核戦争を防止する宮城医師・歯科医師の会 公開講演会
原発に頼らない再生可能エネルギー中心の社会へ
和田武日本環境学会元会長が講演
核戦争を防止する宮城医師・歯科医師の会は8月30日、エルパーク仙台セミナーホールにて公開講演会を開催。「原発に頼らない再生可能エネルギー中心の社会へ」と題し、日本環境学会元会長の和田武氏が講演し、33人が参加しました。和田先生の講演要旨は次の通りです。
日本のエネルギー政策は原子力発電の最重視が続き、他のエネルギーよりも特別な扱いがされ、狭い国土に作られ続けてきた。さらに将来計画では、総電力中の原発比率を最大で2020年までに44%、2030年までに49%に拡大予定であった。その反面、再生可能エネルギーは優位な技術と資源があるにもかかわらず、推進されなかった。その間、世界で原発が増えたのはアジアだけで、米国、ヨーロッパではむしろ減少、ドイツ、スウェーデンでは廃絶政策に転換した。日本の原発推進は世界的にみても異質な存在であった。そして、福島原発事故が起き、民主党政権が2030年代に原発ゼロを閣議決定した。その後自民党政権による揺り戻しがあるが、電力買取制度などにより再生可能エネルギーは急激に伸び始めている。
「再生可能エネルギーで日本のエネルギーすべてをまかなうのは難しいのでは」と心配する方も多い。しかし全土の68%が森林で周りを海に囲まれ、水も豊かで太陽光も降り注ぐ日本には豊富な再生可能エネルギーがある。ないのではなく活用されていないだけと言える。
再生可能エネルギーの普及は地域経済を活性化させることになる。ドイツ北端のローデネ村は住民が共同で会社をつくり、太陽光発電所を建設。村の世帯数の必要量を超える電力を発電。太陽光発電や太陽熱利用の機器を製造・輸出し、雇用を生んでいる。売電で所得も増えている。日本でも山村や農漁村などいたるところにエネルギー資源が豊富にあり疲弊した農漁村・山村の復興にも役立つ。再生可能エネルギーの関連産業発達で、発電分野だけでも2020年に60万人以上の雇用を実現できると試算している。
再生可能エネルギーの特徴は「少しずつ」「どこにでも」あることであり、一カ所の巨大施設より、小さな施設を無数につくってエネルギーを生産する方が理にかなっている。その点で、住民による共同所有・管理により利益を住民に還元する、そうした取組みを進めやすい。原発がクリーンエネルギーではないことが明らかになったいま、再生可能エネルギーの普及を促進する政策の実現を求め、エネルギーを住民の手に取り戻す必要がある。