5月18日付読売新聞に「歯削る7割使い回し 滅菌せず院内感染懸念」との見出しで国立感染症研究所などの研究班の調査を紹介した記事が掲載されました。この件に関して、保団連研究部長の井上博之副理事長が下記の談話を発表しました(報道された記事はコチラ)。
院内感染対策に関する5月18日付「読売新聞」報道について
5月29日
研究部・歯科部長 井上 博之
5月18日付「読売新聞」で、「歯削る機器7割使い回し 滅菌せず院内感染懸念」との見出しの記事が掲載されました。
歯科での院内感染対策の推進のためには、歯科医師をはじめ歯科医療従事者の感染管理への意識向上が欠かせません。全国保険医団体連合会(保団連)では、医療安全対策として、2007年医療法「改正」後、各種指針や報告書の作成について日常診療の中で必要な対応を効率的に実施できるよう、2007年9月に「医療安全管理義務化等への対応」、2010年には医療事故発生状況の概要と医療安全情報を追加した「医療安全管理対策の基 礎知識・改訂版」、2014年には多くの医科歯科医療機関の協力を得て実施した保団連「ヒヤリ・ハット調査」結果を掲載した「改訂版」など、会員向け冊子を発行し、医療安全管理対策を重視してきました。また、各地での研修会などにも取り組んできました。
歯科医師は、日常診療に際しては、問診等で患者の状態などを把握し、感染予防対策を講じながら、日々の診療を行っています。今回の「読売新聞」の報道は、最新の院内感染予防対策に沿って、現状を告発したといえます。
院内感染対策のガイドラインについて、今日の水準が提起されたのは、1996年の「スタンダードプレコーション」以降であり、その普及が遅れている実態が明らかになったといえます。
歯科での院内感染対策を推進するために、歯科医師をはじめ歯科医療従事者の感染管理への意識向上に向け、本会としても冊子の発行や研修会にも取り組んできましたが、まだ十分とはいえないのが現状です。
今回取り上げられた歯科用ハンドピースの滅菌に関しては、5月24日付「読売新聞」「社説」でも述べられているように、対策費の捻出に苦慮する歯科医院へのコストを補償する診療報酬の拡大も必要であると考えます。歯科外来においては、主目的が「安心で安全な歯科医療環境提供のため」の「歯科外来診療環境体制加算」が設定されているものの、その診療報酬額は感染対策を主目的とした入院における「感染防止対策加算」と比較してあまりにも低く、コストを補償するものとはなっていません。それは、2007年6月18日の「中医協・第13回診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会」の資料からも明らかです。
私たちは、今回の報道を真摯に受け止め、歯科医院の院内感染対策の向上のために一層努力を行うとともに、すべての歯科医療機関で十分な対策が実施できるよう国の財政的補償を強く求めるものです。