ったものとなるよう、重点支援区域の設定を通じて国による助言や集中的な支援をおこなうこととされた。

622.基本的な考え方
①都道府県は、当該区域の地域医療構想調整会議において、重点支援区域申請をおこなう旨の合意を得た上で、申請をおこなう。
②重点支援区域は申請を踏まえて、厚労相において選定する。
③選定自体が、医療機能再編等の方向性を決めるものではない、選定された後も医療機能再編等の結論については、あくまで地域医療調整会議の自主的な議論によるものであることに留意する。

623.支援内容
①技術的支援 医療提供体制や医療機能再編等を検討する医療機関のデータ解析。
②財政的支援 地域医療介護総合確保基金の優先配分等をおこなう。

624.2020年1月・1回目選定にされた重点支援区域
5区域が選定された。
宮城県 仙南区域(公立刈田総合病院、みやぎ県南中核病院)
石巻・登米・気仙沼区域(登米市立登米市民病院、登米市立米谷病院、登米 市立豊里病院)

<コメント>
 地域医療構想調整会議で医療機関の統廃合を進めることとなっていたが、厚労省-実は経済財政諮問会議の思惑通りに統廃合がすすまないために、政府・厚労省が直接統廃合の構図を作り上げるのが重点支援区域である。
宮城県はこの方針に積極的に応えようとしているものと考える。それにしても、第1回の5区域選定の中に、宮城の2区域が入っているのはびっくり。準備が良いのか、誘いがあったのか。

7.統廃合の進展状況

71.検討の進展状況
<資料:地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループへの厚労省の報告。2023(令和5)年5月25日>
①全医療機関の検討状況について、2022(令和4)年9月時点の調査結果と比較すると、「合意・検証済」の医療機関単位の割合が36%から60%、病床単位の割合が61%~76%と増加している。
②協議・検証未開始となっている医療機関の検討状況は、その理由をみると、「新型コロナ対応の経緯を踏まえ、改めて検討中」がもっとも多かった。次に多い「その他」では「病床の廃止や医療機関の閉院を検討」「後継者と診療内容を検討」という理由があった。

72.2022年度病床機能報告及び2025年必要病床量(推計値)
<厚労省:第13回地域医療構想及び医師確保計画に関するWG資料、令和5年11月9日>
2015年・2022年の報告数、2025年必要量(推計)を比較すると以下のとおり。

 高度急性期 16.9万床  →15.7万床  →13.0万床

 急性期   59.6万床  →53.3万床     →40.1万床

 回復期   13.0万床  →19.9万床     →37.5万床

 慢性期   35.5万床  →30.8万床     →28.4万床

 合計   125.1万床  →119.9万床 →119.1万床

<コメント>
 政府・厚労省がめざしている2025年必要量と現状報告はかけ離れている。特に、急性期病床・回復期病床で差が大きい。急性期病床では減床、回復期病床では増床が求められる。一層厳しい行政指導が予想される。

まとめに代えて:みえてきたこと

政府の姿勢
 政府は、推進法の実現のため、矢継ぎ早に政策を発出している。2014年総合確保方針、2015年地域医療構想策定GL、2010年公立病院・公的病院の統廃合、2020年病床機能再編支援事業・重点支援区域など。
政府は、社会保障・医療の削減のために、全力を尽くしている。また、その動きは財界からの突き上げが作用している。骨太方針2024でも病床削減を進める「地域医療構想」も狙い目とされている。
消費税増税分を使い持続的な社会保障・医療といい、その中味は病床削減であることに怒りを覚える。

宮城県(村井知事)の立場
 村井知事が進めている4病院の統廃合は、政府の政策を宮城県に当てはめたものに過ぎない。
地域医療構想策定GLで示されている、医療関係者、保険者、市町村さらに、住民の意見を聞くべきとの方針を無視しており、独善的である。
医療提供体制と地域包括ケアシステムは車の両輪として重要であるが、村井知事はそのことも無視している。特に、県立精神医療センターに関して。
東北労災病院の東北・北海道での役割、県立精神医療センターの地域での役割をまったく無視している。地域医療を崩壊させるものである。
村井知事の行動は、統廃合が地域にどのような影響を与えるか、いかなる困難・混乱をもたらすかを明らかにしている。

県民にとって
 病床削減が特に急性期医療の国民への提供をアクセスを崩壊させている。
県民の多くが関心を寄せているのが4病院であるが、登米・刈田総合病院の問題も同じ問題-医療機関・病床削減-がある。結果として医療へのアクセスが困難になる。
今回の介護報酬で訪問介護が困難になることを考えると、医療も介護も削減される。住民にとって、入院も出来ない、在宅でも療養困難となる。

通院・入院中の当事者にとって
 もっとも大きな影響を受け、生活が崩壊しかねない。統廃合にあたっては十分な意見交換、配慮が必要である。

医療機関にとって
 医療機関の抱えている財政的な問題の根源は、診療報酬が低額のために起こっている。
医療機関に対し、病床削減を求めることは、患者・地域住民への役割・責任の放棄を求めるものに等しい。

医師・看護師など医療者
 医師・看護師などの増員をはからず、持続可能のためと称して、新たな負担を求めることは、医療崩壊につながり、また政府の進める働き方改革の政策にも反する。

如何に医療提供体制をつくるか
 地域住民、医療機関を利用する当事者、医療関係者、保険者、市町村が如何に地域の医療提供体制を作り上げるかの検討し提案をおこなうこと。
地域医療調整会議の透明化を求めるとともに、公表されている資料を確認すること。
医師・看護師など医療者をはじめ多くの住民が積極的にパブリックコメントに参加すること。

人口ピラミッドの釣り鐘型をめざす
 統廃合、病床削減の政策の根底には、少子高齢化・人口減少を前提としているところにある。
少なくとも、人口ピラミッドは釣り鐘型をめざす政策が必要である。

(2024/8/4)

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